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2009.7.15

千葉工業大学決算(平成20年度)承認


 学校法人千葉工業大学の平成20年度決算が5月27日の理事会・評議員会で承認された。平成20年度は、キャンパス再開発による施設設備の充実。また、新学科・大学院新専攻設置による教育・研究の高度化などを反映した決算となった。

1教育研究活動

(1)新学科・大学院新専攻設置の検討
 社会科学分野へのより積極的な展開を図り、受験生のニーズ及び社会の人材養成に応えるため新学科を設置することにした。新学科は昨今の社会状況を見据え、金融を中心としたリスク科学分野とし、平成20年9月設置届出が受理された。
 また、大学院においては、未来ロボティクス学科の大学院修士課程を学内外からの要請に応えて、平成21年度に開設することとし、平成20年12月に受理された。

(2)学生生活の満足度向上へ向けた継続的対応
 1学生生活アンケート調査の実施と活用
 調査結果は、学生の意識の変化に伴う新しい考え方の理解に結び付き、学生指導や教育計画立案等の参考資料として成果をあげている。
 2授業満足度調査の活用
 授業満足度調査の結果を教授会において教員に配付し、学生の授業満足度向上に反映させるよう活用している。また、平成20年度からは、学生証を使った出席システムが稼働し、学生の長期欠席を把握し授業への出席を促すよう連絡するなど、休学・退学者の減少につなげていきたいとしている。

(3)学生支援の充実強化(学生相談、課外活動、奨学金等)
 平成19年度から、総合学生支援部署としてスタートした学生センターでは、学習・研究・学生生活を総合的に支援している。
 教育研究関係では、JABEE対応や教員のFD活動を専門的に支援し、教育研究環境の整備に努めている。

(4)教養基礎教育及びリメディアル教育の充実
 1リメディアル教育の充実
 工科系の大学教育に必要な、数学・物理学・化学について、一定のレベルに達していない学生に対し、プレ科目を配置し半期をかけて教育をしている。
 2学習支援センターの開設
 工学の基礎となる数学、物理学、化学を中心に多様な学生の学習ニーズに対応できる環境を整えている。

(5)キャリア形成教育の実施
 新1年生には本学のキャリア支援への取り組みを説明。2年次では、インターンシップ希望者の養成に努め、3・4年次の就職支援プログラムでは、学生のニーズに合わせた就職ガイダンスや支援講座を行うと共に、スキルアップ講座や各種資格試験対策となる講座を開設した。

(6)インターンシップ制度の充実
 学生が自分の将来を見据えた実務体験ができるインターンシップへの支援強化を図った。平成20年度は未来ロボティクス学科の3年生が初めて単位化された科目としてのインターンシップに取り組んだ。

(7)新入生に対する少人数制による総合的な支援
 1導入教育(オリエンテーションの実施)
 全学部、全学科の入学生を対象に「導入教育」の一環として各学科単位にオリエンテーションを実施。
 2メンターの制度
 これまでのクラス担任制に加え、全専任教員によるメンター制度を導入。学生を少人数のグループに分け、入学時から卒業まで、その成長に見合った適切な助言・指導を行う支援体制を、建学の精神「師弟同行・自学自律」の実践の一つとして実施している。

(8)JABEE(日本技術者教育認定機構)認定申請に向けた取組強化

(9)FD活動の加速
 FD活動の組織は、学部の「FD推進委員会」、大学院の「大学院FD委員会」、学部と大学院のFD活動を一元的・効率的に協議する「FD協議会」の3つで構成している。具体例としては授業満足度調査の結果を踏まえて、授業改善に役立てている。

(10)自己点検・評価報告書の作成及び第三者評価受審
 平成19年度より準備を進めてきた自己点検・評価報告書の作成及び第三者評価受審について、平成16年度に実施した自己点検・評価報告書のその後の改善状況を検証しつつ、(財)日本 高等教育評価機構の基準に従って自己点検・評価を実施し、平成20年6月に同機構へ自己評価報告書を提出した。その後、同機構からの書面質問、実地調査を受け、平成21年3月「同機構が定める大学評価基準を満たしていることを認定する」との通知を受けた。

