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2016.4.15

「メテオ」ISSに搬入


宇宙から流星観測へ
 本学惑星探査研究センター(PERC)が国際宇宙ステーション(ISS)からの世界初の長期流星観測に挑む「メテオ」プロジェクトが、いよいよ本格始動する。過去に2度の爆発事故に遭遇し、今回が3度目となる超高感度カメラを運ぶロケットは日本時間3月23日正午過ぎ、米フロリダ州の空軍基地から打ち上げられ、同26日、ISSとのドッキングに成功。カメラは今後、宇宙飛行士の手によって所定の窓際に設置される予定だ。
NASAと連携 津田沼棟から管制運用
 メテオプロジェクトはISSの米国の与圧実験棟にPERCが開発した超高感度のCMOSカラーハイビジョンカメラを設置し、窓越しに2年間、流星観測を実施する。2012年にNASA(米航空宇宙局)からの呼びかけで検討が始まったもので、NASAと日本の一大学が連携・協力して1つの研究プロジェクトを遂行するケースは世界に例がない。
 観測は津田沼キャンパス8号館にあるNASA公認の運用管制室から、PERCの研究員が直接カメラに指令を出して行う。撮影した流星の映像は地上に送信され、運用管制室でその日のうちに見ることができる。また、You Tubeでウェブ上に公開されるとともに、本学の東京スカイツリータウンキャンパスでも公開される予定だ。
 PERCはメテオプロジェクトの観測で得られる膨大なデータを基に、流星の飛跡や明るさから流星塵の大きさを求めたり、流星発光の輝線の分光観測を行って、鉄、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムなどの化学組成を調べる計画だ。
 これによって流星塵を放出した母天体(彗星や小惑星)の直接探査に匹敵する科学成果が得られると期待される。また「ISSからは天候や大気の影響を受けずに定常的な観測ができ、観測データ数も飛躍的に増えるので、より統計的で公平な流星の科学的研究が可能になるでしょう」と、プロジェクトリーダーの荒井朋子上席研究員は話している。
 今回の打ち上げに際してPERCはカメラの改良を行った。2度のロケット爆発で失われたカメラに比べてレンズの焦点距離が短く、視野角も広くなり、より広い範囲の鮮明な撮像が可能になった。分光観測のためレンズの前に装着する回析格子の着脱もワンタッチでできるようにしたほか、長さや重さも改良してよりコンパクトになった。
 米国の与圧実験棟に搬入されたメテオカメラは今後、宇宙飛行士によって設置作業が行われる予定となっている。
■マスコミも大きく報道
 打ち上げの翌日の3月24日、主要な新聞やテレビは一斉にメテオカメラの打ち上げ成功を報道。本学の世界初のプロジェクトに対する社会の関心の高さを示していた。
 23日のパブリックビューイング会場にはテレビ局、全国紙など新聞・雑誌合わせて20社が取材に詰めかけた。
パブリックビューイングに映し出された打ち上げの瞬間
パブリックビューイングに映し出された打ち上げの瞬間
成功を喜ぶ荒井上席研究員(右)
成功を喜ぶ荒井上席研究員(右)

3度目の正直!


打ち上げ現地で瀬戸熊理事長ら
 一昨年10月28日は米バージニア州のNASAワロップス飛行施設で打ち上げ直後に、そして昨年6月28日にはフロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げ2分後に、それぞれロケットが大爆発して「メテオ」カメラは失われた。
 文字通り“3度目の正直”となった今回の打ち上げは、2度目と同じケープカナベラル空軍基地で日本時間3月23日午後零時5分(米国東部時間午後11時5分)に行われた。
 打ち上げの模様を、現地では本学の瀬戸熊修理事長、松井孝典PERC所長、染谷明人総務部長らが、津田沼キャンパスでは2号館3階の大教室でのパブリックビューイングに集まった学生や教職員、地元市民など約250人が、大スクリーンに映し出されるNASAテレビのライブ映像で見守った。
 現地は夜で天候は快晴。満月が天空から打ち上げを見守っていた。ロケットは信頼性の高さで定評のあるアトラスV、メテオカメラを積み込んだ補給船は1度目と同じシグナスの6号機。
 定刻10秒前、現地の秒読みに合わせパブリックビューイング会場でも、・・・・・・サン、ニー、イチ、ゼロと全員でカウントダウン。白い炎を噴き出してアトラスVがゆっくり上昇を始めると、緊張感が漂っていた会場に安堵感が広がった。そして21分後、ロケットから補給船が分離されると、大きな拍手が巻き起こった。
 壇上の荒井朋子上席研究員は「長い道のりでしたが、やっとここまできました。引き続き応援をよろしくお願いします」と頭を下げた。
夢をもって邁進を
 瀬戸熊理事長の話 私たちは2度目までのしびれるような緊張感もなく、今回の打ち上げを“無の境地”で見守ることができました。観測が始まったらどんな映像がPERCの運用管制室に届くか楽しみです。大学としてはこれからの2年間の観測をPERCの研究の次の飛躍への通過点と位置づけ、一層のバックアップをしていきます。理学は原理・真理を探究し、それを応用して夢の未来を実現するのが工学ですが、PERCは文字通り理学の殿堂として夢をもって研究に邁進してほしい。
握手で祝う瀬戸熊理事長(左)と松井所長=ケープカナベラル空軍基地で
握手で祝う瀬戸熊理事長(左)と松井所長=ケープカナベラル空軍基地で

13年連続「AA−」


本学格付け、高い信用
 格付投資情報センター(R&I)は3月23日、本学の長期債務の信用格付けを「AA−(マイナス)」、格付けの方向性は「安定的」と公表した。AA−は13年連続で「安定的」評価は6年目。
 未来ロボット技術研究センター、惑星探査研究センターの先進的で特色ある研究活動▽今春から工学部を改編し従来の3学部体制から5学部17学科に移行、入学志願者が7万人を上回った▽教学改革を積極的に行い、留年者や退学者の抑制に力を入れ、効果が上がった――などが評価された。