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2014.1.15

病室照明を研究 吉岡君、齊藤さん


優秀研究発表賞
受賞した吉岡秀一郎君と齊藤あゆみさん
受賞した吉岡秀一郎君と齊藤あゆみさん
 建築光環境を研究する建築都市環境学科・望月悦子教授の研究室の学部生、吉岡秀一郎君と齊藤あゆみさん(ともに4年)が、第37回照明学会東京支部大会(12月5日、東京都渋谷区千駄ケ谷の東京体育館で開催)照明計画の部で発表し、優秀研究発表賞を受賞した。
 論文の題は「サーカディアン・リズムに配慮した時間帯別制御を行う病室の照明環境に関する研究」。サーカディアン・リズムは「概日リズム」と訳され、睡眠・目覚めなど約24時間周期で刻まれる人間がもつ生体リズムのこと。
 吉岡君らは、窓からの自然光を含め、1日を通して変化する曝露光環境が在室者の心理・生理にもたらす効果を、実験で検証した。
 戸田建設、村田製作所、ウシオライティングなどに協力を仰ぎ、2床用病室2つを用意。被験者4人に入ってもらい、LED照明で曝露光量を変化させた。温熱環境も調整し、心拍数や睡眠効率を計測した。その結果、窓のある環境の方が無窓環境よりもリラックスできる傾向にあり、また、午前中にLED照明を補助することで、夜間睡眠に好影響を与える可能性が示唆されたという。
 分かりやすくポスターにし、グラフを多用して発表した。
 齊藤さんは「未熟なので、受賞は予想外でした。望月先生や院生のみなさんの助力があったからこそで、全員で受けた賞と思っています」と語った。

院生3人が受賞 富井研


鉄道分野の情報処理論文
受賞した(左から)上水流さん、西山さん、田村さん
受賞した(左から)上水流さん、西山さん、田村さん
 世界一正確といわれる日本の鉄道運行などのコンピューターシステム化を研究する情報工学科・富井規雄教授の研究室から、大学院生3人が国際会議や国内シンポジウムで論文を発表、それぞれ受賞を果たした。
■田村啓さん(情報科学専攻修士2年)
 昨年5月13〜15日、デンマーク・コペンハーゲンのデンマーク工科大で開かれた「鉄道輸送のモデル化と分析・第5回国際会議」で各国研究者が論文約60件を発表。田村さんの論文は優秀論文賞10件の中に入り、その第2位に選ばれた。
 論文は「An optimal rescheduling algorithm from passengers'viewpoint based on mixed integer programming formulation(混合整数計画法に基づく、乗客の視点からの最適な再スケジュール算出法)」。列車が遅延した時、乗客の視点を考慮した運転整理案を作成する数理モデルとその解法を提案した。
 計算時間短縮のための実験・改良は、確認に1時間以上かかり、それを何度も繰り返すのが大変だったという。
 田村さんは「富井先生らとの共著論文で、ご協力いただいた結果だと思っています」と語った。
 同国際会議はRail Copenhagenの呼び名で知られ、鉄道利用者へのサービスの向上、運行管理の効率化、安全性の確保などを目的に2005年から開かれている。
■上水流友望さん(同)
 未来の鉄道分野に応用できる可能性のある論文を求める第50回鉄道サイバネティクス・シンポジウム(昨年11月5〜7日、東京都豊島区のホテルメトロポリタン池袋で開催=日本鉄道技術協会・日本鉄道サイバネティクス協議会主催)の学生セッションの部に応募。優秀賞2件のうちの1件に選ばれ、会場で表彰された。
 論文は「新幹線駅ホームの旅客流動シミュレーション」。混雑時の駅ホームの旅客の行動を、シミュレーターで再現し、乗降時間などを推定した。
 早朝、混雑する駅ホームに観察に行き、1回ごとに時間がかかるシミュレーションを何回もこなして得た結果だった。
 上水流さんは「副賞(3万円)ゲット(笑)。研究を続けてきて、よかったと思いました」。
■西山正紀さん(同)
 同・学生セッションで優良賞4件の中に選ばれた。論文は「操縦方法を含む列車群運行シミュレーション」。
 都市圏の過密な鉄道で、運転士の技術の違いによって、遅延の伝わり方がどう変化するかを研究中。研究室では類似研究がなく、シミュレーターを作成するために、教授や鉄道会社社員と何度も議論させてもらったという。
 西山さんは「努力が認められたようで、大変うれしく思っています」と感想を語った。

