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2021.3.15

光コネクタ接続条件を検討


松田さん学生奨励賞
 電子情報通信学会の光ファイバ応用技術研究会(昨年8月27、28日、オンライン開催)で、松田健太郎さん(工学専攻博士課程3年、長瀬亮研究室=写真)の「標準外径マルチコアファイバ用光コネクタのフェルール端面微小変形解析(2)」が学生奨励賞に決まり2月5日、表彰状が届いた。
 現在、光通信で使われる光ファイバー(シングルモードファイバー:SMF)に代わり、容量がはるかに大きくSMFと同径のマルチコアファイバー(MCF)が提案されている。そのMCF同士の接続にはファイバー同士を接続できる光コネクタが必要不可欠だ。
 SMFに使われるフィジカル・コンタクト(PC)方式(端面をわずかに湾曲または球状に研磨してファイバー同士を強制的に接触させる)による光コネクタは、継ぎ手フェルール端面の微小変形によって、温度変動があっても光ファイバー・コアの接触を維持する。マルチコアファイバーの場合は、中心以外にコアがあるため、安定なPC接続条件を新たに検討する必要がある。
 松田さんは昨年2月の同研究会で、ジルコニア(セラミック)製フェルールに標準外径4コアマルチコアファイバーを取り付けた場合のフェルール端面の微小変形を解析して報告。凸球面の中心が偏り、光ファイバーが引き込んだ同コネクタの微小変形について新たな結果を報告した。
 松田さんは「受賞はご指導いただいた長瀬先生や研究室メンバーの協力のおかげで、とても感謝しています。さらに成果を得られるように精進します」と語った。

ITビジネスで学習手法実験


長嶋さん優秀賞
 教育システム情報学会の2020年度学生研究発表会(関東地区)は3月8日、オンラインで開催され、長嶋啓太さん(情報科学専攻修士2年、仲林清研究室=写真)の「シェアリングエコノミーのビジネスモデルを主題とした学習手法」が優秀賞を獲得した。
 長嶋さんは仲林研で、情報ネットワーク技術を生かした学習支援方法を研究している。シェアリングエコノミーとは、「メルカリ」や「Uber」などネットを介したIT時代のビジネスモデル。経営とITの両面から現代ビジネスを学ぶのに格好な主題だが、仕組みが抽象的な面も。
 長嶋さんはメルカリ、民泊サービスのAirbnb、Uberの3ビジネス理解に欠かせない抽象概念を▽ネットワーク外部性=利用者が多いほどサービス価値が向上する▽ニーズのロングテール化=多数派のニーズにも少数派にも対応できる▽個人間取引と安全性=事業主は資産を直接所有しないため、提供サービスがよくないとプラットホーム全体に悪影響を及ぼしかねない――の3つに整理。
 情報科学部4年生6人にオンラインで被検者になってもらい、長嶋さんが立てた学習設計=①既有知識の活用②抽象化と再具体化③レポートの共有④ディスカッション――に沿って学んでもらい、3概念について理解度を測った。
 長嶋さんは「研究を評価していただき、うれしい。3年間、仲林先生と研究室の皆さんのお力添えあっての受賞で、感謝しています」と語った。

宇宙めざす女性を応援


坂野さんらオンラインセミナー
宙女と紹介された坂野さん
宙女と紹介された坂野さん
 「宇宙飛行士・山崎直子さんから学ぼう!宇宙飛行士までの道のりや体験談、女性活躍が期待される宇宙業界の展望とは」と題したオンラインセミナーが3月2日、日本ロケット協会の男女共同参画委員会「宙女」=山崎直子委員長=と、ジェンダー平等を応援する(株)Kanatta運営のコミュニティー「コスモ女子」の共催で、本学の坂野文菜さん(工学専攻博士後期課程、和田豊研究室)がパネリストとして参加して開かれた。
 今秋、13年ぶりに日本人宇宙飛行士が募集される予定で、山崎さんは「宇宙分野の裾野は広い。体力のハンデがなくマルチタスクでやる宇宙飛行士は女性に向く仕事」。宇宙輸送工学を専攻する坂野さんは「宇宙のことをやっているといろいろな分野の寄せ集めが大事と分かる。多分野との交流が新たなことを生み出すサイクルがいい」と応じた。
 セミナーではまず山崎さんが2010年にスペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗、国際宇宙ステーション(ISS)で組み立てミッションを行った自身の体験を踏まえ講演。「宇宙に関わる仕事は文系、理系共に幅広い。一方で、どろくさく、人と人のつながりが大事。宇宙はみんなを待っている」と女性に向けてエールを送った。
 その後、坂野さん、山崎さん、宇宙航空研究開発機構(JAXA)調査国際部参事の水野素子さんの3人でパネルディスカッションが行われた。
 子育てと仕事の両立については「むしろ、子育てが宇宙に役立つ。宇宙では優先順位を決めてその都度対応しなければならないから」(山崎さん)、「宇宙業界は非常にグローバル。いろいろなセンスがあっていいじゃないとなる」(水野さん)、「男性を巻き込んで解決しないといけない」(坂野さん)などの発言があった。
 最後に、教育分野への提案について、坂野さんは「また失敗してしまうのではと考える前に、原因があって結果があるので、アプローチの方法を学べる機会があるといい」と話した。

