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2008.12.15

本学2チーム「つくばチャレンジ」で健闘


公道を310メートル!自律型ロボット走行
好成績を挙げた林原・中嶋チーム 公道を走行する小柳チームのロボット
好成績を挙げた林原・中嶋チーム ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 今、ロボットは実験室を出て公道へ一歩を踏み出す――。ロボットの屋外歩行に挑戦する「つくばチャレンジ2008」で、本学工学部未来ロボティクス学科の林原靖男准教授、中嶋秀朗准教授らと未来ロボット技術研究センター(fuRo)のらの2チームが11月21日、つくば市内の遊歩道で行われた本走行に出場した。
 「つくばチャレンジ」(財団法人ニューテクノロジー振興財団、つくば大学共催)の今年の課題は「つくば市内の遊歩道の約1キロコースを、外からサポートを受けず自律的に走行すること」。林原・中嶋研の合同チームは、11月20日のトライアル1回目は調整不足で15メートル。ロボットの部品が障害物として検出されたのが失敗の原因らしい。しかし、2回目には100メートルの走行を危なげなく達成して本走行に臨んだ。
 本走行では順調に走行を続けたが310メートルの地点でコーンと自転車の間をすり抜けなければならない状況になった。そして障害物をぎりぎりで避けたため、コーンに後輪が引っかかり終了となってしまった。試走の時にはなかったコーンだが、実環境で動くことを要求されるトライアルなので「しかたありません」と話す。参加50チーム中8位の好成績を挙げた林原准教授は「初参加としては、よく頑張った」と本学学生の健闘ぶりを称えた。参考記録では1キロ以上を達成したのはヤマハチームだけだった。
 また、は吉田智章研究員、桐林星河君(電気電子情報工学科4年)、入江清氏(ACCESS)、吉村尚秀氏(富士重工業)でチームを結成し、本走行では、かなり安定して走行したが、197メートル地点で前日自転車が多くとめられていたため、走行方法を変更したエリアでコース境界に寄りすぎ、三角コーンに道を阻まれてリタイア。走行距離で比較すると本走行22チーム中11番目だった。
 吉田研究員は「各々の要素技術は十分に完成度の高いものが用意できたが、歩道ナビゲーションというアプリケーションへの統合の完成度を上げる時間が不足した」と話している。

[出版]


住空間の科学的研究説く「インテリア下着論」
住空間の計画と設計のための科学 インテリアの人間工学
住空間の計画と設計のための科学
インテリアの人間工学
監 修  小原二郎千葉工業大学常任理事
著 者  渡辺秀俊、岩澤昭彦共著
発 行  産調出版
定 価  本体1800円+消費税
 第二次大戦中に生まれた人間工学は、戦後に広く産業界で応用された。建築人間工学もその流れの中の一つである。この分野を最初に手掛けたのは、当時千葉大学に在籍していた小原二郎教授(本学常任理事)であった。その業績により日本建築学会賞(論文)が授与された。本学に勤務してからも広く社会的活動に貢献したので、その功績に対して日本建築学会大賞が贈られ、また日本建築学会名誉会員および日本人間工学名誉会員にも推挙された。
 本書は小原理事が千葉大学に在籍当時の研究室の活動状況を知る卒業生の渡辺秀俊(文化女子大学准教授)と岩澤昭彦(A&I研究所)の両氏に、小原研究室の研究成果を整理し、新しい知見を加えて一冊の本にすることを薦めて生まれたもので、小原氏にとっては50冊目の著作という。
 本書の内容は「人間の感覚」「人体の仕組み」「人体の動作」などについて解説した後に、椅子やベッドと住宅機器などのほか、鉄道、自動車、航空機の座席を開発した過程を詳細に説明している。
 なお最後の章で「インテリア産業が誕生するまでの歴史」を寄稿し、その中で「インテリア下着論」を書いている。その主旨は「建築を洋服とすれば室内計画は下着に当たる。下着は洋服よりもキメの細かい設計技術が必要だ。肌に触れる下着が良くないと、立派な洋服も、その効果が半減する」と、住空間の科学的研究の必要性を強調している。
小原常任理事
小原常任理事

