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2016.12.15

ジェットスポーツのSAMURAI


小原聡将さん 卒業へ
“準世界チャンピオンに” 結果残した大学生活
 2013年に機械サイエンス学科に入学したころは「世界最年少のジェットスポーツ・プロライダー」と注目され、海外では「SAMURAI」と呼ばれていた。
 来春卒業を控えた今、「ジェットスポーツ時におけるマシンの運動特性およびライダーの運動生理学的負荷特性に関する研究」という卒業研究に、所属する引原有輝研究室に泊まり込みで打ち込んでいる。
 「今年はこれまでで最も結果を残せた年だった」と振り返る。10月に米アリゾナ州で開かれた世界選手権「IJSBAジェットスポーツワールドファイナル」のプロGPスキーという最高峰のレースで、自己最高位の2位に入った。名実ともにジェットスポーツの“世界で2番目に速い男”だ。
 同選手権ではほかにもスラロームで世界2位、プロスキーモディファイクラスで世界4位。
 「“トシってこんなに速かったんだ!”と海外でもすごく評価が上がりました」
 その評価を背負って、卒業後の来年1年間はレースに集中し、今度こそ世界チャンピオンを狙う決心だ。
 これまでは国内と米国をはじめタイ、マレーシア、フィリピンなど海外のレースに出場しながら大学に通う生活。加えて遠征費を稼ぐために宅配ピザ店でのアルバイトにも精を出した。
 「レースに専念できるようになったら、これまで参戦できなかった欧州のレースにも挑戦したい。そして自分がジェットスポーツの世界でどこまで行けるか、試してみたい」
 その先は?と水を向けると――
 「実は日本のジェットスポーツの競技人口は減少傾向。だからその魅力をアピールして愛好家を増やし、もっとメジャーなスポーツに育てるようなことをやっていきたい。例えばジュニアを育成する環境を作るとか、トレーニング方法をグレードアップするとか。僕の卒業研究の目的の1つはそこにあるんです」
 卒業研究は何とか12月中にメドをつけたいと泊まり込みを続けながら、12月1日から5日までタイに飛び、パタヤビーチで開催された世界選手権に出場してきた。結果は2位だったが、「SAMURAI」ぶりは十分に発揮してきたようだ。
学生生活を振り返って――小原さん
学生生活を振り返って――小原さん

西村さんポスター賞


世界初 ジルカロイの表面張力データ取得
毛利宇宙飛行士(右)にポスターを説明する西村さん
毛利宇宙飛行士(右)にポスターを説明する西村さん
 第11回アジア微小重力シンポジウム(10月25〜29日、札幌市の北海道大で開催)で大学院・機械サイエンス専攻の西村大さん(修士2年・小澤俊平研究室)が「電磁浮遊法による溶融ジルカロイの表面張力測定」を英語でポスター発表し、Notable Poster Awardを受賞した。
 福島第一原発のメルトダウン事故の処理などのため、燃料溶融挙動の数値シミュレーションが行われている。正確に行うには溶融物の溶融・凝固・流動挙動に影響する表面張力データが必要だ。
 だが、燃料被覆管に使われているジルカロイ(ジルコニウム合金=核分裂反応の熱中性子を吸収しにくく外に漏らさない)の表面張力はまだ測定されておらず、主成分のジルコニウムの表面張力さえも正確なデータが得られていない。これらの材料の融点は非常に高く、測定中に測定治具と試料が化学反応してしまうためだ。
 西村さんらは、試料を空中に浮遊させたまま表面張力を測定できる電磁浮遊技術を使い、日本原子力研究開発機構に提供してもらったジルカロイで表面張力を測定した。その結果、ジルコニウムは、過去最高温の絶対温度2500度までのデータを取得。ジルカロイについては世界初の表面張力データ取得で、雰囲気の影響についても明らかにした。
 ポスター発表ではレイアウトや配色に特に気を付け、構成は小澤先端材料工学科准教授にアドバイスをもらい、完成度を高めたという。
 審査はシンポジウムの委員と宇宙飛行士の毛利衛さんによって行われた。
 西村さんは「学生最後の学会発表で、このような賞を頂くことができて本当にうれしいです」と語った。

