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2012.2.15

田中君 研究奨励賞


薄膜国際会議でポスター発表
研究奨励賞を受賞した田中君
研究奨励賞を受賞した田中君
 世界の薄膜研究者・技術者らが集まるThe15th International Conference on Thin Films(第15回薄膜国際会議:昨年11月8〜11日、京都市・京都テルサ=日本真空協会主催)で、機械サイエンス学科4年、田中元樹君(井上泰志研究室)が英語によるポスター発表を行い、Award for Encouragement of Research in Thin Films(研究奨励賞)を受賞した。
 論文テーマは「Control of Isolated Nanocolumnar Structure of Nitride Films by Glancing‐angle Evaporation with Nitrogen Radical Source(反応性窒素環境下での斜め堆積法による窒化膜ナノ構造の制御)」。
 斜め堆積法とは、原料流束に対し基板を斜めに設置して成膜を行う方法で、比較的容易にナノオーダーの構造を形成することができる。だが、原理的に狭い原料流束分布が必要なため、平均自由行程の長い高真空環境下での蒸着成膜が可能な純金属や一部の酸化物、フッ化物での報告例がほとんど。
 これに対し田中君の研究室は、原料流束の分布が生じる反応性窒素環境下で斜め堆積法を適用し、基板の自転を制御することにより表面ナノ微細構造の制御性を調べた。その結果、反応性窒素環境で斜め堆積法が有効であることを示した。
 研究では、信頼できる実験結果を得るため真空度、原料蒸発源、基板回転、プラズマ状態など、すべての実験条件をしっかり制御しなければならないことが大変だったという。
 田中君は「初めてのポスター発表だったので、受賞と聞いてとても驚きました。同時に、研究奨励賞をもって評価していただいたことをうれしく思いました。ご指導くださった井上教授に感謝したい。卒業に向けて、一層努力していきます」と語った。
 薄膜国際会議(略称ICTF)は、3年ごとに各国が持ち回りで開催している国際会議。薄膜研究の最先端で活躍する研究者や技術者を世界から広く募集・招聘し、研究交流を図ることを目的に開かれる。

液状化対策工法を研究


松田さん優秀論文発表者賞
優秀論文発表者賞を受賞した松田さん
優秀論文発表者賞を受賞した松田さん
 地盤の防災・液状化対策などを研究する建築都市環境学専攻修士1年、松田裕樹さん(畑中宗憲研究室)が、第46回地盤工学研究発表会(昨年7月5〜7日・神戸国際会議場など=地盤工学会主催)で優秀論文発表者賞を受賞した。
 論文は「マイクロバブル水注入による砂地盤の不飽和化に及ぼす透水特性の影響に関する基礎的研究」と題するもの。
 地震で砂地盤に液状化が発生、土木・建築構造物が被害を受けることがある。対策に各種工法が開発され、有効性も実証されている。しかし、既存構造物がある場合、これら液状化対策工法のほとんどは実施困難だ。
 畑中研究室で松田さんらは、既存構造物のある基礎地盤にマイクロバブル水(10マイクロメートル〜数十マイクロメートル以下の気泡を溶存させた水)を注入することで、地盤を不飽和化させるマイクロバブル水注入工法について研究。地盤の透水特性がマイクロバブル水注入に与える影響を詳細に検討した。
 成果の発表にあたり松田さんは、なるべく第三者の目で、自身の研究ではどこが足りないのか、どこを詰めれば説得力を得られるか、などを考え工夫した。学会発表は初めて、しかも神戸に行っての発表で、戸惑いを感じたという。しかし、畑中教授のアドバイスを得、研究仲間に励まされたおかげで、発表が成功したという。
 優れた論文発表と評価され、松田さんは「まさか私が賞を頂けるとは考えてもいず、驚きと戸惑いでいっぱいでした。徐々に賞を頂けた喜びと、発表内容が認められたという思いがわいてきて感激しています」と語った。
 会場では、東日本大震災について「過去最大級の地震と地盤工学的諸問題」と題し、現地調査の緊急報告会も開かれた。

科学技術政策の課題を


PERC松井所長 経済同友会で講演
松井所長
松井所長
 惑星探査研究センター(PERC)の松井孝典所長が、日本経済3団体の1つ・企業経営者の経済同友会(代表幹事=長谷川閑史・武田薬品工業社長)に招かれ、講演した。
 経済同友会では正副代表幹事会の下に各種委員会を置き、国内外の経済動向を分析し、政策を提言している。招かれたのは昨年12月9日で、正副代表幹事会委員会の科学技術振興プロジェクトチーム(委員長=菅田史朗・ウシオ電機社長)が、科学技術開発の促進に向けた問題点について、提言を求めた。
 松井所長は東京都千代田区丸の内の日本工業倶楽部別館大会議室で「わが国の科学技術政策の現状と課題」と題して、企業人委員らを前に約1時間半、講演。
 科学と科学技術、基礎研究、プロジェクト研究などについて定義を整理し直した後、政策、研究費、教育などを説明。わが国の現状について▽そもそも各定義がきちんと整理されていないことが、政策評価をしにくくしている▽学術会議、総合科学技術会議、文部科学省との関係▽研究費配分のあるべき姿――などの問題点を挙げた。

色材調製の研究を発表


河井さん優秀講演賞
優秀講演賞を受賞した河井さん
優秀講演賞を受賞した河井さん
 色材調製の研究で優秀な口頭発表を行ったとして、生命環境科学専攻修士2年、河井孝之さん(橋本和明・柴田裕史研究室)は、昨年開かれた2011年度色材研究発表会(11月15、16日・東京都江戸川区のタワーホール船堀=社団法人色材協会主催)で優秀講演賞を受賞した。
 河井さんの研究テーマは「アニオン界面活性剤分子集合体を鋳型としたメソ構造化酸化亜鉛粒子の調製」。
 酸化亜鉛は、形状によって多分野で応用されており、調製プロセスや形状に関する研究が盛んに行われている。
 河井さんは、洗剤などに使用されている界面活性剤を含む水溶液と、酸化亜鉛のもととなる水溶液を混ぜるだけ、という簡易なプロセスで、ナノメートル(10億分の1メートル)の大きさのシートが堆積したようなマイクロメートル(100万分の1メートル)大の六角板状や、花弁状の酸化亜鉛粒子を調製することに成功した。得られた結果は、新規の日焼け止め剤などに応用できる。
 研究では、形状をミクロのスケールで六角板状や花弁状に制御することに苦労。界面活性剤の種類や溶液の濃度を細かく割り振って、300種以上のサンプルを作製した。既存の方法にとらわれず、たまたま興味本位で別の界面活性剤を使ってみたのが功を奏したという。
 学会では、聞く側に分かりやすい発表を心掛けた。目に見えない領域の研究成果なので、発表スライドを、図や顕微鏡写真を多用することで聴衆にイメージを持ってもらえるように作製した。
 河井さんは「昨年はたくさんの学会で発表し、最後の学会で賞をもらえたので非常にうれしい。修士2年間の研究が評価されたことを感じ、達成感を得ました。私の成果が、今後の研究の一助となれば幸いです」とコメントしている。
 色材協会は国内唯一の色材に関する学術団体で、顔料、塗料、インキなどの研究の発展を図っている。