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2016.4.15

転倒衝撃 吸収する関節


牧角君が人型ロボ 科学技術振興展に出展
牧角君(中央)とアシスタントを務めた川崎文寛君(左)、山本龍君
牧角君(中央)とアシスタントを務めた川崎文寛君(左)、山本龍君
 国立研究開発法人科学技術振興機構の研究開発費を獲得して、未来ロボティクス学科の牧角知祥君=4月から修士課程=が開発したロボット用の衝撃吸収減速機が3月18日、同機構の展示会に出展され、ロボット研究者やベンチャー企業関係者などの注目を集めた。
 林原靖男教授の研究室でロボカップに向けてアダルトサイズのヒューマノイドロボットの開発に携わっている牧角君は、転倒による関節の破損が多発することに着目。関節に使われている減速機に衝撃吸収機構を内蔵することで、転倒の衝撃から守ることを考えた。
 この衝撃吸収機構はゴム製のクッション材がアクチュエーターにかかる衝撃を吸収する仕組み。これをコンポーネントとすることで使いやすくし小型化も可能になる。
 さらにこのクッション材は交換が容易なため、個数や硬さの異なるクッション材を使用することで、衝撃吸収の度合いを調節することが可能になる。こうした特長を生かすことで家庭内でのサービスロボットや産業用ロボット、パワードスーツなど、衝撃力が問題となるさまざまな用途に応用が可能だという。
 3月18日、東京・港区のベルサール汐留で開催された「ロボティクス×フューチャー2016」では、新たなビジネスのために選抜された大学などの若手研究者による試作ロボット18台の展示とデモンストレーションが行われた。
 牧角君は「衝撃吸収機構を内蔵した人間サイズのヒューマノイド」としてアダルトサイズの試作機を展示し、プレゼンテーションを行った。このプロジェクトの担当メンターでロボカップの発起人としても知られる北野宏明氏は、プレゼンテーション後の講評で「この技術は次世代のコアテクノロジーになる可能性がある」と高く評価した。
関節に衝撃吸収機構を組み込んだアダルトサイズのヒューマノイドの下半身
関節に衝撃吸収機構を組み込んだアダルトサイズのヒューマノイドの下半身

池田君がライオン賞


ミツバチ大量死の原因? 影響探る実験で
 建築都市環境学科の池田哲也君(受賞時4年=写真)が第50回日本水環境学会年会(3月16〜18日、徳島市のアスティとくしまで開催)でポスター発表し、年会学生ポスター発表賞(ライオン賞)を受賞した。
 池田君は亀田豊准教授の研究室で、河川水中の農薬を吸着剤(ディスク)に吸着させ濃度を測定するパッシブサンプリング技術などの研究をしていた。発表したのは「エムポアディスクとELISA法を組み合わせた河川水中ネオニコチノイド系農薬分析方法開発に関する研究」。
 ネオニコチノイド(ニコチン様物質)系農薬は“ミツバチ大量死の原因物質”と注目され、生体への影響が懸念されている。欧米では使用規制を開始。しかし日本では依然、稲、果樹、野菜などに幅広く使われ、身近にどの程度潜んでいるのかのデータは少ない。
 池田君は、河川での実態把握が急務で、それには既存より低コストな測定法が必要と考えた。そしてディスクに吸着した農薬を高濃度とするオンサイト(現地)濃縮と、吸光度を用いるELISA法(試料分析法の一種)を組み合わせることで、ネオニコチノイド系農薬を低コストで簡便、高感度に測定する方法を実現しようと試みた。
 ネオニコチノイドに関する論文は毎日情報更新され、しかも英語。実験例も少なく、安定した実験ができるまでに10万円使ってしまったという。
 池田君は「経験豊富な研究者に納得してもらえよう尽力しました。亀田先生や研究室の皆さんのアドバイスのおかげと感謝しています」と語った。