活躍する校友


“不断の探求”人生変える
初の女性部長はハーブが大好き
矢崎総業(株)技術研究所
解析技術センター材料分析部部長
木村 真澄(きむら ますみ)氏(43歳)
(昭和63年 工業化学科卒業・旧姓杉本)
木村 真澄氏
「人生には無駄もある。でもヒントは何かに・・・・・・」と語る木村部長
 発明のヒントはふとしたことから浮かぶ。通勤のマイカーの運転席に座る時。相模湾を臨む自宅マンションでアロマの湯にひたる、そんなくつろぎの時。難解な材料分析法のアイデアが顔を出す。タイミングをとらえ、前から後ろから見て、それに気づくかどうか、人生を変えるポイントは不断の「興味」、「探求」の継続だ、と確信する。
 “ワイヤーハーネス”という高度にシステム化された自動車用組電線の生産でトップクラスを誇る矢崎総業。世界で約21万人を数える従業員の中で、ここ静岡県裾野市にある材料分析部に今年9月21日、社内で初めて誕生した女性部長。会社は男っぽいイメージに溢れるが、そこに女性の視点がライン部長として注がれる。
 リーダーから所属長への昇格は初夏のころ、上司から話があった。ちょっと待ってくれ――逡巡した。やりたい研究もあった。3カ月の猶予をもらい、考えた。もっと、視野を広げよう。今、11人の部下を引っ張る。環境への配慮が今、自動車関連機器メーカーにも強く求められる。有害物質を出さない、地球温暖化ストップへCOを極力規制する。自動車関連機器への、鉛、六価クロム、水銀といった有害物質の厳しい排除を欧州市場は要求する。
 三島市の中学生時代から理科、数学が好きだった。「数学は答えが一つ、明解なのがいい。化学は素材の分析がきっと人の役に立つ、と考えた」。理科の教師だった父の影響を知らず知らずのうちに受けていたのかもしれない。女子高の県立三島北高校の進学クラスでは、ためらいなく理系組。約300人中、実質40人ほどの理数系大学を目指すグループにいた。
 分析グループは膨大な矢崎製品のチェック機構の最前線に立つ。揮発性有機化合物(VOC)をはじめとした環境負荷物質の分析技術が社内の大きな期待を担う。「今は元素から環境を見ている状況です。しかし、有機化合物の観点から環境を見直すときが来るはず。それに備えて社内的には、樹脂材料への評価技術を確立したい」と将来を見つめる。
 今年に入って研究のアイデアがひとつまた、実を結ぶ。材料分析をより効果的にするため、極めて薄いメッキの分析方法を新たに見つけた。部品のメッキ部分を母材からはがす技法の発明だった。現在、特許申請中。社内では本部長賞が出た。これまでにも環境分析関係の特許は4件ある。「アイデアを思いついたら翌日、実際やってみる、相談する。人生には無駄もあります。でも、あるヒントは何かに必ずつながるんです」。
 大学進学は「東京、東京しているところは避けた」といって千葉工大へ。一人暮らしのスタート。そこで同じ歳の将来の夫と出会う。軟式テニス部の1年生同士。夫は電気工学を学ぶ。在学中はさして意識しなかったが、卒業後、結婚し今は6歳の保育園男児との3人暮らし。出産後、1歳まで取れる休暇も返上、6カ月で復職した。7時半には自宅を出て、0歳の愛児を保育園に送り届けての出勤だ。「もうちょっと一緒にいたかった」思いを研究の仕事で抑えて。「部長になったので少子化防止にはもう、ちょっと」と笑う。
 植物から抽出したエッセンシャルオイルを組み合わせるアロマも勉強。3年前にはハーブの香りで心と体を癒すアロマテラピーのインストラクターの資格も取った。将来は人を癒すようなセラピストも目指したい。頑張りは続く。
 そんな卒業後の生き方を決めたのは、4年生の卒論書きで世話になった女性講師の生き様を真近にみたことから。「専業主婦でなく、共働きを通す。これでなくちゃ、と思う。早期に仕事に復帰したのも、この女性講師の存在が頭にあったから」。
 子供が生まれるまで7年間も、夫と海外の旅を繰り返し楽しんだ。来年には親子3人一緒の旅も復活できそう。今から楽しみにしている。