視覚障がい 安全に横断を


小川さん学生奨励賞
 情報処理学会の第30回コンシューマ・デバイス&システム研究会(1月25、26日、オンライン開催)で、小川暖斗さん(知能メディア工学科4年、森信一郎研究室=写真)が「視覚障害者向け信号機付き横断歩道の横断支援システムの開発」を発表。学生奨励賞に決まり2月4日、受賞メールが届いた。
 横断歩道には視覚障がい者用に、音響付き信号機やスマートフォンで信号機の色を教えるものがある。しかし安全な方向や位置関係は障がい者の方向感覚に頼るため、どの方向へ踏み出したらいいのか分からず、一歩目は恐怖を伴うという。
 小川さんらは、障がい者が安全に自信をもって横断するには、安全な方向や渡る先の信号機の位置などを認識する必要があると考えた。
 そこでスマホを腕に装着した状態で振って横断歩道を撮影。撮影情報を元に計算することで、安全な方向の算出と、信号の位置を推定する方法を検討した。
 研究室内に横断歩道を再現し、ハフ変換(図形検出)や角度計算を駆使して、障がい者がかざすスマホに、安全な方向と、先の信号機などを伝える方法を探った。
 課題は見えたが、実現はまだ先の段階。研究では視覚障がいを持つ人の感覚が分からないので、いくつかの障がい者団体を訪ねてインタビューしたという。
 小川さんは「受賞できたことを大変うれしく思います。協力していただいた視覚障がい者の皆様、共同研究者の松本宝さん(同学科4年)、指導の森教授には感謝しかありません」と語っていた。

街区の熱・放射環境を解析


河野さん学術論文奨励賞
 環境分野の研究者で構成する環境情報科学センターが募集した第20回(2019年度)環境情報科学センター賞で、河野恭佑さん(20年に工学専攻博士後期課程修了、小田僚子研究室、現・小学校理科講師=写真)の「都市街区内における熱・放射環境場の時空間変動特性に関する研究」が学術論文奨励賞に選ばれ、昨年12月18日付で賞状が届いた。
 17年から東京工業大、建設コンサルタント会社の研究者(本学OB)の協力で筆頭著者としてまとめた論文4編(共著1編含む)に対し贈られた。
 東京を代表に都市部では、地球温暖化とヒートアイランド現象で暑熱化が進み、熱中症の危険が増している。環境省は全国約840地点の暑さ指数(WBGT)を公開し区市町村スケールで注意喚起しているが、街区レベルで人が受ける熱ストレスは場所次第でかなり変動し、把握が進んでいない。
 河野さんは、黒球温度計や通風筒を自作または改良した観測機器で移動観測した。特に構造物や地表面が複雑な都市部で詳細なWBGTの空間分布の解析を試みた。
 気温や湿度など計14の気象観測機器を搭載した台車で東京都大田区の街道を含む住宅街を移動観測。住宅街では家庭排出の熱や水蒸気で街道沿いよりも熱ストレスが高い傾向にあることを明らかにした。
 観測台車をさらに小型化し、千葉県内の谷津干潟北部の低層住宅街でも観測。水辺や植生の存在と道路構造によってWBGTが変動することを示した。
 これら取得データを基に数値放射モデルの妥当性を評価した。気温や全天日射量を適切な時間分解能で入力することで、街区スケールの局所的な黒球温度を推定できる可能性を示した。