2005.5.15

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「快適音環境の創生研究」に補助金
 
 
文部科学省 学術フロンティア推進事業
将来の音響分野の研究に弾み

 文部科学省は、わが国高等教育機関の大部分を占める私立大学等における研究基盤の整備および研究機能の高度化を図るため、重点的かつ総合的な支援を行うという『私立大学学術研究高度化推進事業』を展開している。今回、その事業の一つである学術フロンティア推進事業で、本学音響情報フロンティアセンター(研究代表者:情報科学研究科情報科学専攻・三井田惇郎教授)のプロジェクト研究「快適音環境の創生」が選ばれた。

 
三井田惇郎教授

  このプロジェクト研究について三井田教授は「人は、外界から情報を取り入れる際に、ほとんどの部分を音と映像に頼っている。いながらにして、望むところの様子を見聞きできるようになりつつある情報化社会において、音と映像の果たす役割はますますその重要性を増してきている。しかし、あまりにも簡単に情報が発信できるようになったため、有害な情報が溢れ、多くの弊害が生じている。このような状況下で、情報媒体の主要部分である音の快適な環境を造るための技術開発を推進する研究機関の存在意義は極めて大きい。幸い本学には、音声、音響機器、聴覚、音響心理、超音波、建築音響、交通および機械騒音など、ほとんどすべての音響分野をカバーする研究者が多数在籍しており、各分野で優れた業績を上げている。このたび文部科学省から支援が受けられることになり、これらの分野を総合した快適な音環境の研究に弾みがつく」と語る。
 期待される研究成果としては、音の属性として挙げられる情報性、文化性、福祉性、安全性、快適性、社会性などでの社会的貢献が考えられる。さらに、学術面においても快適性に着目した環境・情報学研究の必要性を示し、今後の研究課題を提示することができる。研究期間は、平成17年4月から同22年3月まで。
 学術フロンティア推進事業とは、優れた研究実績を上げ、将来の研究発展が期符される卓越した研究組織を「学術フロンティア推進拠点」に選定し、内外の研究機関との共同研究に必要な研究施設、研究装置・設備の整備に対し、重点的かつ総合的支援を行うもので、平成9年度に創設された。

 
 
習志野市 産学官連携プラットホーム発足
 
 
「大学の技術使ってほしい」と本岡学長
市内の大学と企業が連携し、地域活性化目指す
 
   
 習志野市(荒木勇市長)は4月25日、同市内の大学や企業など産学官を活用する「産学官連携プラットホーム」を発足し、常設交流窓口を同市津田沼4丁目の習志野商工会議所内に設置した。
 この構想は、同市内にある大学の研究・技術と資源を活用できる地元の企業との連携をはかり、新産業・技術を創出し、地域経済の活性化を図るのが目的。
 市内には千葉工業大学をはじめ東邦大学、日本大学生産工学部の3大学があり、このプラットホーム構想で、今後は技術情報をホームページで公開して、研究室にある精密データ機器の活用など技術提携で新しい製品開発を目指すという。
 同商工会議所で開かれた発足式には、荒木市長や3大学の学長のほか、地元企業代表者約40人が出席した。席上、本岡誠一本学学長は「企業の活性化には環境作りが必要で同事業は的を射ている。大学の技術を使ってもらいたい。敷居が高い、などと言わないでどんどん来て欲しい」と抱負を語った。
 
▲習志野市産学官連携プラットホーム発足式会場
 
 
「ヨウ素を用いた材料の表面処理」研究室ナビ(3)
 
 
機械サイエンス学科 高谷研究室
サスティナブル・マテリアルの追求
マグネシウムの特性生かした材料開発も
 
 
▲『何でもいいからまじめにやれ』と学生に研究の心得を伝える高谷教授(前列左から3人目)。左は大谷親講師
 津田沼校舎4号館6階の精密第1研究室に、機械サイエンス学科の高谷松文教授を訪ねた。
 高谷教授の専門は、表面物性工学、材料科学、材料加工・処理。特に「ヨウ素を用いた材料の表面処理」は有名で、表面技術協会論文賞や協会賞を受賞。現在は社団法人・表面技術協会会長として活躍している。
 「いま21世紀そのものが『環境と知的時代』と言われている。研究テーマとしては、その中に“サスティナブル・マテリアル”(“継続できる材料”という意味)があります。実は日本には、世界に誇れる材料としてヨウ素がある。そして菜種油をヨウ素がらみで生分解性の潤滑剤として使おうとしています。マグネシウムもそうです。だからサスティナブルな材料を対象にした研究をやろうというわけです」と現在進めている研究の一部を説明してくれた。
 「サスティナブルな材料の研究、表面技術の研究を続けたい。具体的な研究成果はヨウ素の工学的な利用です。マグネシウムは、マグネシウム同士の接着、異種金属の接合とは、接着材は絶縁体だから接触腐食が生じない。そういう発表を修士(マスター)の学生も、昨年から大分発表してきました」。
 「今度はアルミとの接合や鉄との接合。構造の強い所は鉄で頑張ってくれ…と。振動を吸収してほしいような所はマグネシウムの特性を利用して…と考えている。具体的には、盲人のために点字を作っている会社がヨウ素を取り入れて、目の見えない人のための抗菌を実現しようとしている。このほかドアの取っ手や家具の研究が進められている」と分かりやすく説明された。
 同研究室には、いま大学院修士課程4人、学部学生14人の計18人の学生がいる。高谷教授は、学生の就職問題についてもとても熱心で「学生には研究成果を持たせて、ある企業に行かせています。そうすれば学生も頑張ってくれると思うし、自分の研究が生かせるのだから……」と楽しそうに話す。
 サスティナブルな材料としては菜種油をはじめパラフィン、カンテンなど範囲が広い。高谷教授は「NHKテレビの『お江戸でござる』の中で解説していたように、パラフィンは江戸時代に植物から取っていたそうです。これがサスティナブルな材料なんですね。本当は炭(すみ)もそうで、炭は枕の湿気を取ったり、土壌改良剤に。アルコールからも通電発熱法でカーボンナノチューブができることが分かり、先日行われた大学の学生発表会でも発表させた」と語り、「産学官の共同研究も景気が悪いので難しくなってきた。産学で何かやりましょうと言うのだが、企業側は必ず成果を要求してくる」と実情を語る。

▲『サスティナブル』を力強く語る高谷松文教授
   同教授は、研究に対する学生の取り組みには、「何でもいいからまじめにやれって言ってるんです。それに自己啓発、自己主張が大切だと言っている。研究成果は一つでもいいことがあったら必ず発表しろ−と指導している。論文なんていうものは学生が決めるもの。簡単に言えば『恥をかきなさい』ということ。だから、私は講演を頼まれた時はマスターの連中を連れて行き、『私が恥をかくのをよく見ておけ』と教えています」と、学生に対しては本当に熱いものが伝わってくる。
 高谷教授は『表面技術は情報』だと言う。例えば高松塚古墳の表面の色彩は時代を伝えていると指摘する。「座右の銘は?」とたずねたら、教授は「あんまりないんだよ。『正直に生きる』かな。いや『誠実に楽しく生きる』」と照れながら言い直した。
 
 
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