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2010.12.15

遠山准教授に奨励賞


共同で「新規授業開発」
聴覚障害支援ネットワーク
遠山正朗准教授
 仙台市情報・産業プラザで11月14日に開かれた「第6回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」で本学プロジェクトマネジメント学科の遠山正朗准教授=写真=に対し、主催者の日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(村上芳則代表)から奨励賞が贈られた。
 同ネットワークは、全国の高等教育機関で学ぶ聴覚障害学生を支援するために2004年10月に立ち上げられ、事務局が置かれている筑波技術大学をはじめ、全国の大学・機関の協力により運営されている。
 高等教育支援に必要なマテリアルの開発や講義保障者の養成プログラム開発、シンポジウムの開催などを通して聴覚障害学生支援体制の確立、全国的な支援ネットワークの形成を目指す。
 受賞対象は、遠山准教授と小林ストアー代表取締役の小林充明氏、パソコン文字通訳者会ubiquitous代表の照木篤子さんが共同開発した「『福祉ビジネス論』によるノートテイカーの裾野の拡大」という新規授業開発の発表に対してだ。
 「ノートテイカー」は聴覚障害の学生のために講義などの授業内容を要約筆記する人のこと。このノートテイカーを安定的に学部・学科内に確保することができれば、聴覚障害者の進路選択の幅が広がる。こうした理念の下、ビジネス系を専攻している学生を対象にビジネスの側面から広く福祉について講義することで学生の視野が広がる土壌作りをし、身近に顕在的なニーズのあるノートテイカーとしての技術を習得できるような新規授業開発を行った。
 遠山准教授は「授業として実践的に行っていくにはまだ課題があるが、さらに研鑽を積んでいきたい」と話している。

高木彩助教に社会学博士


社会的迷惑行為を追求
高木彩助教
 本学社会システム科学部金融・経営リスク科学科の高木彩・助教=写真=が、7月14日付で一橋大学から社会学博士の学位を取得した。論文テーマは「社会規範はどのように迷惑行為に影響を及ぼすのか―記述的規範と命令的規範の相違と注目からのアプローチ―」。
 論文は、社会規範の影響力について現在、新しい視点から説明を試みている「規範的行為の注目理論」の考え方を、社会的迷惑行為の問題に適用して、その低減方法を論じている。
 迷惑行為の増加というこれまであまり取り上げられなかった問題に焦点を当て、社会心理学からの理論的検討、さらに心理学実験と社会調査を通じた実証的検討を行い、その成果を理論、実践の両面からまとめている。

日本金属学会学術貢献賞


雀部実名誉教授に
雀部実名誉教授
 北海道大学札幌キャンパスで9月25日に行われた日本金属学会の2010年秋期大会で、本学の雀部実名誉教授(推薦時は機械サイエンス学科教授)=写真=に「第8回日本金属学会学術貢献賞」が授与された。
 社団法人日本金属学会は、「金属に関する理論並びに工業の進歩発達を図ること」を目的として1937年に発足した。春秋の定期講演大会、月刊学術論文誌の発行、会員の情報交換、啓発を目的とした学会報やシンポジウムなどの事業を行ってきたが、近年は超電導材料、セラミックスなどのいわゆる先端材料の領域まで研究スパンが広がりつつある。
 学術貢献賞は金属学、金属工学に関する学術または技術の進歩発展に貢献した功労者に与えられるもので、雀部名誉教授が長年にわたって行ってきた鉄鋼製錬の高温物理化学、鉄鋼科学技術史の研究成果が評価された。
 11月15日、日本の物理冶金学の創始者で本学設立準備委員会の顧問であった本多光太郎氏記念講演会が開かれ、雀部名誉教授は受賞内容について講演を行った。金属学会関東支部が受賞を祝うために開いたもので、雀部名誉教授にとっては感慨深い受賞となった。

