宇宙兄弟で知るTechnology+の学び

EPISODE 03 月の砂を利用した酸素生成装置

空気がない宇宙では遠近感がうまく掴めず、日々人たちの乗ったバギーは深い谷底に落下。酸素のメインタンクを破損した日々人は、とうとう酸素供給がとまり、倒れてしまう。その時、月の砂(レゴリス)を原料に酸素を作り出す酸素生成ローバーBRIAN3号が現地に到着。日々人は、なんとかBRIAN3号から酸素を受け取ることができ、九死に一生を得る。

「無重力を利用した研究」について工学部 先端材料工学かの小沢先生にお話をうかがいました

研究内容

化学の力をベースに環境とエネルギーに関する研究に取り組んでいます。課題は太陽電池や燃料電池など、目的に合わせた電池を作ることです。また、照明の光、体温、歩く時の振動など、身の回りの使われていない小さなエネルギーを電力に変換して使う、新たな生活環境の実現にも関心があります。

episode 03-01

未来へのアイデアを生かす「化学」の力

太陽電池と燃料電池を組み合わせた太陽下での発電実験 イメージ

月の砂(レゴリス)を原料に酸素を生成するというエピソードについて調べてみたところ、このアイデアは、専門誌で真面目に議論されているテーマだとわかりました。レゴリスには酸化した金属(酸化物)と微量の水素が含まれています。とすれば、レゴリスを加熱して水素を取り出し、それによって酸化物を還元することで、水をつくることができます。その水を電気分解すれば酸素をつくることは可能です。レゴリスに存在する水素はわずかなので、効率やコストの問題は精査する必要がありますが、そうした問題をクリアできれば、月での長期にわたる生活が、かなり現実味を帯びてきます。とても夢のある話だと思います。月に関係するプランでは、私の専門分野でもある太陽電池による発電も構想されています。月面では太陽電池の発電効率が高いため、電気を電磁波で地球に送電すれば地球のエネルギー問題は大きく好転するはずです。こうした未来像を実現するうえで、いつも鍵を握っているのが、実は「化学」の力なのです。

episode 03-02

化学は持続可能な社会に
大切な役割を果たします

アルミを負極とした革新電池を研究する実験装置 イメージ

化学は、ある物質を変化させて、人類に有用な新しいものを創るはたらきを担っています。レゴリスのような無機物からガスを取り出し、人の生存環境を広げることに活用するのも化学です。私自身は、電気分解や電池などを専門とし、化学の力で目的に合わせた電池を作ることを研究してきました。これからの世の中にとっても電気は欠かせないエネルギーですが、技術革新によって、消費する電力はどんどん減っています。例えば、小さなセンサを動かすといったような微量な電気は、身近に捨てられているエネルギーを利用することが有効です。照明や体温、雑音、人が歩くときの振動などを、化学の力で電気に変え、積み重ねていけば、環境問題の解決にも貢献できるでしょう。つまり応用化学科の学びは、持続可能な社会を支える大切な役割を果たしているのです。もちろん「宇宙兄弟」の主人公たちも、こうした身の回りのエネルギーを活用できるようになれば、月での生活がもっと快適になるはずですね。

今後取り組みたい研究領域

ナノバブルの原理と応用の研究

ナノバブルの性質に関心があり、化学の分野の研究者とネットワークを結んで、原理と応用範囲を解明したいと思っています。ナノバブルとは直径1万分の1ミリ以下の微細な気泡のことで、さまざまな気体を水中に溶け込ませることで、作物の生育を促進したり、水質を浄化したり、抗生剤を使わずに魚を養殖できるなど、さまざまなメリットがあるとされているものです。各研究者が、得意分野からアプローチして、可能性を探りながら、世の中の役に立つ成果を出したいと思っています。

谷津干潟の環境整備

本学の習志野キャンパスにもほど近い「谷津干潟」を豊かな生物多様性を持つ環境に再生したいと思っています。谷津干潟は、いまアオサの異常発生と枯死によって硫化水素が発生し、ゴカイや貝類、ヤドカリなどが死滅して、それを餌とする野鳥も減少しています。市民カレッジに参加する地元の方の熱意に刺激を受けながら、発生した硫化水素を化学の力で分解したり、アオサの発生を抑えたりすることで環境を改善し、野鳥にとっても地域の方々にとっても憩の場になるようにしたいと考えています。

工学部 応用科学学科

未来を作るのは応用科学の仕事です

太陽電池や燃料電池などの製品はもちろん、自然界で分解される新素材、クリーンエネルギーを支えるバイオエネルギー、青色LEDや再生医療といった先進技術にも、化学が生んだ材料や技術が活用されています。千葉工業大学応用化学科では、さまざまな専門科目と数多くの実験を通して、まだここにないものを生みだす発想力を持った人を育てます。また、理科の楽しさを子どもたちに伝えたいという人のために、理科の教員免許を取得する教職課程を設置していることも特長です。

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