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2013.12.15

「ロボットの千葉工大」浸透
2013国際ロボット展


「櫻弐號」など出展
来場者の注目を集めた櫻シリーズ
来場者の注目を集めた櫻シリーズ
 11月6日から9日まで東京ビッグサイトで開かれた「2013国際ロボット展」に、本学は未来ロボット技術研究センター(fuRo)が開発した原発対応ロボット「櫻弐號」などを出展した。並行して開かれたフォーラムでは未来ロボティクス学科の富山健教授が大学におけるRT(ロボティクス・テクノロジー)教育について、本学での教育成果を紹介しながら新たな提案をして注目を集めた。
■「櫻壱號」を初公開
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の出展ブースに設けられた本学の展示コーナーでは、昨年9月25日に公開して大反響を呼んだ「櫻弐號」と並んで「櫻壱號」が初公開された。
 会場で「櫻壱號」は「原発対応ロボットQuinceと同等の階段および不整地走行性能を備え、より小型化を実現した移動ロボット」と紹介された。
 両機を操縦してデモンストレーションを行った西村健志・fuRo研究員によれば、「櫻壱號」の基本的な性能は「櫻弐號」とほとんど同じだが、小型化によってより機動性が高くなっているという。
 「櫻弐號」はその最大の特長のひとつである防水性能を実証するため、実際に水槽の中で活動する様子を映像で紹介し、会場から感嘆の声が上っていた。
 また両機と並行して開発された「災害対応ロボット操縦訓練シミュレーター」も公開された。これはロボットを現場に投入する前の作業員の操縦訓練用に開発したもの。
 本学の展示コーナーには、企業などのロボット研究者や技術者に交じって本学の卒業生も大勢訪れ、ロボット界の最先端をいく母校の研究成果に見入っていた。
 一般の見学者からは「このロボット、テレビで見た!」といった声も聞かれ、「“ロボットの千葉工大”のイメージが世の中に浸透してきたことを実感しました」(西村研究員)。
 NEDOの出展ブースには、アイシン精機など企業4社とfuRoが技術協力して開発した「電動車いすをベースとした搭乗型移動ロボット」も展示された。
■RT人材育成カリキュラムを提案
講演する富山教授
講演する富山教授
 富山教授は9日のフォーラム「コミュニティ共創ロボティクス」で「現場教育を通した実社会への橋渡し」と題して講演。
 RT産業の立ち上げに必要な人材を育成するためには、学生を現場に出し、RT技術を使った活動で社会に役立つことの充実感を体験させることが重要で、このような特徴をもつカリキュラムを大学の工学教育に取り入れることが、学生に対する実社会への橋渡しにつながると力説した。
 この主張の裏付けとして富山教授が紹介したのが、自分の研究室から巣立った起業家の宇井吉美さんのケース。
 宇井さんは、うつ病にかかった祖母を見て「人を癒すロボットを作りたい」と、「感性ロボティクス」が専門の富山教授がいる本学に入学。研究室から派遣された介護現場での実習を通して、介護士が排泄への対応に苦労していることを知り、RTの勉強と並行して非接触型排泄検知シートを開発した。在学中にベンチャー企業「aba」を立ち上げ、現在は同社代表取締役として経営の最前線に立っている。
 富山教授は「このような学生を育てたい」として、そのためのカリキュラムの技術的特徴として1現場での実習とneedsの聴き取り2他大学の研究者や学生との交流3学内での商品化プロジェクトの実施4地域との連携イベント参加5企業家支援イベントへの出席6学生ベンチャーの紹介7ベンチャー協力プロジェクトの紹介などを提案した。

生命、宇宙から飛来?


