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挨拶集


平成27年度学位記授与式式辞


3月22日 幕張メッセ・イベントホール
ここに、平成27年度学部・大学院学位記授与式を挙行するに当たり、大学を代表致しまして卒業生・修了生、並びに御列席の御家族・御友人の皆様に対し心より御祝いを申し上げます。本日晴れてこの千葉工業大学を巣立ってゆかれるのは、学部卒業者1,946名、大学院修士課程修了者218名、博士学位受領者7名、合計2,171名に及びます。

千葉工業大学は、昭和22年9月30日、初めての卒業生76名を送り出しました。以来絶えることなく、そして今年もまた、時代を変革し新しい社会を生み出す可能性を秘めた、多彩で個性溢れる多数の俊英を世に送り出すことができることは、大学で教育を司る者として大きな慶びであります。特に今日の学位記授与式は、昭和22年の第一回から数えて70回目の卒業式であります。今日巣立ってゆかれる皆さんは、千葉工業大学の記念すべき70代目の卒業生です。

千葉工業大学は、昭和17年に大学予科3年と本科3年の6年間の修業年限を有する旧制大学として創立され、その年の6月に第一期生160名を迎え入れました。この時航空工学科に入学された松本忠夫さんが、予科入学から大学卒業までの回想録を残しています。

回想録は次のような書き出しで始まっています。「私の大学生時代は、予科は第二次大戦の戦局の向きが変わり始めたころから始まり、学部は戦局が破局を迎え遂に敗戦で社会の混乱の極に達した困窮のさなかに終わった。大学創立時の修業6年の予定が、困窮、耐乏の五年半で終わったのである。」

そして続いてこの回想録には、当時の学生達が時代の流れを冷静かつ真摯に受け止め、大きな苦難と不自由の中にあっても青春を謳歌し、自身の運命を、肯定し続けた様子が綴られています。それによると、創立時から生活用品は逼迫し、米の配給量も少なく外食も困難だったそうです。授業の他に軍事教練や技術将校になるための士官学校での合宿訓練、そして勤労動員等があったそうです。東京玉川の地を離れた後は校舎の移転を余儀なくされ、戦局は益々不利になり、資材の欠乏は目に見えて増し、学部の設備・授業の充実など全く望むべくもなかったそうです。

しかし松本さんは、交響楽団とのベートーベン第九交響曲のコーラスの共演や軍事教練中の富士登山など、当時の世間一般の大学の学生とは違った学生生活を送れたことが、卒業後の強烈な思い出になっていると綴っています。ドイツ語を習い始めて間もなく、Karl Busseの「Über den Bergen(山のあなた)」の詩をドイツ語と日本語訳で暗記させられ、70年を経ても暗唱できて懐かしさひとしおであるとも綴っています。これは、大学での「学び」の価値は、大学時代の経験を、一生涯に於いてどう活かすかで決まることを示していると思います。
さて、皆さんは千葉工業大学在学中に何を学ばれたでしょうか? 

学部そして大学院に於いて学問と研究を究めた人もいるでしょう。教養や語学力或いは専門的な知識を深く身に付けた人もいるでしょう。クラブ活動を通じて、弛まず取り組む力やリーダーシップを身につけた人もいるでしょう。ボランティアや地域活動を通じて社会貢献に力を入れた人もいるでしょう。そして、友人と共に多くのかけがえのない体験をした人もいるでしょう。皆さんが大学で学んだことは、シラバスに書かれていることだけではなかったと思います。

「学び」とは、教えを受けたり見習ったりして知識や技術を身につけることです。それは「知る」という行為の連鎖で成り立っています。ただ「知る」ということは、経験したことを記憶し後に同じ経験に出会った時にそれを認識することではありません。なぜなら人は厳密に同じ経験を繰り返すことができないからです。

私は、「知る」ということは、経験を組み立てることだと思います。人は多くの経験を通じて、自分が存在している世界を頭の中で組み立てて認識してゆきます。こう考えると、今皆さんが見ている世界は皆さんが経験したことを積み重ねてつくりあげたものに外なりません。そして、経験が多ければ多い程、「知る」ことが多ければ多い程、皆さんが組み立てた認識は客観的事実に合ってゆきます。

最高学府である大学院或いは大学まで学んだ皆さんは、既に経験を組み立て物事を正しく判断する力が身に付いています。しかし、これからも「学び」を通して経験をし続け、知見の新たな組み立てを行うことが必要です。皆さんの前途には本当の意味の試練が待ち構えていることでしょう。これらに立ち向かう時には、「学び」よって得られた力で自らを支え、足を前に踏み出さなければなりません。新しい困難を乗り越えられるかどうかは、皆さんが今後も学び続けられるかどうかにかかっています。千葉工業大学の教育目標にある「広く世界に知識を求める好学心」を持ち続けてください。そして、これは私の一番の望みですが、皆さんが持つ力を、最後は、自らが賢く生きるためではなく、是非他人に優しくあるために役立ててください。

どうか志高く生きてください。皆さんの未来が豊かで実り多いものであることを心からお祈りして私の式辞と致します。

卒業生・修了生諸君、おめでとうございます。
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