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自動車運転の習慣が視覚の注意能力を向上させることを実験で定量的に確認 ─ ヒューマンエラーによる交通事故を減らす指針に ─


[ 概要 ]
ゴールデンウィークや年末年始には、久しぶりに運転する人のヒューマンエラーによる交通事故が
多発している。ヒューマンエラーのほとんどは視覚認知ミスが原因と考えられ、交通事故は運転経験
で視覚的な注意力を向上させれば減少すると期待される。しかしこれを裏付ける定量的な実験デー
タは無かった。運転経験と交通事故との関係をある程度数値で示すことができれば、事故をできるだ
け未然に防ぐ方法を考えることができる。
中部大学大学院工学研究科ロボット理工学専攻大学院生の山本昂汰氏(研究当時)と同大学理工
学部AI ロボティクス学科の稲垣圭一郎准教授らは、東邦大学理学部情報科学科の我妻伸彦講師、
千葉工業大学情報変革科学部情報工学科の信川創教授らと共同で、運転時の認知における視覚的
注意の能力を、注意を反映する脳波の1 種である事象関連電位P300 を運転初心者と経験者で計測
して比較し、視覚的注意に関する脳情報処理速度をP300 の応答潜時(刺激を与えてから反応するま
での時間)から評価できることを発見した。
実験は19 歳から25 歳の学生16 人の協力を得て実施された。16 人は運転免許取得から3 年以
上で1週間に5 回以上運転の経験者群8 人と、免許取得から3 年未満で運転は週1 回未満の初心
者群8 人からなる。実験の結果、経験者群は初心者群と比べてP300 の応答潜時を速めていること
が数値に現れた(図)。こうした結果から注意に関する脳情報処理の有意な向上に運転経験が重要
な要因となることを明らかにした。また、こうした注意に関する脳情報処理の改善が認知反応の向上
につながることも確認した。研究成果は交通心理と行動に関する国際学術誌Transportation Research
Part F: Traffic Psychology and Behaviour に発表した。
今回の実験結果は、視覚認知ミスによる事故を低減させるために日々の運転で視覚経験を培うこ
とが重要であることを示している。今後、運転免許の更新時やペーパードライバー講習などでP300
応答潜時をドライバーの認知処理能力評価システムに応用することが期待される。