松井所長 刊行記念トーク
トークイベントで熱く語り合う左から茂木さん、松井所長、ウィックラマシンゲ博士
トークイベントで熱く語り合う左から茂木さん、松井所長、ウィックラマシンゲ博士
 本学惑星探査研究センター(PERC)の松井孝典所長が執筆した『スリランカの赤い雨』の刊行を記念するトークイベントが11月24日、東京・神田神保町の東京堂ホールで開かれた。松井所長は世界的な天文学者のチャンドラ・ウィックラマシンゲ博士、脳科学者の茂木健一郎氏と「生命が宇宙から飛来する可能性」について語り合った。
 ウィックラマシンゲ博士は「生命の起源は宇宙にあり、地球上の原始生命は他の天体から隕石などに付着して到来した」とする「パンスペルミア説」の現在では唯一の主唱者。英バッキンガム大学アストロバイオロジー研究所長を務めており、松井所長と共同で研究を進めている。また、茂木氏は同博士の著書『生命・DNAは宇宙からやってきた』の監訳者。
 松井所長の著書のタイトルになっている「スリランカの赤い雨」は、昨年11月から今年1月にかけてスリランカに降った色のついた雨のこと。同じような雨は2001年にもインド南西部ケララ州で観測されており、スリランカ出身のウィックラマシンゲ博士は、これらの雨から明らかに地球上の生命とは異なる生物学的細胞構造をもった微粒子を発見したという。
 トークイベントで同博士は、まず紀元前からインドやギリシャ、中国などで、19世紀にはフランスで赤い雨が降った記録があるとした。そして、今世紀のインドとスリランカのケースでは、これらの雨が降る前に必ず隕石が大気圏に突入する際の衝撃波音が聞かれていること、雨の前後に地上に隕石が落下していることなどから、「赤い雨は宇宙から生命がやってきたという説と整合性がある」と強調した。
 これについて茂木氏は「地球上に生命があるからといって、生命は必ず地球上で生まれたと考えるのは論理的ではない」としたうえで、「バクテリアは宇宙空間に放置されていても、地球上に戻ってきたらさらに増殖する能力をもっている。宇宙の生命がその極限の環境下でも生き残れるのであれば、バクテリアのようなものがかつて地球外から飛来したと考えることは、確率論からいうとあり得る」と、パンスペルミア説を支持した。
 また松井所長は、インドとスリランカに降った「赤い雨」から、生命であればもっているはずのDNAは公式には発見されていないとしたうえで、「私を含めた日本の研究者とウィックラマシンゲ博士の研究グループは、両方の雨のサンプルからDNAを検出しており、論文を準備中だ」と、大きな研究成果があったことを明らかにした。
 そのうえで松井所長は、パンスペルミア説は現代の科学で、その是非が検証できるテーマであることを確信しているとし、「そのためには、赤い雨のような歴史上の未知の現象を一つずつ、地道に解明していく以外に方法はない」(著書から)としている。
スリランカの赤い雨 生命は宇宙から飛来するか
(『スリランカの赤い雨 生命は宇宙から飛来するか』は角川学芸出版から出版。価格1600円=税別)

水質、資源を大切に


エコメッセに本学出展
CITものづくり提案の展示ブース
CITものづくり提案の展示ブース
 「エコメッセ2013inちば」が9月28日、幕張メッセ国際展示場で開かれた。市民・企業・行政が3者協働でエコロジーに取り組む環境見本市で、活動や研究など昨年よりも多い137件が紹介された。
 本学からは▽生命環境科学科生物圏環境研究室(村上和仁教授)▽同社会圏環境研究室(五明美智男教授)▽「環境科学研究会」(代表・村上教授)▽CITものづくり“学内未利用資源発掘プロジェクト(旧くるくる研究会)”と“再利用を目的とした廃液・廃棄物処理プロジェクト”――が、学生の取り組み部門に出展した。
 五明研は、3、4年生12人の研究を集め▽釣り・魚とりによる環境教育と市民調査▽千葉県臨海部の環境史を踏まえたまちづくりや河川底質環境改善▽千葉県の地域環境資源の分析や竹林資源の有効活用▽災害廃棄物処理や環境アセスメントへの市民のかかわり▽ビオトープ造成のための物理的構造や棚田の地形・水環境調査▽離島のネットワーク分析――などをパネル展示。
 村上研は、バイオ・エコエンジニアリングを活用した環境保全、特に微生物生態学の立場から水環境の保全研究に取り組んでいる。今回は生物指標や水環境健全性指標による県内各地の具体的な環境評価やマイクロコズムを用いた環境リスク影響評価の研究などを発表した。また、各種ミネラルウォーターを飲み比べる「利き水」を催した。
 環境科学研は昨年度から、湖沼水質ワースト5に入る印旛沼を継続調査している。水質分析と並行して水環境健全性指標による水辺環境の評価結果も発表し、水に関心を持ってもらう活動を紹介した。
 “未利用資源”プロジェクトでは、今年度はPCリサイクルを中心に再生したPCや自作のOS移行マニュアルなどを展示した。また、子供用にごみの分別をイメージしたゲームもリサイクルPC上に出展した。また“廃液・廃棄物処理”プロジェクトでは、学生実験の廃液処理の提案や都市鉱山の発掘を想定した、廃棄OA機器・PCなどからの貴金属回収実験の結果を報告した。これまでの出展とは違う、新しい内容であり、また、出展ブースもスクール環境メッセゾーンという教育関係の出展団体が集まっているゾーンでの出展だったため、興味・関心の高い多くの参加者がブースに来場した。
 出展の各チームは会場で、多くの来場者から質問されたりアドバイスを受け、県内の環境団体と交流した。環境科学研では県庁職員も質問。五明研では、千葉県の河口域への取り組みに賛同の声が寄せられていた。