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2016.1.15

宇井さん清宮さんが講演


女性研究者ネットワークフォーラム
 社会のさまざまな分野で活躍するリーダーを目指す女子学生を後押ししよう! 生命環境科学科の小浦節子教授が呼びかけて昨年5月にスタートした「千葉工業大学・女性研究者ネットワークフォーラム」の講演会が12月10日、津田沼キャンパス6号館で開かれた。
 講演したのは2012年未来ロボティクス学科卒で(株)aba代表取締役の宇井吉美さんと、2002年工業化学科(現生命環境科学科)卒で、理化学研究所でNMR(核磁気共鳴装置)のテクニカルスタッフを務める清宮恭子さん。
 宇井さんは本学在学中に医療・介護支援ロボットのプロジェクトを立ち上げ、その後、人工知能でデザインする要介護者のための排泄検知シートを開発するabaを起業した。世界中から斬新な技術開発やアイデアを募り、優れた作品を表彰する「ダイソンアワード」で世界のベスト20に選ばれるなど、数々の受賞歴がある。
 清宮さんが勤務する理研のライフサイエンス技術基盤研究センターは、最先端の生命科学の研究から新薬の開発や、病気の治療法につながる技術の確立などを目標にしている研究機関。NMRはこの研究に不可欠なたんぱく質の立体構造を解析する装置で、清宮さんはNMRを常に最高の状態に維持するための管理・調整に当たっている。
 会場には女子を上回る数の男子も詰めかけて総勢約200人。宇井さんと清宮さんの学生時代から現在の仕事に就くまでの経験や仕事の内容、苦労話などに熱心に耳を傾けていた。
 女性研究者ネットワークフォーラムは大学の助成を受けて昨年5月、9人の教員が参加して発足。
 11月のオープンキャンパスでは惑星探査研究センターの荒井朋子上席研究員の講演会を入試広報部との共催で開くなど、活動を続けている。
 小浦教授は「学内の女性研究者全員の参加を目指すとともに、文部科学省の女性研究者研究活動支援事業『ダイバーシティ研究活動実現イニシアティブ』など外部資金も導入して、活動の範囲を広げていきたい」と話している。
 現在の構成員は以下の通り。
 小浦節子教授▽黒ア直子教授▽橋本香保子准教授(以上生環)▽半沢洋子教授▽竹内栄美子教授▽南澤麿優覽准教授▽福嶋尚子助教(以上教育センター)▽橋本都子教授(デザ)▽石原沙織准教授(建都)
会場には大勢の男子学生も。講演しているのは宇井さん
会場には大勢の男子学生も。講演しているのは宇井さん

産学連携推進へ講演


交流会で本学3教員
 千葉県中小企業団体中央会と千葉県異業種交流融合化協議会が共催の平成27年度の産学連携交流会が昨年11月30日、津田沼キャンパスで開かれた。中央会や協議会の会員そして本学産官学融合課の職員など約30人が参加した。
 この交流会は融合化協議会に加盟している本学と千葉大、木更津高専の3校が毎年、持ち回りで開催している。この日、主催者あいさつに立った融合化協議会の長野史郎会長は「技術立国として世界に名を馳せてきた日本が今後も勝ち残っていくためには、中小企業のモノづくりをますます磨いていく必要がある」として、産学連携への期待を表明した。
 これを受けて本学産官学連携センター運営委員長の坂本幸弘機械サイエンス学科教授が、瀬戸熊修理事長が会長を務める本学の産官学連携協議会と小宮一仁学長が所長を務める産官学連携センターの機能と事業を紹介。さらに来年度からの工学部再編について説明し、学生の就職やインターンシップ、キャリア教育などについて企業側の協力を求めた。
 この後、坂本教授が「CVDマイクロダイヤモンドアレイの作製」など自分の研究成果について、プロジェクトマネジメント学科の田隈広紀助教が「特許技術を用いたビジネス提案プロジェクトの実践」、デザイン科学科の長尾徹教授が「企業・地域との連携による製品開発・デザインの実践」と題して講演した。
長尾徹教授の講演を聴く参加者
長尾徹教授の講演を聴く参加者

