昨年暮れ母親の年祭のため、久しぶりに伊勢市の実家に帰省した。
ただ帰るだけではなく、名古屋で降りるついでに織部・志野・瀬戸いずれも好きな美濃焼きを見てこようと乗車券を土岐市駅まで買った。美濃焼きを伝統資料館で見て回ろうと焼き物を見ることばかり考えていた。
名古屋までの新幹線に乗るうち、小さい頃年賀状の宛名を「岐阜県土岐市○○」と書いて出していたのを思い出した。その住所は小学生の頃、夏休みになると母親に連れられ遊びに行っていた場所だった。そう、母親の実家があった住所だったことを思い出したのである。母親の里の方へ向かっているとはその時まで気づかなかったのである。
土岐市から今はもう通っていないバスで山道を登った所にあったその実家は、晩年母が少し寂しげに古民家としてどこかに移築されてしまったと言っていたのも思い出した。母親を思いだす少し感傷的な旅になってしまった。しかし、気に入った黄瀬戸の湯飲みを手に入れ、ほくほくしながら帰路に着いた現金なもう一人の自分がいた。