吾妻さん事務局長賞


富栄養化湖沼の改善研究を発表
 生命環境科学専攻の大学院生で、閉鎖性湖沼や干潟などの水環境保全を研究している吾妻咲季さん(修士1年=村上和仁研究室)が、第10回環境情報科学ポスターセッション(12月6日、東京都千代田区九段南の日本大学会館で開催=一般社団法人環境情報科学センター主催)で事務局長賞を受賞した=写真上。
 発表したのは「富栄養化湖沼における各種底泥処理効果の野外設置型モデルエコシステムによる比較検討」。
 富栄養化した湖沼を、魚類や生態系を極力傷つけない形で改善できないか。DAF(微細気泡浮上分離法)処理▽CRM(化学修復剤による)処理▽ハイブリッド処理(DAF+CRM)――など各種処理を試み、比較検討した。
 野外設置型モデルエコシステムとして70リットル入りアクリル円筒容器(リアクター)に、手賀沼の未処理底泥と、各処理を施した湿泥を入れ、湖水で満たした。なるべく実際の環境に近づけるよう、野外に置いて実験した。
 その結果、特にDAF+消石灰散布系で、カルシウムとリンが吸着し、溶けにくいリン酸カルシウムを形成、底泥が酸化しやすくなって栄養塩の溶出を防ぎ、より高い富栄養化抑制効果が得られたという。
 採取したデータは膨大で、まとめるのに時間を費やした。グラフが多かったので、見やすいように工夫して発表した。
 吾妻さんは「素晴らしい賞をいただき、うれしく思います。院生になって初めての賞で、これを機に、より研究に励みたい。ご指導いただいた村上教授と研究室の諸先輩に感謝しています」と話している。

田島さん優秀賞


独居高齢者の異常行動
判別の新システム提案
 高齢者の屋内行動に異常がないか、見守るモニターシステムを研究している電気電子情報工学専攻の大学院生・田島和博さん(修士1年=関弘和研究室=写真)が2013年度VMStudio&TMStudio学生研究奨励賞(昨年11月22日、東京都港区の六本木ヒルズ森タワー49階で数理システムユーザーコンファレンスを開き受賞者を発表・表彰=(株)NTTデータ数理システム主催)の優秀賞(該当3件=賞金5万円)に選ばれた。
 同賞はNTTデータ数理システムが同社のマイニングツール(Visual Mining Studio/Text Mining Studio=画像パターン認識など大量データを解析するツール)を使って研究する学生のために、ポスターセッションを開き授賞している。
 田島さんの研究は「画像フロー情報のOne‐Class SVMに基づく独居高齢者非日常行動検出システムの構築」。
 少子高齢化の中、家族や親族で高齢者を見守ることは難しい。また近年は高齢者の独り暮らしが増え、孤独死が問題になっている。田島さんは研究室で、高齢者の部屋をセンサーでモニタリングし、転倒や、浴槽で溺れる、食べ物をのどに詰まらせ窒息――など不慮の事故や病気による異常行動を、迅速に検出するシステムを研究している。
 360度撮影できるカメラを部屋に設置し、送られる画像からオプティカルフロー(人物の動きの速度ベクトル集合を連続画像系列から求める)を用いて人の動きの大きさ、位置、姿勢など特徴量を抽出した。そして転倒、もがく、微動がなくなる、徘徊などの異常な行動を示した場合を外れ値とみなし、外れ値検出手法の一つOne‐Class SVMを使って、日常行動か非日常行動かを判別するシステムを実現した。
 さらに、仮想的な外れ値を学習データに効率的に組み込み、従来よりも高精度に異常行動を判別できる手法を提案した。
 田島さんは「優秀賞を頂けて本当にうれしく思います。ポスターセッションで他大学や企業の方々と交流でき、いい経験になりました。今後も頑張っていきたい」と喜びを語り、関教授や助言を受けた研究室の先輩たちに感謝していた。