2研究推進活動

(1)科学研究費補助金採択研究者への研究費支援
 平成20年度科学研究費補助金への申請件数は72件で、継続分を含めて34件が交付内定を受けた。
 平成20年度より科学研究費補助金新規採択研究者に対し、直接経費の圧縮分を総合研究所から支援し、同時に、間接経費を獲得した研究者に対し、間接経費の半額相当額を学校費として支援した。

(2)公的機関(NEDO、経産省等)からの受託研究
 公的機関からの受託研究は前年度飛躍的に件数が増加したが、平成20年度も25件(前年度実績21件)となり、引き続き増加傾向にある。
 主なものは次の通り。

  • 独立行政法人科学技術振興機構(JST)の助成金「次世代癌治療のためのバキュロウイルスエンジニアリングの研究(平成20年度〜22年度)」金額:平成20年度4095万円
  • 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト、移動知能(社会・生活分野)の研究開発(平成19年度〜23年度)」金額:平成20年度3592万3650円

【NECソフト株式会社、芝浦工業大学との産官学連携プロジェクト】

(3)産官学融合の強化
 イノベーション・ジャパン、パテント・ソリューション・フェアでその他SURTECH2008など全国的なイベントに積極的に参加し、本学研究者のシーズを発表することができた。また、千葉県商工労働部、コラボ産学官千葉支部、習志野商工会議所等と連携を図り、シーズ発表、セミナー、技術相談等を行った。
 総合研究所は、学内で遂行された66件の先端研究の成果を研究活動報告会として公開した。

(4)未来ロボット技術研究センターの活動
 未来ロボット技術研究センターでは、主に次のような活動を行った。

  • 平成20年6月5日〜7日、日本機械学会主催「ロボティクス・メカトロニクス講演会2008」にてNEDOプロジェクトで開発した「運動制御モジュール」を発表した。
  • 平成20年7月14日〜21日、中国・蘇州で開催されたロボカップ世界大会の「レスキュー実機リーグ」に参加した。大会では本来の性能を発揮できないまま総合6位となったが、ベストインクラス「自律ロボット部門」では3位に入賞した。
  • ROBO−JAPAN2008実行委員会主催「ROBO−JAPAN2008」(開催期間平成20年10月11日〜13日)において、未来ロボティクス学科の協力によりロボットの展示・デモを行った。また、セミナーやステージではfuRo関係者による講演・ロボットデモを行い、多くの入場者にアピールするとともに多数のメディアに取り上げられた。
3学生支援関係

(1)健康生活への支援
 近年、心の悩みを訴える学生が急増していることに伴い、津田沼・芝園両校舎にカウンセリングルームを設け、合計4名のカウンセラー(臨床心理士)を配置している。平成20年度は津田沼校舎の開設日数を前年の週3日から週4日に増やし、カウンセリングの充実を図った。

(2)課外活動支援の充実
 学生が社会に巣立った後、特に求められる社会性や人間力を培っていけるように、課外活動を通じて支援を行っている。
 また、支援するクラブを選出し、運動用具や備品を援助しているが、平成20年度は11クラブに対して援助した。

(3)学生共済会の充実
 1メンタルヘルスサポートシステム及びドクターオブドクターズネットワークシステム支援
 近年、心の悩みを訴える学生が急増していることに伴い、学生共済会では学生とその保護者が電話や面談によるカウンセリングや健康・医療相談を受けられるサービスを展開している。
 2暮らしの法律相談サービス
 平成20年度後期から,学生共済会の新規事業として暮らしの法律相談サービスを立ち上げた。日常生活を送る上での様々なトラブルに対応するためにWebやFAXにより法律相談が受けられるもので、利用者は学生とその保護者。

