2006.12.15
3面

活躍する校友

誠心誠意、公明正大が信頼の要
親や会社・上司への感謝忘れない

YKKグループ YKKAP(株)副社長
吉崎 秀雄氏(60)
(昭和44年 工業化学科卒業)

山本 正文氏
『自分で考えろ』と指導する吉崎さん

 ファスナーでは世界的な企業、YKKを知らない人はいないほど有名。国内でのファスナーのシェアはなんと90%。海外でも45%を占めており、いまは建築関係のアルミ・サッシ製造部門でもシェアを大きく伸ばしている。
 このYKKグループ建材事業の中核会社YKKAP(株)副社長が吉崎秀雄さん=昭和44年3月工業化学科卒業。そこで、製造と技術の本拠地、黒部事業所(富山県黒部市)を訪ねた。同工場ではファスニング製品、建材製品、精密機械・装置・金型を製造している。

技術携え、地元企業に

 吉崎さんは「私は魚津(富山県)の生まれなので、就職は地元の企業に……と考えていました。YKKを選んだのは、大学で学んだ工業化学の技術を樹脂材料やファスナーのメッキ、染色に生かしたいと思ったから」と本学卒業後、YKKに入社した経緯を語る。また、「父親が病弱だったので、高校に通いながら働こうと考えて、定時制高校も受験した」とも。
 だが、県立魚津高校から千葉工業大学に進学。「親には千葉まで行かせてくれたという感謝の思いがあり、大学では高校時代よりも真面目に勉強しました。中山競馬場でアルバイトもしましたよ」と笑い飛ばす。寮には入らず、西千葉で下宿生活をした。
 YKKに入社した当時は会社自体が伸びる時期で、最初の配属はサッシ製造部門だった。「私と富山大学の同じ工業化学系の2人が回された。一貫生産の中では材料がキーポイント。炉の中にあるアルミ合金の分析を瞬時にできないか――という『炉中分析』を研究して、材料の品質安定化を図った。現場研修をしながら仕事をやらせてもらいました」と研究即実践の当時を語る。
 公害防止法が制定された昭和46、47年頃、高度経済成長に伴い、産業廃棄物の再資源化が叫ばれるなど、技術開発やプラントの設計が次の担当となった。その後、オイルショックによるエネルギー省力化、排ガス再利用などを進めた。そして、近年需要が増したサッシの多色化が進み、アルミの表面処理技術を任された。

入社3年でプロになれ!

 「モノづくりの現場、モノづくり以外のインフラ部分も含めた工場づくりのため、会社からは非常に大きな投資を任され、それが大きな自信になり、また達成感がありました。そこには『自律』という目標ができ、自分が取り組んだものは挫折はできないという信念がわいてきました。若い時にチャレンジさせてくれた会社や職場の上司のおかげです」と感謝の気持ちを忘れない。
 だからこそ、吉崎さんは新入社員に対しては、「『自分で考えろ』とよく言います。課題を解決する力を早く身に付けて『プロになれ』、それは3年間だ…とも。そのためには、仕事上にはいろいろなプロセスがあって答えは一つではない。多くの経験やコミュニケーション力が知恵として身に付けば、人とは異なった力が付くのではないか」とアドバイス。「でも、毎年優秀な新入社員が多く入ってくるのだが、なかなか思うように育ってくれない」と苦笑。
 吉崎さんは今でも吉田忠雄先代社長(故人・YKK創始者)の『道場の一刀流では駄目だ。野戦の一刀流になれ』という教えを守っている。

中国への行き来で超多忙

 「もう一つ言いたいのは、人間として『正義感を持つこと』、『誠心誠意と公明正大』の信条を持って、部下や社員、取引先と付き合うのが重要。わが社の場合、海外70カ国で事業を展開しており、特に人種・宗教・言葉が異なるが、どこでもリーダーになるためには、そういう気持ちで仕事をしないと人はついて来ません」。多くの経験から信念として発せられる言葉だ。
 部下には「短期的な実績評価だけでなく、同時に成果につなげるための行動『成果行動』を評価するのが必要」という気持で接している。
 いま同社は、サッシ部門で従来のフレーム(部材)づくりからエンドユーザー視点でのサッシの窓事業に取り組んでいる。吉崎さんは製造部門と製造技術担当副社長だが、中国の担当責任者でもあり、月に1回は中国へ出掛ける超多忙な毎日を送っている。

   *  *  *


 YKKには、技術屋のリーダーで昭和48年電子工学科卒業の野口康博さんや、同53年機械工学科卒業の辻利彦さんら本学出身者が数多く活躍している。

技術士制度解説シリーズ-No.9-

千葉工業大学 技術士会
粕谷 太郎(建設部門)
技術士CPD(継続研鑽)制度

 技術士法は、「平成12年4月26日の技術士法一部改正、平成13年4月1日の技術士法施行」に基づいて、職業倫理を備えることを求めると同時に、技術士資質の一層の向上を図るため、資格取得後の研鑽が責務とされ、平成13年4月1日より『技術士CPD〔継続研鑽〕』がスタートしました。
 今回は発足した制度の概要についてご紹介いたします。

