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2011.9.15

「歩行者の状態推定の軽量化」
情報科学修士、沼さんの論文


ヤングリサーチャー賞を受賞
賞状を手に沼杏子さん
賞状を手に沼杏子さん
 本学大学院情報科学研究科情報科学専攻修士2年、沼杏子さん(屋代研究室)の論文が7月8日、京都府宮津市の宮津ロイヤルホテルで開かれた情報処理学会「マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2011)シンポジウム」でヤングリサーチャー賞を受賞、各大学・企業の受賞者25人の1人として表彰された。
 情報処理学会は、IT(情報技術)分野を研究する、大学研究機関・企業関係者ら正会員数だけで2万人近くの大学会。コンピューター将棋ソフトで日本将棋連盟に挑み、1度目は敗れたが、昨年10月、女流王将に勝ち、話題となった。
 今回シンポの統一テーマは、東日本大震災やデフレ下の経済を背景に「日本を元気にするICT(情報通信技術)」。実行委プログラム委員として本学・屋代智之教授らも名を連ねた。沼さんの論文は「歩行者の状態推定の軽量化に関する一検討」。
 沼さんは、加速度センサーが搭載されているiPodを使って、歩行者ナビゲーションの位置を補正する研究をしてきた。歩行者ナビゲーションは、GPSで位置を取得するが、屋内やビル街では電波が途切れ、位置ずれを生じてしまう。このため加速度センサーを使って、歩行者の行動コンテキスト(歩行、走行、階段上り、階段下りなど)を推定することで、ずれを補正する。たとえば、歩道橋など、地図上で階段がある場所にいる、と推定することによって現在位置を補正できる。
 従来の研究で、ある程度の確率で行動コンテキストを推定できるようになったが、推定には膨大なデータが必要で、処理負荷が大きすぎ、リアルタイムに携帯端末で実装することは困難だ。
 そこで沼さんは、データ量の削減手法について検討した。加速度データを分析したところ、低周波成分に重要な要素が多く含まれていることがわかった。この要素を効率よく状態推定に活用し、かつ推定に必要なデータをなるべく削減するために、加速度が負から正に変わるタイミングを利用するなどの検討を試みた。この研究を投稿、発表したところ、優秀なプレゼンテーションを行った若手研究者として、上記の賞に選定された。
 研究分野の違う研究者らを前に、とにかく分かりやすいプレゼンテーションを心がけたという。
 沼さんは「学外発表は5回目で、慣れてきたように感じます。研究室では毎週ゼミで発表があり、たくさん指導していただくことができたので、受賞できたと思っています。次は国際会議(海外で発表)を控えているので、英語でもうまくプレゼンできるように頑張りたいと思います」とコメントしている。

佐々木君の作品採用


国際会議ロゴ デザインコンテスト
ロゴマーク
ロゴマーク
 国際会議のロゴマークコンテストに本学工学部デザイン科学科4年、佐々木俊弥君(山崎和彦教授研究室)の作品が、応募多数の中から見事選ばれ、採用された。
 募集したのはNPO法人「人間中心設計推進機構」(黒須正明理事長)。人間中心設計を普及させるために、黒須氏や本学・山崎教授ら広く研究者、企業のデザイン関係部門などが集まり活動。専門家の資格認定も行っている。人間中心設計は、人間工学を母体に人間の内面性も重視し、最適なユーザビリティ(使い勝手)を追求するもの。今回は、国際会議APCHI2012(The 10th Asia Pacific Conference on Computer Human Interaction)のロゴを決めるためコンテストを開いた。
 佐々木君は、国際会議のテーマである「人間とコンピューターのインタラクション」について、「過去を振り返り、現在の活動から新しい発見を行い、将来を創造する」ことととらえ、コンピューターを操作する人をinteractionの頭文字iをイメージしてデザイン。ロゴがどんな場面で使用されるか(例えば、ウェブサイトではヘッダーに使われる)よく考慮し、耐えうるよう、すっきりまとめた点が、高く評価された。
 国際会議は来年8月、アジア・太平洋の約10カ国・地域が参加して島根県松江市で開かれる。採用作品はAPCHI2012のウェブサイトですでに使われているほか、ポスター、はがき、会議場での案内板、議事録・会報、会議バッグなどで使用される。
 佐々木君は「(デザイン科学科学生として)ロゴマークのデザインにも興味があり、自分の作品が実際に活用されることはうれしいです。抽象的なテーマを自分なりに解釈し、形に落とし込むことは良い経験になりました」と受賞を喜んでいる。
 表彰式は国際会議会期中の来年8月28〜31日に行われる。
佐々木俊弥君
佐々木俊弥君

PMチームがポスター賞


14人、情報メディア学会で発表
受賞したPMチーム(東大・赤門前で)
受賞したPMチーム(東大・赤門前で)
 現代社会を支える情報環境を研究する「情報メディア学会」(西垣通会長=東京大学大学院情報学環教授)の第10回研究大会が6月25日、東京都文京区本郷の東京大学・福武ホールで開かれ、会場での「ポスター発表」の最優秀ポスターに本学社会システム科学部プロジェクトマネジメント(PM)学科のチームが選ばれた。
 受賞したのは、同学科の3年生12人(佐久間拓也、鈴木詳治、菊川弾、木野田遼、下佐翔、高梨文弥、高橋諒樹、立野悠介、露崎良、増田智彦、山内祥太、山田琢也の各君)と、マネジメント工学専攻修士2年の関矢聡さん、指導の遠山正朗准教授の計14人。
 情報メディア学会は、2000年に発足。関係分野を研究する大学のほか図書館協会、日本原子力研究開発機構、国連大学協会なども加わっている。アナログ、デジタルを問わずさまざまな情報ネットワークや、その担い手の社会基盤、経営手法、システム科学、媒体などの研究を広く進める場で、学会誌を刊行、毎年研究大会を開いている。
 ポスター発表は、研究成果をA4版2〜4枚の原稿とポスターにまとめ、会場に掲示し、大会参加者が投票して最優秀の「ポスター賞」を決める。情報とメディアにかかわることならテーマは自由。チームは「EDINETを活用したゲーミングシミュレーションによる社会人基礎力の育成」の事例研究を提出した。
 有価証券報告書などは電子開示システム「EDINET」で、望む開示書類へ迅速にアクセスできる。この環境を活用して、例えば、経済社会でどんなことが起こると、株価にどんな影響が及ぶのかを、実在企業でシミュレーションできるボードゲームを提案。その作製の仕方も発表した。
 ゲームを動かすには▽ゲームのフレームとルールへの理解や、日本経済新聞マネーベーシックなど各種情報ソースへの理解▽有価証券報告書の読みとり方▽対象企業を選定し、企業評価の基礎データを整理する力――などの素養が必要となる。
 さらにゲームの設計から実施まで、一連の作業を、小チームで行うことを通じて、前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力などの“社会人基礎力”を高めることができる。
 学部生らは、日々の授業と研究を両立させるため、スケジュール管理が大変だったという。しかし、チームが一丸となってまとまり、遠山准教授や関矢さんの指導のおかげで、満足のいく発表ができたという。
 佐久間君は「すばらしい賞を頂き、大変光栄に思います。今後もたくさんの研究を行いつつ、さまざまな学会発表に励み、自分たちの名前が残せるように頑張っていきたいです」と感想を述べた。

総務の川浪氏 春の叙勲者に


川浪利文警備員
 平成23年度の春の叙勲者が6月15日に発表され、本学総務課(津田沼)の川浪利文警備員=写真=が単光章に選ばれた。