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2020.7.15

「農工芸レストラン」受賞


デザ科 佐藤研の4人
 農業を通じて社会的課題の解決を目指す「第4回大地の力コンペ」(東京都千代田区の未来農業創造研究会主催=3月6〜8日)は、新型コロナウイルスの感染拡大で、会場に集まらずファイナリスト11チームがプレゼン動画(6分間)を主催側に送ることで競われ、本学デザイン科学科・佐藤弘喜教授の研究室の4人が提案した「農工芸レストラン-Reveger-」が、グッドチャレンジ賞3組の1つに選ばれた。
 4人は4年生の古閑玲佳さん、遠藤杏実さん、佐藤海斗さん、木村颯汰さん。規格外野菜と子どもへの食育を合わせて考え、体験型レストランを提案した。野菜嫌いの多い子どもたちを農業体験に誘い、野菜で工作したり、規格外野菜を使った料理を食べてもらい、食育につなげる。
 県内の市川市厚木に472平方bのモデル地を設定。規格外野菜の廃棄に抵抗がある農家に野菜を提供してもらい、敷地で農業体験も手ほどきしてもらう。
 レストランは平屋の同一空間に食事と工作のスペースを設け、規格外野菜の加工品も販売する。訪れるだけで3つの食育要素(農業体験/工作・料理/販売)があり、経費も維持できるビジネスモデルとして提案した。
 タイトルの「Reveger(レベジャー)」はrestrunt,experience, vegetables,recycleを組み合わせた造語で、農業体験ができる規格外野菜を使ったレストランを目指して名付けた。グッドチャレンジ賞は農業の活性化に果敢に挑んだアイデアに贈られる。
 古閑さんら4人は、農業が抱える問題を知るよい機会になったという。佐藤教授は「この学年の研究室メンバーでの初めてのコンペでしたが、協力し合って賞をいただくことができました。他の受賞者が農業を専攻する方々なのに、我々はデザイン系からの受賞で、とてもうれしく思ってます」と語った。
佐藤研の(左から)佐藤さん、遠藤さん、古閑さん、木村さん
佐藤研の(左から)佐藤さん、遠藤さん、古閑さん、木村さん

制御工学 誤差低減を研究


照井さん学生発表賞
 第64回システム制御情報学会研究発表講演会(SCI'20=5月20〜22日、コロナ禍のためウェブ会議システムZoom上で開催)で、照井遼さん(電気電子工学専攻修士1年、松田忠典研究室)が「ロバストPID制御系設計法の保守性の低減〜写像定理とレオンハルト法によるアプローチ〜」を発表し、SCI学生発表賞を受賞した。
 ロバスト制御とは制御工学で、対象の数式モデルが実際と多少異なっても希望の性能内に収める技術。PIDは微積分など3つの要素で入力値を決定するが、解析結果と実際との差である「保守性」が大きくなりやすい。
 照井さんは、この保守性を低減しようと、設計過程で行う「安定判別」という作業に着目。先行研究とは異なる「写像定理とレオンハルト法による安定判別」という手法を検討し、実際に保守性が低減できたかを数値実験で検証した。
 保守性の概念や数式を分かりやすく説明するため、友人たちに意見を聞いて工夫したという。
 照井さんは「初めての学会発表で賞をいただけ、とてもうれしく思いました。アドバイスをいただいた先生方や研究室仲間に深く感謝します」と語った。
学生発表賞の照井さん
学生発表賞の照井さん