1.背景
  • 技術者の果たす使命と役割に対する認識
  • 技術者の相互交流や人材の流動化
  • 技術者の国際的相互承認の必要性
  • 科学技術の高度化・複雑化に伴う信頼性や安全性の確保
  • 実務能力のみならず、社会や公益性に対しての責任
  • 職業倫理と横断的見識を備えた国際性のある技術者
等が望まれることから、技術者のCPD〔継続研鑽〕が制度化され、これによって技術資格の国際的整合性も図られました。


2.必要性
 我が国の科学技術は進歩・発展が早く、かつ高度化、複雑化が著しく増しています。社会から、この科学技術に対する信頼性や安全性の確保が強く求められています。技術者は技術的な実務能力のみならず、社会や公益に対する責任を前提とする高い職業倫理及び技術者倫理を要件とすることが必要です。
 また、世界貿易機関(WTO)等により、技術者が相互に国境を越えて活躍できるよう、整合性を持つ枠組み作りが行われ、APECエンジニアの審査登録が開始されました。
 我が国では、資格をもつ専門職としての技術士が、自己責任において、自主的に高等な応用能力の維持向上を目指し、豊富で多様な機会を得るよう研修、研鑽を実施する必要があります。
 このように、国内外の動向に対応して、技術者の能力と資質の向上、即ち、技術者の専門的な実務分野の知識、一般的な知識及び技術的な応用能力等について、透明性、国際的な同等性、整合性及び一貫性を確保しつつ、技術士CPDとして高めていく必要があります。


3.CPDの目的
 技術士は、高等の専門的応用能力を有した技術者として次のような視点を重視したCPDに努めることが必要です。
  • 技術士倫理の徹底
  • 科学技術の進歩への関与
  • 社会環境変化への対応
  • 技術者としての判断力の向上
 加えて、次のような効果があります。
  • 新しい知識の習得と自己啓発に役立ちます。
  • 社会的信用が得られ技術士の資質向上に資するものであります。

4.CPDの形態と時間重み係数(CPDWF)
 CPDの形態としては、

(1)講習会・研修会等への参加(受講)
  • 時間重み係数CPDWF=1
(2)論文等の発表
  • CPD時間=最大40時間(学術雑誌への査読付き論文、1件当たり)
  • CPD時間=最大10時間(一般論文、総説等)
  • 便宜的に論文等を1ページ当たり5時間程度での換算も可
  • 口頭発表はCPDWF=3〜2
(3)企業内研修
  • 研修 CPDWF=1 (研修プログラムによる実施)
  • OJT 最大20時間 (OJTプログラムによる実施)
(4)技術指導
  • CPDWF=3〜2
  • 大学、学術団体等の研修等の講師や修習技術者等に対する具体的な技術指導は3
  • 社内研修会等の講師は2
(5)産業界における業務経験
  • CPD時間=最大40時間 (特許出願1件当たり)
  • CPD時間=最大20時間 (特に、受賞等成果を上げた業務等)
(6)その他自己学習等
(a) 公的な技術資格の取得
  • CPD時間=最大20時間(1資格当たり)
(b) 公的な機関での議長や委員長就任の場合
  • CPD時間=最大40時間(議長や委員長就任の場合 1委員会当たり)
  • CPD時間=最大20時間(委員会委員の場合 1委員会当たり)
(c) 大学、研究機関における研究開発・技術業務への参加、国際機関への協力等
  • 時間重み係数などは、前記にてらして適宜判断
(d) 技術図書の執筆、自己学習
  • 時間重み係数などは、前記にてらして適宜判断
(e) その他
  • 時間重み係数などは、前記にてらして適宜判断

5.CPDの記録
 履修記録は、CPD記録簿に履修時間数・履修内容等を、その都度記載してください。
※CPDの履修に際しては、CPD課題とCPD形態をバランス良く実施するよう心掛けてください。
 なお、CPD記録簿・形態区分の内容等の詳細については、日本技術士会のホームページをご覧ください。
http://www.engineer.or.jp/
CPDの課題とその区分

議 題 項 目内 容






1.倫理 倫理規定、技術倫理(技術の人類社会に与える長期的・短期的影響の評価を含む技術士に課せられた公益確保の責務等)
2.環境 地球環境、環境アセスメント、環境課題の解決方法等
3.安全 安全基準、防災基準、危機管理、化学物質の毒性、製造物責任法(PL法)等
4.技術動向 新技術、品質保証、情報技術、規格・仕様等
5.社会動向 国内、海外動向(国際貿易動向、GATT/WTO、ODA等)、商務協定並びに技術に対するニーズ動向等
6.産業経済動向 内外の産業経済動向、労働市場動向等
7.規格・基準の動向 ISO、IEC等
8.マネージメント手法 工程管理、コスト管理、資源管理、維持管理、品質管理、リスク管理等
9.契約 役務契約、国際的な契約形態等
10.国際交流 英語によるプレゼンテーション・コミュニケーション、国際社会の理解、各国の文化および歴史
11.その他 教養(科学技術史など)、一般社会との関わり等




1.専門分野の最新技術 専門とする技術、周辺技術等
2.科学技術動向 専門分野、科学技術政策、海外の科学技術動向等
3.関係法令 業務に関連する法令(特に改定時点)
4.事故事例 同様な事故を再び繰り返さないための事例研究ならびに事故解析等
5.その他
問い合わせ先:千葉工業大学 技術士会事務局長:南澤 守
(携帯)090-8815-2504 e-mail:pe39962minami@d3.dion.ne.jp


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