2005.2.15

3面
 

小泉教授
原爆投下直前の広島市街地「数値地図」完成

米軍撮影の写真入手、危機管理研究などに貢献
 

 
▲原爆投下直後の市街地(毎日新聞社提供)
 

▲小泉教授が作成した原爆投下直前の広島市街地数値地図の一部
 本学工学部建築都市環境学科の小泉俊雄教授が、原爆投下直前の広島市街地の大縮尺地図をほぼ全域にわたって完成させた。原爆投下直前の広島市街地全域を網羅した大縮尺地図はこれまで存在しておらず、同教授が初めて作成した。
 この地図は縮尺5000分の1に相当するもので、各戸の家屋、竪牢建造物、道路、河川、橋梁、鉄道などが描かれ、平面位置と高さの情報が備わった数値地図となっている。
 地図作成のきっかけは、小泉教授が3年ほど前に、米軍が撮影した広島の原爆投下直前・直後の航空写真の存在を知り入手して、被害の状況が鮮明に写っていることが判明したことから。その後、いろいろ調べていくうちに、原爆に関する調査研究資料は多く存在するものの、投下直前の市街地の大縮尺地図がないために詳細な被害分布図が作成されないなど、調査や研究に支障が生じていることが分かった。
 これまで広島市全域の大縮尺地図が存在しなかったのは、原爆投下直前の航空写真が日本で市販されたのは平成14年と日が浅く、関係者がほとんど知らなかったこと。撮影された写真がかなり古く、規格外で、1枚のネガを半分に切った状態のものだったから。地図作成には専門知識を必要とし、業者に発注した場合膨大な費用(見積額は約1000万円)を要することなども作成されなかった理由になっている。
 地図を作成した小泉教授は「地図は多くの分野の研究や社会活動の基盤となるもので、この地図は原爆被害や危機管理の研究など多くの面で社会に貢献できるものと考える」と語っている。
 
 
 

第3回web教材コンテスト

優秀賞3件、奨励賞1件
 

 本学情報・メディアセンター委員会(委員長=三井田惇郎・情報科学部学部長)主催の「第3回Web教材コンテスト」(実行委員長=浮貝雅裕・情報ネットワーク学科教授)の受賞作品が決定した。
 このコンテストは、本学在籍中の学部学生で編成されたチームを対象にして、教材としての価値、Web教材としての有用性、利用者インタフェース、デザイン、コラボレーション度などが評価基準。1次、2次審査を経て各賞が決まった。今回は惜しくも最優秀賞を逃したものの、3作品が優秀賞を分かち、1作品が奨励賞で続く結果となった。
 授賞式は1月13日(木)正午から7号館7階情報ネットワーク学科第1ゼミ室で行われ、受賞各チームに三井田教授から表彰楯と豪華副賞が授与された。各賞の受賞者は別掲のとおり(敬称略)。
 今回の審査について、浮貝実行委員長は「毎回応募作品は質的に向上し、受賞に至らずとも参加者層が拡大傾向にある中、今後はさらに優秀な作品が増加して選考に苦慮する程のコンテストに発展して欲しい」と総評を語った。
優秀賞(表彰楯+副賞=旅行券15万円分)
  「THE EARTH」
  佐藤 由太 情報ネットワーク学科1年
  新紫 博之 情報ネットワーク学科1年
  「めん子ちゃんの食生活講座」
  竹内 健治 情報工学科4年
  村田 純一 情報工学科4年
  「千葉工芸大学」
  石黒 赳彦 情報ネットワーク学科3年
  白川 弘明 情報工学科3年
  松枝 和宏 情報工学科3年
奨励賞(表彰楯+副賞=ギフト券5万円分)
  「たばこによる人体への影響」
  田所 達也 情報工学科4年
  谷井 隼人 情報工学科4年

▲三井田教授(中央)と優秀賞受賞者
 
 

「研究室は今・・・」研究室ナビ(1)

情報ネットワーク学科第5研究室(柳川研)
快適な音環境の創造へ
「まず視聴ありき」が発想の原点
 

 千葉工業大学にとっても、民間企業にとっても、今ほど産学連携の技術研究が強く叫ばれている時代はありません。本学の研究が広く社会に出て、その研究成果は高く評価されています。そこで、今月号から随時、注目される技術研究の紹介を目的に『研究室は今…』を連載します。第1回は、情報ネットワーク学科の「柳川博文研究室」から始めます。
▲“音空間の研究”を熱く語る柳川博文教授 ▲「学生は友だちみたいな感じ・・・」という研究熱心な柳川教授に協力する学生たち
 津田沼校舎7号館6階の明るい部屋が情報ネットワーク学科柳川博文教授の研究室だ。
 同教授は、パソコンに新たな音響技術を搭載する「オーセンサラウンド」を開発した。音響機器開発販売会社のオーセンティック社(本社・川崎市)と提携して研究をはじめて、昨年秋にNECが主力モデルとして「サラウンド効果」搭載の新機種のパソコンを販売、話題になった。
 柳川教授は「情報ネットワークに乗せるマルチメディアコンテンツの中の一つとして音響を扱う。主に音空間の物理と心理の研究です」と明確に答える。
 「基礎研究として、音空間を言葉で表現する。音響事象記述言語の開発提案で、それによる音空間の生成。マルチメディアコンテンツという仮想現実みたいなもの。コンピュータが言語を解読して、受ける側で音響を作り出し、仮想空間の共有ができる」と説明する。
 ディジタル時代で、音の信号処理の技術が進み、人間の聴覚で最適になるように処理の仕方を探っていた。柳川教授に言わせると、『まず聴覚ありき』という考え方からの発想。聴覚の落とし穴に落ちずに平均的な特性を探りともかく聴いてベストな条件を見つけた。
 「産学連携はやり甲斐がある。このように製品化されるのはありがたい。ただ製品化しようという会社は少ない」と実情を話す。「今回成功したのは、会社が機器を貸してくれたのと、本学に“無響室”(全く反響しない測定室)があったおかげです」と感謝している。
 いま進めている研究は、音空間の研究を通じて仮想空間の応用。
例えば入院している児童のための学級(院内学級)を考えている。院内学級をネットワークで近くの小学校と音声と画像≠結び、入院中の児童が一緒に授業を受ける感じのシステム。「先生の声も大事だが、周りの児童が手を挙げて答える声、いろんなことを言っている児童の声が、一緒に勉強しているように聞こえる」と意欲的だ。
 同研究室には、院生2人、修士課程の学生2人、学部生10人がいる。「私は企業にいたので、研究に強い意識を持っていて、学生には私の研究のデータ処理も手伝ってもらう。学生には『自分のスキルは自分で身につけろ』と言っています。学生は友だちみたいな感じです」と笑う。昔は「継続は力なり」が座右の銘だったが、「今はスタミナが足りなくて…」と笑った。
 
  
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