4施設設備整備関係

(1)津田沼校地再開発計画の推進
 1新1号棟の竣工と研究室の移転
 津田沼校舎新1号棟が完成し、順次研究室等の移転作業を行った。また、新2号棟に移転が予定されている学科の仮移転も9月末日に完了。
 22・3号館、西側校舎及び機械科実験室の解体
 既存校舎の解体と、これに伴うライフラインの整備を平成21年3月末日までに行った。
 3連絡歩道橋の建設
 JR津田沼駅南口広場ペデストリアンデッキに接続する連絡歩道橋建設が、平成21年7月中旬完成に向け順調に工事が進捗している。
 4外構の緑化工事
 北側から正門を挟んで西側の外柵の一部を撤去し、幅3・6メートル、長さ400メートルにわたり植栽を行った。

(2)その他施設設備整備関係
 1津田沼校舎

  • 屋根付喫煙所の設置工事
    6号館脇プラザ(池)南側の喫煙場所に屋根を取り付け風雨対策を行った。
  • 6号館及び7号館AV機器増設工事

 2芝園校舎

  • 5号館AV機器増設工事
  • 7号館空調システム改修工事

(3)キャンパス再開発に伴う基幹LANの再構築
 津田沼新1号棟内、各研究室及び会議室に情報コンセントを敷設し、学生実験室、大教室、会議室、ホール等には無線LANを設置した。LAN構成は直集型を踏襲している。

5地域・社会への貢献

(1)社会に向けた公開講座の充実
 生涯学習の場として社会に開かれた大学を目指し、公開講座を開設している。
 また、小・中・高校生や保護者の方も気軽に参加できる夏期講座の実施や、公開講座参加者の満足度を高めるために、受講者の意見を反映して開講回数を増やすなど工夫しながら実施した。

(2)大学発ベンチャー
 平成19年9月に設立した本学初のベンチャー企業「移動ロボット研究所」(社長:)の平成20年度の売り上げ見込みは約2400万円となった。また、移動ロボット研究所からは学校法人千葉工業大学に、受配者指定寄付金として200万円の寄付申し込みが行われた。

6法人管理・運営関係

(1)円滑なる第三者評価受審のための事務対応
 自己点検・評価の実施及び第三者評価受審のため、自己点検評価委員会が平成19年4月に発足した。自己点検評価委員会の活動を円滑に進めるための支援体制としては、自己点検評価委員会が取りまとめ役となり進められた自己評価報告書の作成、学内諸情報・資料の収集等において、関係部署から選任された担当者を中心として、精力的に事務的サポートを行った。

(2)監査機能の強化
 監査室では、機関管理体制の整備の検証を行うとともに、公的研究費の実施状況について実地検査、特別監査を行った。また、取引業者及び公的研究費の受給教員に対して、預かり金等の公的研究費等の予算執行に係る調査を実施した。なお調査の結果、本学では問題となる実態がないことが判明している。
 会計監査関係では、監事、公認会計士との連携のもと、特に資産運用、キャンパス再開発計画に対する長期資金計画等について点検、監査を行った。
 業務監査関係については、第三者評価の受審、格付け評価更新審査への協力などを行うとともに、学生寮における食中毒発生への対応支援などを行った。

7財務の概要

(1)帰属収入171億2000万円(予算比2億2600万円増 前年度比5億8700万円減)
 帰属収入は、学生生徒等納付金、手数料、寄付金(現物寄付金)、補助金、資産運用収入、事業収入、雑収入(私立大学退職金財団交付金収入)のいずれの項目も予算比増となり、予算比2億2600万円増加し171億2000万円となった。
 前年度決算比では、5億8700万円の減少となった。主な要因としては、学生生徒等納付金が2億1900万円、雑収入が1億5000万円増加しているものの、前年度に5億4200万円あった資産売却差額(有価証券売却)がゼロになったことに加え、資産運用収入の3億1000万円の減少や手数料、寄付金、補助金、事業収入がそれぞれ減少したことである。

