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2021.1.15

移動通信基地局アンテナ改良へ


寺田さん学生奨励賞
 5G時代を迎えた移動通信基地局のアンテナについて、アンテナ・伝搬研究専門委員会の2019年度下半期研究会(オンライン開催)で、寺田一貴さん(電気電子情報工学専攻2年、長敬三研究室=写真)が「左手系漏れ波アンテナのビームスクイントを低減する等価回路パラメータの検討」を発表し、学生奨励賞を受賞。20年6月18日にオンラインで表彰式があった。
 5Gでは、スモールセル(小型基地局)を低コストで配備する必要がある。4Gの小型基地局用アンテナとして、CRLH伝送線路で構成される“棒状の漏れ波アンテナ”が提案されているが、周波数が変化すると通信サービスエリアの大きさも変動してしまう問題がある。
 寺田さんはこの4G(3.5ギガヘルツ帯)用アンテナを、5G(3.8ギガヘルツ帯)でも動作させようと検討している。
 アンテナの構造を等価回路で表し、周波数変動に対する電波の最大放射方向変動を抑制する回路パラメータをランダム探索法で検討。右手系パラメータの値を小さくし、左手系の値を大きくすることがビームスクイント(サービスエリアの変動)を低減する設計指標となることを明らかにした。
 また、実際の伝送線路特性を考量すると、検討周波数帯域幅での最小伝達位相差には限界があることを示した。
 この検討は企業・他大学との共同研究で行われ、意見を伝えるためプレゼンスキルの向上にも力を入れたという。
 寺田さんは「研究会での発表は学生生活で一つの目標としており、受賞は大変うれしく感じています。ご指導いただいている先生方と、支援の家族、発表に携わった皆様に感謝します」と語った。

情報セキュリティー疲労対策


小川さんベストペーパー
 「情報通信セキュリティーの第7回国際ワークショップ(WICS'20)」は「コンピューティングとネットワーキングに関する第8回国際シンポジウム(CANDAR'20)」と連動して昨年11月24〜27日、日本でオンライン開催された。小川美里さん(プロジェクトマネジメント学科2019年度卒業生=現在市原市役所勤務、谷本茂明研究室=写真)が発表した「Information Security Fatigue Countermeasures Based on Cognitive Strategy Scale(認知戦略尺度に基づく情報セキュリティー疲労対策)」がベストペーパーに選ばれた。
 近年、増加している内部不正などのセキュリティー対策として、心理的観点に基づく対策が注目されている。今回、新たに認知心理学で用いられている認知的方略を導入することで、人間の行動パターンに即したセキュリティー対策の立案が可能になることを明らかにしたもの。
 先行研究があまりない中、まず、どう研究を進めていくかに苦労したという。
 小川さんは「賞を頂けると思っていなかったため、夢のような気分です。先生方のおかげで、感謝してもし切れません。ありがとうございます」と語っていた。

IoTのリスクを多面評価


留学生ソナムさん受賞
 IT時代の情報技術やセキュリティーを話し合う高度応用情報学の第9回国際会議(IIAI AAI2020)は昨年9月1〜15日、日本でオンライン開催され、IT大国インドから本学に留学中のソナム・ワンギャルさん(マネジメント工学専攻修士2年、谷本茂明研究室=写真)が発表した「A Study of Multi-viewpoint Risk Assessment of Internet of Things(IoT)=多面的な観点に基づくIoTのリスク評価に関する研究」が、Honorable Mention Award(奨励賞)を受賞した。
 ビッグデータ時代に、電子機器をネットで結び活用されるIoTは、セキュリティー面での脅威も増し、ITガバナンス上の問題になっている。ソナムさんはIoTのリスクを、サイバー面だけでなく物理面・運用面など非サイバー面も含めた多面的な観点から分析・評価した。
 谷本教授のもと、関心を抱いてきたテーマを選び、文献調査に努め、関連動向に常にアンテナを高く保つようにしてきたという。
 ソナムさんは「谷本先生のおかげで論文を完成できました。大変うれしく光栄に思います。IoTは、持続的な未来を実現するために欠かせない技術だと思います。将来もIoTを通じて人・社会に貢献できるようになりたいと考えています」と受賞を喜んだ。

小型ロケット 洋上発射 2日で5機成功


ロボトライアスロン目指す
 本学は2020年11月14、15日、夷隅郡御宿町の網代湾で3回目の小型ロケットの洋上打ち上げ実験を行い、2日間に5機を発射し、すべて成功した。1日当たりの打ち上げ機数を増やせたことで、将来、御宿町で開催予定のロボトライアスロンの実現へ、大きく近づいた。
 小型ロケットは、和田豊准教授の指導で、機械電子創成発展実験・実習の一環として機械電子創成工学科の3年生が設計製作したロケット▽本学主催のロケットガール&ボーイ養成講座に参加する関東近郊の高校生らが設計製作したロケット3機▽本学ロケットサークル団体SPARKの学生たちが設計製作したロケット――の計5機。
 特に15日には、12時半から1時間半の間に3機を打ち上げ成功した。
 洋上発射実験は、本学が計画する宇宙微粒子採取ロケットプロジェクトで国内発射地難の打開策として洋上で打ち上げ、高度100`に到達する観測ロケットを目指す。その基礎研究として19年3月、国内で初実施。洋上の揺れがロケットの発射に与える影響などを調べて改良を重ね、洋上フロート上に最大3機を同時発射できるようにした。
 開催を目指すロボトライアスロンは、小型ロケットを利用して新しい宇宙技術を競うコンペとして高校生・大学生に参加募集。小型ロボット搭載ロケットを開発し、ロケットを海に向けて打ち上げ、パラシュートを展開後、小型ロボットを放出。着水したロボットが海を泳ぎ砂浜を走破してゴールを目指す。広い砂浜が魅力の御宿町の町おこしにもつなげる構想だ。
洋上フロートから打ち上げた瞬間
洋上フロートから打ち上げた瞬間
網代湾を上昇するロケット 発射をカメラで捉える養成講座の高校生たち
網代湾を上昇するロケット 発射をカメラで捉える養成講座の高校生たち