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挨拶集


平成25年度入学式式辞


04月01日
新入生の皆さん、御入学おめでとうございます。今年度千葉工業大学は、35,839人の志願者を集めました。大変な難関を突破し、晴れて千葉工業大学の一員になられ、今日の入学式を迎えられた感慨はひとしおだと思います。また御列席の御父母、御家族の皆様に対し、心からお祝い申し上げます。千葉工業大学にとりましても才気あふれ、前途洋々たる皆さんをお迎えすることができたことは、大きな喜びであります。

千葉工業大学は昨年創立70周年を迎え、創立記念日の5月15日には記念式典を挙行致しました。70年前の創立当時は僅か160名の学生数でスタート致しましたが、時と共に着実に成長を続け、現在では、在校生数約1万人の、我が国はもちろん、世界的に見ても非常に大きな規模の大学になっています。70年という年月は非常に長い期間です。この間、漫然と時を過してきたとしたら、現在の千葉工業大学の地位や評価はなかったと思います。それでは、何故このような成長を続けることができたのでしょうか。そこには、創立以来受け継がれている、確固たる精神と理念があったからだと思います。

今から78年前、慶應義塾に工学部の新設を目指していた、時の慶應義塾塾長の小泉信三は、工学教育の実態を視察するためにアメリカに渡りました。同じ頃、王子製紙社長の藤原銀次郎もアメリカを視察し、日本の工学教育の遅れを実感していました。我が国の工学教育の充実を求める二人の意見は一致し、慶應義塾の卒業生だった藤原は、将来慶應義塾に寄付することを前提に、私財を投じて、昭和14年、工業大学を設立しました。これが日本最初の私立工業大学である、藤原工業大学です。藤原工業大学は、創立時から慶應義塾と一体的な運営が行われ、当初の予定通り、最初の卒業生を送り出す直前の昭和19年夏、慶應義塾に吸収され慶應義塾大学工学部となりました。

小泉と藤原がアメリカに渡る15年も前、一人の皇族がヨーロッパにおりました。東久邇宮稔彦王です。パリを中心とするヨーロッパで、七年間の自由な生活を送られた殿下は、フランスの最高学府であるエコール・ポリティクで、政治や外交について広く学ばれた他、モネ、ルノアール、ドガ、クレマンソーといった画家・文人とも親交を深められました。その殿下が、留学中最も強く実感されたのは、欧州と日本の工業技術力の差でした。そこで殿下は帰国後、この留学経験を活かし、欧米に負けない高等工業教育機関の設立を望まれました。これに共感した、教育学者の小原國芳、財閥森コンツェルンの森曉、物理学・金属学者の本多光太郎、哲学者の西田幾多郎、作家の武者小路実篤らは、文部省主導のもと、京都帝国大学総長であった小西重直を初代学長に迎え、昭和17年、我が国で2つ目となる私立工業大学を創立しました。これが、諸君が今日入学した千葉工業大学であります。藤原工業大学の創立に遅れること3年目のことでした。

本学と藤原工業大学は、共に我が国の工学教育のレベルアップを目指して設立されたこと、開戦・太平洋戦争そして終戦の時代、創立時から、物資の不足、空襲、学徒動員や数回の校舎移転といった苦難を経験したことなど、境遇が重なる点が数多くあります。しかし、私は、両校の教育理念には、出発点から大きな違いがあったと考えます。すなわち、藤原工業大学が、「実地で役立つ工学教育」を提唱し、アメリカ合理主義の思想を源流として設立されたのに対し、本学は世界に貢献する技術者の養成を目的としながらも、科学技術教育と共に、芸術やスポーツの重要性をも教育目標に謳い込むなど、ヨーロッパにおける総合的なエリート養成機関としての大学を目指して設立されました。このことは、創立時に本学が全寮制であったことからもわかります。

アメリカの大学にもヨーロッパの大学にも学生寮がありますが、アメリカの大学の学生寮が学生の住まいであるのに対し、ヨーロッパの大学の学生寮は、教員と学生が共に暮らし学生を教育する場、学寮・カレッジとして誕生し発達しました。英国最古の大学である、オックスフォード大学とケンブリッジ大学では、学寮・カレッジを中心とした全寮制の教育が、創立から800年以上経った現在でも行われています。大学を表す英語のユニバーシティには、学寮・カレッジの集合体という意味があるのです。

本学の教育目標にある、師弟同行・師弟共生の教育は、まさに、この学寮・カレッジを中心としたヨーロッパのエリート養成教育に繋がるものであると私は考えます。本学は、この伝統を受け継ぎ、千種校地に大規模な学生寮を有していますが、本学創立時の意思を改めて明確にするべく、現在、新習志野キャンパスに新学生寮を建設しています。諸君が2年生となる来春には、単なる寮生の住まいではなく、教育の場、国際交流の場としての学寮が完成することでしょう。

さて、世界は今、大きなターニングポイントに差しかかっています。アジアやアフリカの新興国が競って成長を追い求める中で、これまで世界を動かしてきた先進国中心のシステムや秩序が根底から揺らぎ始めています。また、環境、エネルギー、食糧等の課題はますます深刻になっており、特定の国だけで解決することが不可能なレベルに達しています。今や国を問わず、全地球が一致団結して持続可能な世界を構築していかなければなりません。真のグローバル社会の構築が急がれているのです。今まさに、本学の建学の精神である「世界文化に技術で貢献する」人材が、全世界で求められています。

変革の時代に私達が成すべきことは、一層深く広く学問を学び、自分で考え、問題を解決する能力を高める他にはありません。世界が、これらの課題を乗り越え、新たな未来を切り開いていけるかどうかは、諸君ら、若い世代の双肩にかかっているのです。諸君は、今はそのために力をつけなければなりません。不要な誘惑にまどわされず、将来のために徹底して自分を鍛えてください。大学では、問題を発見する能力、論理的に考え解決する能力、他人と協力するコミュニケーション能力、そしてたゆまず取り組む実行力やリーダーシップを身につけるために、専門科目と教養科目をしっかりと勉強してください。千葉工業大学は、全力で、諸君がこれらの力を身につける手助けをします。

我が国で最初の私立工業大学であった藤原工業大学は、第1期生の卒業を待たず慶應義塾大学に吸収されました。このため、本学は、日本で最も長い歴史を有する私立工業大学となり、今日(こんにち)もその伝統を守り続けています。大学の門をくぐった今日から、諸君は、千葉工業大学の「建学の精神」と、その継承の歴史を担うことになります。その誇りと責任を胸に刻んで、悔いのない大学生活を送られることを願っています。是非、これからの学生生活において、諸君が自己の可能性を最大限に引き出し、新しい時代と新しい課題に向けて果敢にチャレンジされることを心から期待して私の式辞と致します。

千葉工業大学御入学、おめでとうございます。
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