グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ

SDGsの取り組み

ホーム > SDGsの取り組み > 災害時でもみんなの助け合いでメッセージを届ける技術

災害時でもみんなの助け合いでメッセージを届ける技術



工学部 情報通信システム工学科
菅原 真司 教授

取り組み事例

携帯電話やノートPCを使った通信は私たちの日常生活には欠かせないものですが、災害発生時などには電源の喪失、無線通信基地局の破損などにより一時的にでも通常の通信ができなくなることが考えられます。そんな時でも、何らかの手段で最小限のメッセージ交換ができれば安心ですね。

私は情報通信ネットワークにおける効率的な情報共有の研究をしていますが、そのなかの一つに、DTN通信を応用した効率的なメッセージ交換があります。DTN(Delay、 Disconnection、 Disruption Tolerant Networking)は、通信の遅延や一時的な切断があっても粘り強くメッセージを届ける技術です。元々は宇宙空間や海中での通信を意図した研究のようですが、電力供給の安定しない国での応用なども検討されました。我が国でも大きな災害に見舞われた場合、一時的にこのような技術が役立つかもしれません。

この分野の中でも私たちは主に蓄積運搬型メッセージ交換(図1参照)の効率を向上させる基礎研究を行っています。基地局経由の携帯電話ネットワークやWi-Fi回線を用いずに、ある携帯端末から誰かに届けたいメッセージがあれば、たまたま出会った別の端末に直接Bluetoothなどを用いてメッセージを預け、その端末が移動してまた別の端末に出会う度に、次々にバケツリレーのようにコピーを渡して拡散させることで、最後は目的の相手に届けるというものです。このためには自分のためだけでなく、他の誰かのためにも協力してあげることが必要です。私の研究室では、このような通信を効率よく行う手順を考え、良いアイデアが浮かんだら、コンピュータ上のシミュレーションでその効果を確かめることを繰り返しています。

現時点で20%程度のメッセージ到達率ですから、必ず届くという十分な信頼性はまだありませんが、今後、到達率をさらに向上させたいと思っています。ヒントになるのは、端末がメッセージを預かりすぎて、新しいメッセージを受け取れなくなる欠点(図2参照)の改善です。これには例えば、到着済みのメッセージのリストを効率よく拡散して各端末のメモリから不要なメッセージを消去する方法を考えたりしています。

コンピュータシミュレーションの様子を短いビデオにして下記のURLから見られるようにしました。地図上の道路に沿って動き回る数字が端末を表していて、メッセージの到達率や到達までの時間を端末数や端末移動速度、地図の規模などを変えて評価しています。興味があれば、ご覧ください。

DTNシミュレータの動作例

図1 蓄積運搬型メッセージ交換

図2 DTNを応用した蓄積運搬型メッセージ交換の問題点

左上:初期状態
右上:送信元からメッセージを発信
左下:到着済みメッセージリスト(anti-packet)の送信開始
右下:不要なメッセージの残留