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2010.6.15

新鋭レスキューロボット「Quince」を披露


fuRo小柳副所長ら
 4月28日、本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)の小柳栄次副所長とNPO法人・国際レスキューシステム研究機構(IRS)の田所諭会長(東北大学教授)は、芝園校舎11号館で記者発表を行い、新鋭レスキューロボットQuince(クインス)をお披露目した。
説明する小柳副所長
説明する小柳副所長
3次元計測や防塵防水・・・
多機能盛り込み実戦配備へ
 会場には地元消防の関係者を含め70人近い取材陣が参集、急ならせん階段や瓦礫を走行するロボットの動きに目をこらした。
 Quinceは、小柳副所長らが参加するNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」として開発したレスキューロボットで、Kenaf(ケナフ)の後継機。CBRNE(化学・生物兵器、放射性物質、核兵器、爆発物)災害に対処し、救助活動を行うための情報収集を目的とする。
 災害が発生し、危険度の高い地下街などを遠隔操縦で高速走行、救助を必要とする人の位置の特定や状態検査、また災害状況の情報収集を行う。
 長さ65センチ、幅48センチ、高さ22センチ、重さ26キロで秒速1.6メートル。Kenafよりひと回り大きいが、スーツケースで持ち運ぶ。
 Quinceは、半自立操縦支援システムを搭載しており、瓦礫や階段などを含む空間での高い走行性能を誇る。さらに活動や汚染物質除去に欠かせない防塵防水、予期しない落下時に機能が持続できる耐久性を持つ。
 搭載カメラでの映像・音声収集、さらに物体や空間の3次元形状を計測する機能も備える。複数のQuinceを配置すれば、統合的な情報が得られる。
 全てのQuinceが備える基本機能と、使用側の要望に沿うオプション機能が用意され、災害状況に応じて組み合わせることも可能。
 オプションとしては、映像による探査をするPTZカメラ3次元スキャナードア開け・サンプリング用アームマッピングGISケーブル敷設――などがある。
 今後、開発したさまざまな機能を搭載、全国の消防の協力を得て、今年度末には実戦配備する計画だ。
 また、性能試験のため6月にシンガポールで開催されるロボカップ世界大会のレスキューロボット部門に出場、さらに米国での災害対応ロボット訓練大会で米災害対応庁隊員による評価を受ける予定もある。
 なお、fuRoのレスキューロボットは、歴代「花の名」を愛称にしており、Quinceは、「かりん」の英語名である。
瓦礫を走行するレスキューロボットQuince(クインス) 瓦礫を走行するレスキューロボットQuince(クインス)
瓦礫を走行するレスキューロボットQuince(クインス)

ハルクIIが優秀設計賞
本学の可変型移動ロボット


日本設計工学会が贈る
fuRoの大和秀彰上席研究員(左)と奥村悠上席研究員
fuRoの大和秀彰上席研究員(左)と奥村悠上席研究員
 日本設計工学会は、平成21年度の「武藤栄次賞優秀設計賞」を、本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)が開発した可変型移動ロボット「ハルクII」に贈ることを決めた。
 同学会は、設計工学に関わる広範囲の分野をカバーする組織。
 武藤栄次賞は平成18年度に創設され、企業や研究機関で優れた製品あるいは研究装置を設計した個人、団体を顕彰している。特に独創性や社会的波及効果などが評価の基準になる。
 表彰式は、5月22日、早稲田大学で開かれた同学会総会で行われた。

土木学会(関東支部技術発表会)優秀賞に
鈴木君(生命環境4年)の研究


「谷津干潟海泥中に蓄えられた窒素とリンの動向」
鈴木亨君
鈴木亨君
 社団法人土木学会関東支部主催の第37回技術発表会で、本学生命環境科学科4年、鈴木亨君(指導教員:矢沢勇樹准教授=鈴木君は東京食品機械入社)が優秀賞に選ばれた。
 発表会は3月に日本大学で行われ、443件の研究中、若手発表者(35歳以下)の中からの受賞で、テーマは『貧酸素系内における谷津干潟海泥中に蓄えられた窒素およびリンの動向』。
 本学近くの谷津干潟は野鳥観察の名所。鈴木君は、この干潟の水質悪化と、アオサやマガキなどの異常繁殖に着眼した。研究では窒素やリンの富栄養化メカニズムを、小型水槽内で長期的に計測し、干潟海泥中に蓄えられた窒素とリンが生物相を介して溶存酸素濃度の推移とともに吸収・放出することを実証した。
 発表内容は、鈴木君が1年間行ってきた卒業研究。プレゼンテーション技術と明瞭な質疑応答の姿勢が評価された。
 表彰式は5月19日に行われた。今回の受賞は生命環境科学科の学生として2年連続の快挙。
笹川研究助成事業に
藤山さん(生命環境修士2年)の研究

「川と海をつなぐ河口の森・干潟の緩衝作用」
藤山里香さん(右) 藤山さんの研究構想
藤山里香さん(右) 藤山さんの研究構想
 本学大学院工学研究科生命環境科学専攻修士課程2年、藤山里香さん(指導教員:滝口泰之教授・矢沢勇樹准教授)の研究が、財団法人日本科学協会の平成22年度笹川研究助成事業に選ばれた。テーマは『川と海をつなぐ河口の森・干潟の緩衝作用』。
 藤山さんは、一般科学研究(化学系)に応募。1162件の若手研究者(大学院生以上)の中から334件の一人として助成が決まった。
 最近、陸域の森林産物(フルボ酸)が河川を通して海域水産資源を豊かにする、いわゆる「魚付き林」が見直され、国内外でさまざまな取り組みが行われている。
 藤山さんは、房総半島の里山−里海のつながりを直接かつ明確に表現する自然干潟「盤州干潟」に着目。里山から運ばれた栄養塩・堆積物、そこに繁殖したヨシ原による一次生産と浄化機能、さらにフルボ酸−鉄としての海域への安定供給について、化学的根拠に基づき実証することを研究課題にしている。
 この事業の奨励会が4月27日に行われ、一般科学研究(化学系)45件の採択研究の中から藤山さんの研究が大島美恵子同協会会長から紹介され、採択書が授与された。
 藤山さんは「将来理科の教師として『人と自然とのかかわり』をこの経験を通して教えられるよう取り組みます」と喜びと抱負を語っている。
お知らせ

仕事に役立つ創造力を身に付ける12のポイント
「創造の方程式」
「創造の方程式」
編著= 千葉工業大学創造性教育プログラム開発センター(研究代表者・佐野利男教授)
発行=
 「世の中には、アインシュタインやピカソのように科学や芸術の分野で素晴らしい創造(創作)を行った天才がいます」――本書の「はじめに」の書き出し部分。さて、天才でない私たちが創造の力を身に付けるにはどうしたらいいのか。
 本書は2007年にスタートした文部科学省社会連携プロジェクト「地域産業における創造的人材育成プログラム開発」の中で組織された、本学社会システム科学部と習志野商工会議所のメンバーからなるワーキンググループの作業から生まれた成果だ。
 創造は、創造者個人の頭の中で創造のプロセスに基づいて行われる。そのプロセスを「創造の方程式」として、若い職業人に提示するのが、本書の目的である。
 目次を広げると、「結合」とか「模倣」などキーワードが目に入る。
 創造を難しく捉えず、「恋人の誕生日に何を贈ったら喜ばれるか」といった日常のちょっとした工夫も「創造」の一つと考えることから出発。それを高いレベルの創造に結びつけることを目指している。
 巻末の「仕事に役立つ創造力を身に付けるための12のポイント」は大いに役立ちそうだ。