モンゴルで放球再び


PERCに「所さん」番組も支援
 秋山演亮主席研究員をプロジェクトリーダーとする惑星探査研究センター(PERC)のチームは11月19、20日の2日間、モンゴルの首都ウランバートルの東約60キロのテレルジで、今年6月に続いて2度目の簡易型気球の放球実験を行った。
 成層圏での宇宙塵採集を行うためのこの気球は直径約190センチのゴム製。ヘリウムガスを詰め、宇宙塵採集器のほか環境計測機や通信機などを吊り下げて成層圏まで上昇させる。気圧の低下で気球が膨張・破裂すると、パラシュートで地上に降下した機器類を回収する。
 19日の放球実験は、高度28キロの低温・低圧下での採集器の開閉などの動作チェックが目的だったが、高度23キロで破裂。機器類を回収した。
 秋山主席研究員は「気温セ氏マイナス50度で機器が正常に作動し、集塵器の密閉性が保たれていることが確認できたので実験は成功」と評価している。
 20日の放球は日本テレビ系『所さんの目がテン!』の番組制作にPERCが全面協力したもので、気球は33キロまで上昇。併せて山梨大と協力して気球と地上との双方向通信実験を行い、成功した。
簡易型気球の放球実験の準備をするPERCチーム
簡易型気球の放球実験の準備をするPERCチーム
大規模実験態勢へ
「成層圏シンポ」も
 6月にモンゴルで始まった一連の放球実験は、同国の私立大学である工業技術大学と共同で行われているが、国立の科学技術大学も強い関心をもっており、11月の実験にはオブザーバーとして加わった。
 実験に先立って11月18日には工業技術大、科学技術大にモンゴル気象庁も加わって「第1回モンゴル国際成層圏シンポジウム」がウランバートルで開かれ、松井孝典PERC所長と秋山主席研究員が講師を務めた。
 次の放球実験は来年6月に予定されており、それ以降も長期的に継続される計画。「成層圏の宇宙塵を分析し、宇宙の成り立ち解明に資する」という本学発の地球規模のテーマへの挑戦が、モンゴル側の官民の研究機関を挙げての参加で一層大規模に展開される態勢ができつつある。

ロボットで未来創造を


ロボグランプリで古田審査委員長
 高度技術社会推進協会(TEPIA)が募集した中高生手づくりのロボットのコンテスト「TEPIAロボットグランプリ2016」で、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の古田貴之所長=写真右=が審査委員長を務めた。
 中高生のロボット開発を応援しようと、今年3月に創設された「TEPIAチャレンジ助成事業」に応募して選ばれた全国10校の“ロボット少年”たちが11月13日、東京都港区のTEPIA先端技術館に集結。「上下に移動するロボットを開発せよ!」というテーマに挑んで、半年がかりで作り上げた自慢のロボットを競い合った。
 グランプリ賞に輝いたのは京都・洛星高校の階段掃除ロボット「のぼルンバ」。準グランプリ賞は大阪・追手門学院大手前中高校の中学生が作った木登り枝打ちロボットなど、どれもアイデアを練り、メカニズムに工夫を凝らした力作ぞろい。
 古田所長はこの“未来のロボット博士”たちにfuRoが開発した数々のロボットや、文科省とともにfuRoが事務局を務める「ユニバーサル未来社会推進協議会」のプロジェクトなどを紹介。
 「技術は大事だが、もっと大事なのはその技術を使って何をするか。私はロボット技術を使って新たな文化を独創しているのです。皆さん、私と一緒に未来を作ってください」
 ホンモノのロボット博士の呼びかけに、中高生たちは目を輝かせて聞き入っていた。