総務の後藤氏 秋の叙勲者に


後藤芳喜警備員
 平成22年度の秋の叙勲者が、11月3日(水・文化の日)に発表され、本学総務課(芝園)の後藤芳喜警備員が、単光章に選ばれた。

活躍する校友


在学中から「靴」に関心
パソコン駆使し成果上げる
銀座ヨシノヤ社長
 孝一(ひだか こういち)氏(50歳)
(昭和58年、工業経営学科卒業)
日高 孝一氏
アルバイトでコミュニケーション術を培い、バイクの一人旅で日本中を見聞した日さん、「何事も経験」と語る
 東京・銀座通りに2店舗を構え、全国の百貨店にショップをもつ「銀座ヨシノヤ」。創業1907年、靴・ハンドバッグで、とくに女性に知られた老舗である。そのトップは本学工業経営学科OBの日孝一さん。なんで理系からファッション関係の小売業へ? というわけで、台東区蔵前にある本社を訪ねた。
 社長室からは建設中の東京スカイツリー(墨田区)のほぼ全体を見渡せる。さて、どうしてこの世界へ−。
 「工場実習で千葉県内にある大きな靴の工場で働きました。人間工学を専攻していたこともあり、靴の面白さ、とりわけ履き心地やデザインの元になる靴型に魅かれたんです」と日さん。
 出身は鹿児島市。親元から離れて暮らしたいと本学に。もともと手先は器用で、中学生のころから模型作りやアマチュア無線を趣味にし、本学では電気研究会に籍を置いたこともある。友だちは多く、下宿が雀荘代わりのたまり場になり、「うるさい」と近所の人から苦情が出て、親友と2人で静かな一軒家を借りたという。楽しい学生生活だったようだ。
 コンビニや宅配便、チリ紙交換やアサリ売りなど、あらゆるバイトをやった。そこでコミュニケーション術を培った。稼いだお金でバイクを買い、日本中を一人旅して見聞を広めたという。
 本学の就職担当者からは事務用品会社を勧められた。しかし、想いはやはり靴へ。長男だったが、銀行員の父に「どこで何をしようと、おまえの好きにすればよい」といわれ、今の会社を選んだ。
 「そのころ、内定者の氏名は学内に張り出されたんです。『同じ飲食業だ。ともに頑張ろう』と、学友が握手してくるんです。よく聞いたら、どうも彼は『牛丼の吉野家』と勘違いしたらしい」
 ユニークなエピソードをもとに、「肉は牛丼、革は靴。同じグループ企業ですよ」と、冗談を言って周りを笑わせる。
 「銀座ヨシノヤ」に入社して驚いたのは、製造部門が別会社だったことだという。直接モノを作る仕事が社内にはない。それでも営業職を2年ほど勤め、さらに、履き心地やサイズ表示、木型の開発などを行う研究開発室に長く携わった。
 小売業には文系が多い。理系は少数派。これはかえって有利だったらしい。その後、仕入の仕事にも関わっていくのだが、サイズの多い商材ゆえにむずかしい発注業務に得意なパソコンを駆使してシステムを作り、広がりだしたEメールで売上在庫データのやり取りを始め、成果を上げた。経理部長、商品部長、常務などをへて2007年に義父の跡を継いで6代目社長に就く。
 人をそらさぬ話しぶりは、営業マンのそれである。でも完全な下戸。だから、お付き合いはもっぱらゴルフだ。腕まくりした肌はキツネ色、むろんハンディはシングル。
 最後に、毎年採用面接する現代の学生気質についてたずねた。「前もって練習しているのか、定番の質問には素晴らしい答えをします。だが、カーブを投げると窮してしまう。知りたいのは、その人の考え方や性格です」。日さんは本質を磨くよう提言する。
 そのためには、なにをすべきか。「人に迷惑をかけてはならないが、なにごとも経験し、自分の意志をもつこと。社会は人と人とのつながりで成り立っている。自分の好きなこと、得意なことだけ極めればよいと考えるのは甘い。理工系の学生はもっとコミュニケーション力をつけないといけない。それに、人間ひとりの能力には限界がある。多くのよい仲間をもてば、知恵袋になり、助けてもくれ、結果として自分の能力がプラスされるのと同じことになる。今の私があるのは、学生時代をふくめ多くの仲間のおかげです」と、後輩たちに熱い声援を送ってやまない。