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挨拶集


平成30年度学位記授与式式辞


 本日、ここに平成30年度学部・大学院学位記授与式を挙行するに当たり、卒業生・大学院修了生、並びに御列席の御家族・御友人の皆様に対し心よりお祝いを申し上げます。今日、晴れてこの千葉工業大学を巣立って行かれるのは、学部卒業者2,046名、大学院修士課程修了者229名、博士の学位を受けられた方10名、合計2,285名に及びます。
 昭和17年に創立された千葉工業大学は、昭和22年の第1回卒業式で初めて卒業生76名を送り出しました。以来、東京工業大学に次ぎ日本で2番目に長い歴史を有する工業大学として、今年も多数の俊英を世に送り出すことができることは、千葉工業大学で教育を司る者としてこの上ない慶びであります。世界中で国家間・民族間の紛争や自然災害が頻発し、人々がそれらを解決するための新たなビジョンを模索し苦しんでいる状況の中で、多彩で個性に溢れ時代を変革し新しい社会を生み出す可能性を秘めた皆さんの将来の活躍に私は大きな期待を持っています。
 50年前の1969年、アメリカ合衆国のアポロ11号は月着陸船イーグル号を月面に着陸させ、二人のアメリカ人が初めて月の土を踏みました。この時私は7歳、小学校の2年生でしたが、テレビに映った月からの中継映像を今でもはっきりと憶えています。この人類の月面到達に代表されるように20世紀には科学技術が急速に進歩しました。そして、科学技術の進歩は人々の生活を大きく変え、多くの人々がその恩恵にあずかっています。私見ではありますが、現在日本で暮らしている私達は、大人から子供までたぶん江戸時代のお殿様よりも美味しいものをたくさん食べていると思います。便利で安全な暮らしを送っていると思います。多くの病気が治療できるようになり寿命も大きく伸びました。
 人類が月面に降り立つ前の年の1968年には映画、『2001年宇宙の旅』が公開され、精巧な特殊撮影で描かれた有人木星探査宇宙船内での無重力下の生活や人工知能と人間とのやり取りを見た当時の人々は、21世紀の初めにはこのような遠い宇宙への旅が実現していると想像したことでしょう。ただ、これは21世紀に入り20年近くが過ぎた今も実現していません。人が想像する未来は、時にはそのとおりになりますが、多くはそうなりません。その理由は、 世の中ではひとつのことだけが動き進んで行くわけでは決してないからです。人々が注力するものは時とともに変わって行きます。
 今日、修了・卒業される皆さんの大多数は20世紀の終わり頃に生まれたと思いますが、皆さんが生きて来た21世紀に入ると科学技術は人々の想像を超えた新たな展開を見せます。それは情報通信技術の目覚ましい進歩です。コンピューターや通信技術の発達によって様々な作業が飛躍的に効率良くできるようになりました。また従来存在しなかった新しいサービスが生み出されました。大量の情報が国境を越え瞬時に移動しその情報に基づいて人や物そしてお金がダイナミックに動く時代が既に到来しています。道路地図を見なくても目的地への最適な道をナビゲーターが表示してくれます。今まで百貨店へ行かなければできなかった買い物や、図書館へ行かなければできなかった調べものが携帯端末でできるようになっています。音楽や映画や小説も携帯端末ひとつで楽しむことができます。近い将来学校に行かなくても携帯端末で世界中の大学の授業が受けられるようになるかも知れません。
 このような情報通信技術の進歩によって、将来人々の暮らしがどう変わるかといろいろな人が予想しています。人の仕事が、あるいは物の役割がコンピューターやそれに制御される機械に変わり、人工知能の進歩によって人の仕事が奪われるという人がいます。しかし、必ずしもそうはならないでしょう。
 現在日本には約17,000種類の職業があります。100年前には約35,000種類の職業があったそうですので、確かに科学技術が進歩したこの100年間に職業の数は半分以下に減っています。しかし、日本の就業者数は100年前の約2700万人から現在は約6000万人と倍以上に増えています。科学技術の進歩によって消えて行く仕事もありますが、逆に新たな産業や職業が生まれて来たのです。将来も人は科学技術の進歩に対応し順応し工夫して生きて行けるのではないでしょうか。
 古くは産業革命以降、工業国とそこに原材料を提供する国との間に格差が生まれ先進国と発展途上国が形成されました。しかし、情報通信技術に関する教育や情報通信産業の育成に多くの国が力を入れている現在では、産業革命によって生まれた先進国、発展途上国といった序列は消滅する方向に向かっています。そして、情報通信技術という新たな競争によって、技術革新に成功した国・人とそうでない国・人との間に新たな格差が生まれようとしています。私は、人の仕事が人工知能や機械に奪われるかどうかという問題以上に、このような格差を生むことなく世界中の人々が幸せを享受できる持続可能な発展を成し遂げられるかどうかという課題こそが、我々が解決のために力を注がなければならないことではないかと考えています。
 千葉工業大学の設立趣意書には、「日本のみならずアジアを背負い世界文化に尽力する人物を養成する」と書かれています。そして、人のために、無私無欲に尽力する心を持ち、自立し、人間としての徳を備え、自らの能力を充分に発揮できる人材の育成、常に物事の両面を見て平等な世界を打ち建てることができる人材の育成が謳われています。この理想は「世界文化に技術で貢献する」という建学の精神として、今日も生き続けています。私は、本学が創立時から育成を目指した人材こそが、これからの時代にグローバルリーダーとして世界の人々の幸福と世界の平和のために力を発揮する、人類の持続可能な発展のために必要な人材、今まさに世界の人々が求めている人材だと思います。皆さんには千葉工業大学の「建学の精神」を心に刻んで精一杯活躍して欲しいと思います。
 どうか志高く生きてください。皆さんの未来が豊かで実り多いものであることを心からお祈りして、私の式辞といたします。卒業生・修了生の皆さん、おめでとうございます。

千葉工業大学 学長 小宮 一仁

平成31年3月22日 幕張メッセイベントホール
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