NEWS CIT ニュースシーアイティ

2007.10.15

佐野教授らの研究採択 −文科省の学術研究高度化推進事業−


地域産業での人材育成
佐野教授
佐野教授
 地域企業の発展を通じて地域社会の振興に寄与――文部科学省が推進する「平成19年度私立大学学術研究高度化推進事業」のうちの「社会連携研究事業」の対象として、本学社会システム科学部の「地域産業における創造的人材育成プログラム開発」(代表・佐野利男経営情報科学科教授)が選ばれた。
「創造の方程式」を作成
 この事業は、大学が地方自治体や企業との連携のもとに行う、「地域の活性化に役立ち地域社会の振興に寄与する」共同研究に対して文科省が支援・助成を行うもの。
 佐野教授らの研究は、地域社会の活性化を支えるのは地域産業での人材育成であり、育成の基本は創造力であるという観点から出発している。つまり、中小企業が限られた採用枠の中で真に優れた人材をどう見つけだすか、人材をどう育てるかが中心課題だ。
 ポイントである創造力については、ノーベル賞受賞者のような高いレベルで語られがちだが、実際に必要なのは個人の資質や努力というより組織の創造力育成である。
 研究では、リスクについての法則や経験則を創造性の問題にも適用できるという方向をとっており、全体として創造力を育成するためには低レベルの創造事例を積み重ねるほかないとしている。
 すでに5年以上、企業で働く人たちから仕事上の小さな成功例などをヒヤリングし、仮説を立てて分析してきた。仮説は「創造とは新しい情報の生産であり、新しい情報は2つの既知情報の結合から生まれる」というもの。そして「創造の方程式」を作成し、この方程式はすべての創造事例について成立することが明らかになっている。
 研究の目的と内容についてはいくつかの地域企業に説明し賛同を得ている。習志野商工会議所はじめ地域企業との共同研究となっており、5年間(19年度〜23年度)の研究費5830万円のうち約2分の1が助成される。

本学技術士会が特別講義


溝邊会長の講義に3年次生29人受講
溝邊技術士会会長 学生29人が受講した技術士会の特別講義
溝邊技術士会会長 学生29人が受講した技術士会の特別講義
 「千葉工業大学技術士会」の技術士が講師となっての特別講義「社会における技術士(補)の役割」が、9月20日(木)午後4時15分から津田沼校舎6号館614教室で行われ、3年次の学生29人が受講した。
 この講義は、一昨年9月に本学技術士会が設立されたのを機に話が進み実現した。講義概要は、技術士制度と技術士(補)取得の啓蒙、技術者として必要な社会的な知識・倫理、卒業生技術士による実践的な立場からの事例など。
 講義項目は、経験事例の紹介、技術士一次試験の概要と演習などから技術者倫理、国際規格と相互認証の動向などで来年1月17日まで15回開かれる。
 初回の9月20日の講義は、ガイダンスが開かれ、南和一郎教授(機械サイエンス学科)が全体の講義の進め方を詳しく説明。この後、溝邊哲男本学技術士会会長(昭和36年電気卒)が講師となって、日本における技術者資格制度の概要や105人が在籍している本学技術士会の現況、技術者に対する時代の要請などの講義を行った。

プロジェクトマネジメント学科 人材育成実証講座開く


京葉臨海コンビナートの国際競争力強化へ
人材育成実証講座会場
人材育成実証講座会場
 千葉県の中核産業が集中する京葉臨海コンビナートの国際競争力を高めよう――本学社会システム科学部プロジェクトマネジメント学科は、本学産官学融合センターの協力で千葉県が進める『産学連携製造中核人材育成事業』に参画し、8、9月にそれぞれ5日間の実証講座を開いた。
 この事業は、経済産業省が平成17年度にスタートさせたもので、千葉県では「財団法人・千葉県産業振興センター」がコーディネーターとなり、昨年度から本学と千葉大学が委託を受け、コンビナート立地企業が協力している。
 プロジェクトマネジメント学科は、進藤昭夫教授と越島一郎教授が中心となり、製造現場が抱える課題に対応できる中核人材を育成するためのカリキュラム・教材の開発に当たってきた。
 今回、本学が担当したのは「中核オペレーター育成コース」の中の「製造現場トレーナーの育成」(A)と「ミドルマネジメント育成コース」の中の「効果的な製造現場教育システム」(B)の2講座。
 本講座では、自律的な思考・行動能力を育成するため講義とゲーミングシミュレーションによる体験実習を取り入れた。また、A、B両講座受講者による合同討論も行われた。
 参加者からは、「新鮮な印象を受けた」「自分を見直す良い機会になった」「教えるということについて改めて考えてみたい」などの感想が寄せられ、両教授らは来年度からの本格講座実施に備えている。
 なお、本年度は「製造現場における安全とリスクマネジメント」の教材開発も進行中で、11月と来年2月に実証講座が開かれる。
出版案内

幻の技術稀書を75年ぶりに復刻
[復刻・解説版] 俵 國一 「古来の砂鉄製錬法」・たたら吹製鉄法
[復刻・解説版]
俵 國一 「古来の砂鉄製錬法」
たたら吹製鉄法
監 修 館 充(東京大学名誉教授、元千葉工業大学教授)
編 集 雀部実、寺島慶一
 (いずれも千葉工業大学工学部機械サイエンス学科教授)他5人
発 行 慶友社
価 格 本体4800円+税
 日本の鉄鋼工学の基礎を作り上げた俵國一博士は東京帝国大学の教授に就任するより以前の若い頃(明治30年=1898=頃)に、当時まだ実用に供されていた日本の伝統的製鉄法である「たたら製鉄法」の現地調査を行い、その成果をまとめて昭和8年(1933年)に出版した。
 同書は「たたら製鉄」技術を研究する上での基本的図書と考えられてきたが、その多くのものは第2次世界戦争で失われ「幻の書」と言われるようになってしまった。その内容は「たたら製鉄法」の技術的知見だけではなく産業的知見も含まれており、技術史資料として一級品である。「たたら製鉄法」はヨーロッパを源流とする現代製鉄法に駆逐され、現代の技術者や技術史の専門家たちがその内容を再度確認したいと思ってもそれが不可能に近いものとなっていて、本書の復刻が望まれていた。
 日本鉄鋼協会・社会鉄鋼工学部会『鉄の歴史』―その技術と文化―フォーラム「古来の砂鉄製錬法」研究会は、わずかに残された書籍を頼りにその復刻を行った。本書は昭和時代の出版物ではあるが、出版後75年を経過しているので、原書の文章は現代人にとってやや難解な日本語となっている。
 研究会はまず忠実に復刻することを行い、その上で現代人が理解できるように解説を行っている。本書の監修者と編集者は鉄鋼技術の専門家だけではなく考古学や分析の専門家で構成されており、やや古語に属する日本語の解説だけではなく、専門的な立場からの内容の検討を行って原書の理解の助けになるように多数の注釈をつけている。また、利用しやすいようにこれらの注釈も含めた索引をつけている。
 『鉄の歴史』―その技術と文化―フォーラムは「現代語訳・鉄山必用記事」と「近世たたら製鉄の歴史」という日本の鉄の歴史に関する研究成果をすでに2冊出版しており、本書はその一連の成果に続くものである。本書の監修者と編集者の合わせて8人のうち3人が千葉工業大学の教授または元教授であるということも、本書の特徴である。
雀部教授
雀部教授