(2)消費支出138億7700万円(予算比3億2300万円増 前年度比12億2100万円増)
 消費支出は、予算比3億2300万円増加し、138億7700万円となった。
 1人件費は、予算とほぼ同額の63億8800万円となった。予定外の退職者がいたために、退職金が増加したが、予算比700万円の増加に収まった。
 人件費比率(人件費÷帰属収入)は、37・3%で理工系複数学部の平均値(48・4%)に比し引き続き低い水準となった。
 2教育研究経費は、受託研究費の増加があるものの、消耗品費、旅費交通費、修繕費、奨学厚生費等がそれぞれ減少したことにより、予算比8100万円減少した。
 教育研究経費比率(教育研究経費÷帰属収入)は、再開発計画実施に伴う経費が発生したことにより35・1%となり、理工系複数学部の平均値(31・5%)に比し3・6ポイント高い値となった。今後も同比率は理工系複数学部の平均値程度と予測している。
 3管理経費は、年度末の為替状況によりオーストラリアドル預金に4億1400万円の為替評価損が発生したため、予算比3億9700万円の増加となった。管理経費比率(管理経費÷帰属収入)は、8・1%で理工系複数学部の平均値(7・1%)より高くなった。今後とも効率化が必要である。
 なお、前年度決算比では12億円の増加となった。為替評価損以外の主な要因は、再開発計画の実施(津田沼校舎の新1号棟完成)に伴う、既設校舎(2・3号館と機械実験室)の解体工事に5億円、研究室・実験室の引っ越しに3億円、減価償却額1億円、光熱水費6000万円等の増加による。

(3)帰属収支差額32億4200万円
 帰属収入から消費支出を引いた金額である。
 帰属収支差額比率〔(帰属収入−消費支出)÷帰属収入〕は、18・9%となった。

(4)基本金組入額31億4100万円
 概要は、次の通り。
 1第1号基本金103億1000万円
 ア建物36億3400万円

  • 津田沼新1号棟新築(131億1900万円)
    建物支出51億1000万円
  • 津田沼2・3号館取壊し△15億5300万円
  • 津田沼機械実験室取り壊し△1億4700万円
  • 改修工事(第2号基本金から振替)2億2400万円

 イ構築物1億500万円
 ウ建設仮勘定(津田沼新校舎、歩道橋)65億5400万円
 2第2号基本金△71億6900万円

  • 教育環境整備資金(津田沼U期工事)31億円
  • 校舎改修準備資金15億円
  • 第1号基本金への振替△117億6900万円

【内訳】
 津田沼T期工事△49億9100万円
 津田沼U期工事△65億5400万円
 建物改修工事△2億2400万円

(5)消費収支差額1億100万円
 以上の結果、当年度の消費収支差額は、1億100万円の収入超過となった。
 前年度の繰越消費収入超過額23億9700万円と合わせ、翌年度への繰り越しは24億9900万円の収入超過となった。

(6)今後の課題
 今後も引き続き財務基盤の安定をはかるため、次のような課題に取り組んでいく予定。

 <収入面>
 1学生生徒等納付金の安定的確保に努める。
 入学者数の確保は大前提ながら、学生生徒納付金の減少を図るためにも、教育力の一層の充実による退学者数の圧縮に努力する。
 2外部資金の獲得
 国庫補助金(特別補助)、受託事業収入、科学研究費補助金などの外部資金の収入増加を図っていく。
 3資産運用の一層の効率化
 4その他の収入源確保策の検討

 <支出面>
 1人件費、管理経費の効率化
 平成21年度以降、収支状況は厳しくなると予測している。収入に見合った経費率を念頭において財務運営を行っていく。
 2教育研究経費の見直し
 従来の延長線上ではなく、メリハリをつけて展開する。

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