NEWS CIT ニュースシーアイティ

2016.7.15

ILY-A“3冠”


世界的な賞連続受賞
 本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)とアイシン精機(株)の共同プロジェクトである近未来のパーソナルモビリティー「ILY-A」=写真・受賞紹介パンフレットから=が、ドイツ「レッドドット・デザイン賞」の「レッドドット賞・デザインコンセプト2016」を受賞した。
 ノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンターが主催するレッドドット・デザイン賞は1955年から毎年開催され、アメリカの「インターナショナル・デザイン・エクセレンス賞」、ドイツの「iF(アイエフ)デザイン賞」と並んで世界3大デザイン賞の1つに数えられている。
 その中で「デザインコンセプト」は2005年に新設された部門で、デザインの概念やアイデア、先見性、将来性などを重視して選定される。今回、この部門には60カ国から4698件のエントリーがあり、244件が受賞した。
 ILY-Aはベビーカーとほぼ同じ大きさながらビークル、キックスケーター、カート、キャリーの4つの形態に変化。ロボット技術を応用した「知能化安全技術」を搭載し、突然飛び出してくる人などを認識して、自動で速度を減速し制動・制御する。
 昨年12月に「グッドデザイン・未来づくりデザイン賞」、今年2月には「iFデザイン賞2016」を受賞している。

キャンディーを燃料に 世界初ロケット飛んだ


和田准教授らのチーム表彰される
 子どもたちが大好きなソフトキャンディーを燃料にしたロケットの世界初の打ち上げに、機械電子創成工学科の和田豊准教授が加わったプロジェクトチームが成功。日本最大の広告主団体「日本アドバタイザーズ協会」(JAA)から表彰された。
 和歌山大宇宙教育研究所の秋山演亮所長(7月1日から本学惑星探査研究センター主席研究員)や国立天文台チリ観測所の阪本成一教授らが加わった同プロジェクトチームは昨年3月7日、和歌山市のコスモパーク加太で、UHA味覚糖(株)のキャンディー「ぷっちょ」を燃料にしたハイブリッドロケット(全長約170センチ、重さ約7キロ)を打ち上げた。使った「ぷっちょ」は20粒、重さにしてわずか100グラム。
 発射台にセットされた2機のロケットは大勢の市民や子どもたちが見守る前で、オレンジ色の炎を勢いよく噴き出しながら約3秒間、上空250メートルまで上昇し、パラシュートで地上に落下した。
 「糖分を含んだ高カロリー食品を用いたハイブリッドロケットを飛ばす」というアイデアは、当時、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で宇宙科学関係の広報普及活動をしていた阪本氏から出された。目的は多くの人に想像力の大切さや科学の面白さ、ものづくりの楽しさを知ってもらうこと。
 本学の「ロケットガール&ボーイ養成講座」の指導にも当たっている和田准教授は、専門の燃焼工学やロケット推進工学の知識を応用してエンジン部分の設計と開発を担当し、ロケットの製作と打ち上げで中心的な役割を果たした。
 難しかったのは、和田准教授が研究しているプラスチックを燃料にしたハイブリッドロケットに比べて、キャンディーは燃焼しにくく、大きな推力をなかなか得られないこと。そこでキャンディーを効率よく燃焼させるために最適な酸素の割合を計算し、燃焼効率が上がる燃料の配置を工夫した。
 「キャンディーでロケットを飛ばす」という誰も考えなかったアイデアを実現させた成果について、和田准教授は「きわめて安全性の高いロケット推進系の研究を後押しすることに加えて、工学・理学をきちんと勉強すると、これまで世の中になかった面白い物を自分の手で作ることができると実証した教育的効果も大きいでしょう」。また「将来、宇宙食が緊急脱出用の燃料を兼ねることも夢ではなくなるかも知れない」と話している。
 JAAのトロフィーには受賞者として「千葉工業大学惑星探査研究センター」と刻まれている。
“キャンディー・プロジェクト”を指導した和田准教授
“キャンディー・プロジェクト”を指導した和田准教授

成層圏で気球実験2種 PERC


生命の起源、宇宙の成り立ち探る
 惑星探査研究センター(PERC)は6月、北海道で大気球による成層圏での微生物採集実験(biopauseプロジェクト)と、モンゴルでの宇宙塵採集を目的とした簡易型気球の放球実験を相次いで実施した。前者は「地球型生命の起源」、後者は「宇宙の成り立ちの解明」という人類規模のテーマにPERC独自の発想で挑む壮大な実験のスタートだ。
北海道で放球成功
 PERCの大野宗祐上席研究員をリーダーとするプロジェクトチームが研究開発した微生物採集装置を成層圏に運ぶ宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大気球は6月8日早朝、北海道大樹町の大樹航空宇宙実験場から放球された=写真
 大気球はポリエチレンの薄膜製で満膨張時は直径33.5メートル、体積1万5千立方メートル。JAXAはこの大気球をさまざまな科学観測目的で年に数回放球しているが、成層圏での微生物採集目的で使われたのは初めて。
 放球から約2時間後、高度28キロで採集装置は地上からの指令で大気球から切り離され、パラシュートで実験場の東30キロの太平洋上に落下。漁船で待ち受けていた大野上席研究員らが回収した。
 地球大気の上部(成層圏と中間圏)における微生物の存在はこれまでに数例報告されているが、その種類や分布を明らかにすることは地球生物圏の上端がどのようになっているかを知る上で重要な知見となる。
 例えば大気上部に存在する微生物の中に地球由来以外の生物が見つかれば、“宇宙由来”の生命が存在することになる。
 PERCが開発した採集装置は、大気球に付着した地上の微生物などが混じらないよう、パラシュート降下する間に微生物を採集するよう設計されている。
 今回採集された装置中の微生物・微粒子試料は津田沼キャンパス内のPERCのクリーンベンチで、大野上席研究員らによって初期分析が行われている。
大野上席研究員の話
 この実験の目的は、大きな視野で言えば「地球型生命は地球にしか存在しないのか」を調べること。言い換えれば、それは地球の生命圏は宇宙に向かって開かれているのか、閉じているのかを知ることにつながります。

モンゴルでも


協定校・工技大と初共同実験
 PERCの前田恵介研究員らのグループは6月10日、モンゴル工業技術大(IET)と共同で、成層圏での宇宙塵採集を行うためのバルーン放球実験を行い、成功した=写真下
 実験は、ゴム製で直径約190センチ、重さ約3キロのヘリウムガスを詰めたバルーンに、吸引式の宇宙塵採集装置や送信機などを取り付けて成層圏まで上昇させ、バルーンが気圧低下によって膨張・破裂した後、パラシュートで地上に落下した装置を回収するもの。
 この実験は国内で行うと装置が海に落下するリスクが高いが、国土の大部分が平坦な草原に覆われているモンゴルは実験に適している。3月に本学と交流協定を結んだIET側も関心を示したため、初の共同実験が実現した。
 放球は首都ウランバートルから南西に約400キロ離れたアルバイヘール郊外で行われた。バルーンは想定高度(30〜35キロ)より高い40キロまで上昇したところで破裂。実験装置はパラシュートで緩降下し、放球地点の南東約70キロに着地して、自動車で追跡した実験スタッフに回収された。
 装置でデータを分析した結果、成層圏での3ヘクトパスカル以下の絶対気圧計測にも成功した。
 今回の実験は今後、モンゴルで継続して成層圏バルーン放球実験を多頻度で行うための環境基盤整備が最大の眼目。
 前田研究員は「参加したIETの研究者の中には日本語がとても堪能な人もおり、学生たちも含め皆、協力的。よい実験環境ができたと思う」と話している。