活躍する校友


福島第1原発で凍土壁工事を指揮
誠実に、淡々と
ケミカルグラウト株式会社常務
米田 国章(よねだ くにあき)氏(61歳)
(昭和51年、土木工学科卒)
米田 国章氏
世界で尊敬される技術に携われるのは「幸せ」と米田さん
 世界注視の中、東京電力福島第1原発で廃炉に向け一進一退の作業が続いている。難題は原子炉建屋へ流れ込む大量の地下水。放射性物質の汚染水タンクは増えるばかり。凍土壁で水を遮断しようと取り組むケミカルグラウト株式会社(本社・東京)の現場責任者が米田国章さんだ。「ケガや被ばくに注意しながら安全第一で進めるだけです」。理系人間らしく口調はクールである。
 役員を経て東日本大震災のあった2011年、常務に。環境地盤改良本部長兼福島出張所長の責も担う。福島の現場では、壊れた1〜4号機を深さ約30メートル、厚さ約2メートルの凍土壁でぐるりと囲む工事をこの2年近く陣頭指揮してきた。土を凍らせ、地下水流入を止めるのだ。概ね凍結管の設置は終えた。
 「原子力規制委員会の許認可が出次第、運用を始める。昨秋までは月のうち半分は福島でしたが、これからは東京で仕事をする時間が増えるでしょう」。今後の運転・保守は気になるものの、いくぶんかホッとした表情がのぞいた。
 道産子である。競走馬産地で知られる浦河で生まれた。大工だった父を見て育ったせいか、アウトドア系の仕事をと、土木工学を選んだ。東京の会社勤務の長兄のアパートに半年ほど居候のあと市川市のアパートへ引っ越した。
 クラブ活動などはとくにしなかった。そのぶん、配達や倉庫の荷運びなどバイトに割いた。そのお金はオーディオ機器へ。70年代に流行ったアメリカンポップスなどにはまったという。
 いまでも鮮明に覚えているのは、3年次の測量実習。学年全員で長野県・千曲川の堤防を歩き、各班400〜500メートルを実測し、図面に落とした。1週間ほど民宿に泊まり、江戸時代、全国を歩いて日本地図を作った伊能忠敬の気分の一端を味わった。「楽しかったですね」。
 土質の研究室に属し、物性の実験に興味を引かれたという。夕暮れともなれば、教官はやかん酒をふるまい、交流。夏休みを終え、持参した土産を肴に、各地の民謡なども飛び出してにぎやかに過ごしたらしい。
 「えっ、わたし? 歌は苦手ですが、北海道出身の仲間と一緒に歌いましたね。むろんソーラン節です」
 卒業と同時にケミカルグラウトへ。基礎地盤処理の専門会社だ。スーパーゼネコン「鹿島」(本社・東京)のグループ会社である。
 地下鉄、モノレール、トンネル、ダム、港湾など大規模構造物は、地下など見えないところを支える技術あってこそ。同社が開発した、高い水圧で地盤にあけた空間に固化材を充てんして地盤を強化する「ジェットグラウト工法」は世界的に定評がある。
 軟弱な地盤改良、地中を流れる水を止めるなどの都市土木、ダムなど山岳系と大別される分野のうち、都市土木畑の米田さんは北海道から九州まで各地の現場を歩いた。日系企業の受注した地下鉄工事に関連して4年間、台湾にいた時に役員に。その3年後の2009年からブラジルに3年半滞在、現地法人を立ち上げている。この間、常務へ昇格。いまブラジルの責任者は後輩の藤井健さん(昭和56年、土木工学科卒)。更に業績を伸ばしている。
 2014年夏、福島を任された。1メートル間隔で計1400本の凍結管を埋め込む。放射線を防ぐ重さ7〜8キロのタングステンベスト(チョッキ)、タイベックスーツ、フルフェイスマスクなどに身を固めて。「少しずつ線量は落ちてきたが、夏はフルフェイスマスクの内側に汗がたまるんですよ」。過酷な作業に一時は協力会社を含め450人も関わり、職員のストレス解消に気を配ったという。
 「あまり頑張り過ぎず、淡々とこなしていく――これが信条です。幸いなことに、これまで大きなトラブルはないが、これだけの大規模な凍結工法は世界で初めてですから。いまマンションの杭が問題になっているが、見えない部分こそ誠実にやる必要がある。信頼です。社のポリシーでもあります」
 社員約300人のうち本学OBは12人。世界で尊敬される技術に携われるのは「幸せ」と喜び、自宅の大型スクリーンで映画を見てリラックスするという。