電源回路の小型化で受賞


櫻山さん、長島さん 英文で
 米国ハワイ州ホノルルで予定されていた国際会議「2020 International Workshop on Nonlinear Circuits, Communications and Signal Processing」(NCSP'20=2月28日〜3月2日、ヒルトン・ワイキキ・ビーチホテル)は、新型コロナウイルスの感染拡大で会議場での開催は中止され、複数の査読者が投稿論文の新規性・有効性などを審査。総合点上位10%の論文を受賞対象とした。その結果、櫻山佳紀さん(電気電子工学科4年、魏秀欽研究室=写真下左)と長島宏陽さん(同=同右)がともにStudent Paper Awardを受賞した。発表内容と感想は次の通り。
●櫻山 佳紀さん
 「電子電機機器に含まれる電源回路の小型化・高効率化について」
 E級インバータをさらに小型化しようと試みた。従来型では高周波動作による小型化だけが考えられていたが、櫻山さんはこれに加えインダクタの小型化を検討して回路を設計した。
 英語で論文を書き、研究データもなかなか良いものが得られず苦労したという。
 「4カ月ほどかかった論文で、よい結果を残せて、とてもうれしいです。魏先生と支えてくれた仲間に感謝しています」
●長島 宏陽さん
 「Design of Class- E2 DC-DC Converter for Further Miniaturization(E2級DC-DCコンバータのさらなる小型化のための設計)」
 スイッチング電源のひとつ・E2級DC-DCコンバータの小型化を妨げている原因のひとつにインダクタがある。これを改善し解析し直した高調波成分を考慮したE2級DC-DCコンバータの設計曲線を導き出すことで、設計可能範囲を議論し、設計した。
 やはり英語での執筆に苦労したという。
 「研究室の同期や先輩、先生のアドバイスや添削がなかったら賞をいただけなかったと思い、とても感謝しています。最後までやり切ってよかったと思いました」

自律ロボ技術、また一歩


友納副所長が最優秀賞に
 計測自動制御学会などが共同主催する「第25回ロボティクスシンポジア」(3月16日・北海道函館市で開催予定だったがコロナ禍でオンライン開催に変更)に、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の友納正裕副所長=写真=が「幾何特徴マッチングに基づく3D-SLAMにおけるループ検出」を発表し、最優秀賞を獲得した。
 論文は、環境形状を3次元で捉えるセンサー「3D-LiDAR(ライダー)」を用いて、自律ロボットが使う3D地図をリアルタイムに生成する技術について。
 3D地図を生成する際、位置観測の累積誤差を大幅に減らせるが処理が難しい“ループ閉じ込み”技術を、リアルタイムで適用できるようにした。ロボットでなく人間が3D-LiDARを手で持って歩いて計測しても利用できるという。
 ロボティクスシンポジアは日本機械学会、計測自動制御学会、日本ロボット学会が共同主催するシンポジウムで、毎年3月に開催。発表論文約100件がフルペーパー査読されるレベルの高いシンポで、査読で高評価された論文の中から委員会が最優秀賞1件、優秀賞2件を選ぶ。
 友納副所長は「受賞できてうれしい。実用性が高い技術なので、いろいろな分野で使われるように展開していきたい」とコメントしている。

実践的な宇宙工学教育称え


和田准教授に挑戦賞
 機械電子創成工学科の和田豊准教授=写真=が、能代宇宙イベントを通じ実践的宇宙工学教育に貢献した、と4月24日、大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC=宮崎康行理事長)からUNISEC挑戦賞を贈られた。新型コロナウイルス対策で、理事会で審査のうえ受賞者に決定連絡があった。
 能代宇宙イベントは、2005年にペンシルロケット発射50周年を記念して秋田県能代市で始まった国内最大規模の学生・社会人のロケット打ち上げ・自律ロボット制御アマチュア大会。
 和田准教授は、第5回から大学教員として地域と連携したイベント運営に関わり、実行委員長やUNISEC理事を務めて、学生らに実践的な宇宙工学教育の機会を提供。爆発物を使わないハイブリットロケットの打ち上げや、ジュース缶サイズの自立制御型ロボットを気球から落とし目的地を目指させる缶サット(超小型模擬人工衛星)へと催しや競技を広げた。
 イベント経験学生は8千人を超え、JAXAや三菱重工に就職したり宇宙ベンチャーを立ち上げる卒業生も出ている。今年度も20を超える大学や団体が参加予定。
 UNISECは衛星・ロケットなど宇宙工学分野で実践的な°ウ育活動の実現を支援しようと設立され、03年にNPO法人に認定された。
 和田准教授は「第1回から学生として小型ロケットの打ち上げ実験に挑戦した、思い出深いイベントです。教育は継続が大切。今後も挑戦意欲に富んだ学生たちの活躍の場を絶やさず、地域と連携して宇宙教育が継続できるよう努力したい」とコメントした。