相原さん 優秀講演賞


月面反射鏡を高精度で加工する研究
 表面創成などを研究する相原寛樹さん(機械サイエンス専攻博士前期課程2年・瀧野日出雄研究室=写真)が、千葉県加工技術研究会の第18回大学等委員による研究事例発表会(3月3日、日大生産工学部津田沼キャンパスで開催)で「イオンビームによる月面設置用コーナーキューブミラーの精密加工」を発表し、優秀講演賞を受賞した。
 瀧野研究室は国立天文台、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東京理科大と共同で、月面に新たな反射鏡を置き、地球との距離を測る月レーザー測距の高精度化を目指している。測距の高精度化には大口径(200ミリメートル級)単一素子の反射鏡が必要で、反射面には0.1秒角の高精度が求められる。
 相原さんらはスパッタリング現象(真空中で材料面に高速ガスイオンを衝突させ原子をたたき出す方法)を利用し、反射面を加工する方法を検討した。原子レベルで精密加工ができる一方、大きな技術課題もある。反射鏡は互いに垂直な3つの光学面で構成されており、イオンビームを当てると照射面以外の他面にスパッタと付着が及び、精度劣化も予想される。
 瀧野研では、単純化モデルとして2つのプレート(試料)を垂直に組み合わせ、イオンビームを照射してプレートを流れるイオンビーム電流と試料の形状変化を測定した。その結果、スパッタ・付着現象が他面に及ぶことを明らかにし、月面反射鏡の高精度化へ技術的な指針を得ることができた。
 相原さんは「瀧野教授のおかげです。受賞はこの研究が関心を持たれている表れでもあると思います」とコメントした。

境目さん 学生奨励賞


新ファイバーの光コネクタを研究
 工学専攻博士後期課程3年の境目賢義さん(長瀬亮研究室=写真)が、電子情報通信学会・光ファイバ応用技術研究会(昨年8月27、28日、北海道小樽市の小樽経済センターで開催)で光ファイバーに関する論文「19コアマルチコアファイバのPC接続」を発表し、学生奨励賞に選ばれた。3月16日に開かれた2016年電子情報通信学会総合大会(福岡市・九州大伊都キャンパス)で表彰された。
 現在、光通信に使われている光ファイバー(シングルモードファイバー:SMF)は伝送増で限界が近づいているため通信容量を飛躍的に伸ばす光ファイバー「マルチコアファイバー(MCF)」が提案されている。
 次世代型MCFを光通信で使うには、ファイバー同士を接続できる光コネクタが必要だ。長瀬研・境目さんらは古河電気工業(株)の技術員と共同でMCF用の光コネクタを試作、光の通る道(コア)が19個あるMCFにつないで接続損失を測定し、安定接続できる光コネクタへ向け、改良点を考察した。
 研究は、独立行政法人情報通信研究機構の委託研究の一つとしてなされた。これまで、境目さんの論文や発表用スライドは〈実験してその結果を報告〉の形式が多かったが、今回は実験結果の理論付けを重視してまとめたという。
 境目さんは「古河電工の皆さん、長瀬先生らのおかげです。協力し合っている研究室メンバーにも感謝します。さらに研究成果が得られるよう努力したい」と語った。

三浦君 学生奨励賞


クラウドファンディング成否の判別方法
 ソーシャルメディアなどの集団IT技術を学んでいた三浦泰介君(当時プロジェクトマネジメント学科4年・矢吹太朗研究室=今春卒業・写真)が情報処理学会第78回全国大会(3月10〜12日、横浜市の慶応大・矢上キャンパスで開催)で「クラウドファンディングにおける成功の判別分析」をプレゼンテーションし、学生奨励賞を受賞した。
 クラウドファンディングとは、プロジェクトの活動資金をインターネットで不特定多数の支援者から調達する方法。期間内に資金が集まれば成功、集まらなければ失敗だ。成否には目標金額や支援コース数、支援金額の幅など、さまざまな要因が関連すると考えられる。
 そこで三浦君は、複数のクラウドファンディングを追跡調査し、決定木分析などのデータマイニング手法(大量データを解析して知識を取り出す技術)で、諸要因と成否の関係を明らかにする方法を提案した。
 先行研究がなく手探りで始め、データ集めに時間がかかったという。大会では、手法実現の可能性の高さとプレゼンぶりが評価された。
 三浦君は「賞を頂けるとは思ってなかったので驚いています。研究室仲間や矢吹先生のおかげでやり遂げることができました。お礼を言わせてもらいます」と語った。