千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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2. 実施形態 本プロジェクトの実施形態としては,1) 2014年4月にプロジェクトの概要説明とチーム編成を行い,2) 介護施設において実習(現場教育)を行い,3) 合宿によるプロジェクトの進め方の体得,4) 中間発表での外部評価員からの評価,をうけ,各自のプロジェクト内容をブラッシュアップし,5) 最終発表会ならびに外部発表の実施によるプロジェクトの成果披露,と言う順序で行っていった.以下に詳細を述べる. 2.1 チーム編成とミーティング 2014年4月に,本年度のプロジェクトをスタートさせた.未来ロボティクス学科,デザイン科学科,プロジェクトマネジメント学科よりそれぞれ2名ずつ,計6名を1グループとして,全部で3チーム,合計18名が本プロジェクトを遂行していく.その後,グループごとにアイデアを出し合い意見交換を行っていく.所属学科が異なることだけでも,ディスカッションが上手くいかず,苦労しながら自分の意見を主張しようとしていく.議論の方法としてのブレインストーミングや具体化手法などを体得していく. 2.2 介護施設における実習 本プロジェクトの主要なポイントである.それまでは机上の空論であった部分に対して,実際の介護現場を体験し,実際にロボットを使用する予定の人達の声を集約して自分たちのアイデア作成に生かしていく.現場で働く人の直面する問題,経験を自分達の専門性と絡めて具現化するための方法を検討していく.最終目標が社会実装であるため,現場の人の話は学生には非常に厳しく伝わっていく.しかしそれは,学生にとって非常に有益な情報であり,この真剣な,また体当たり的な体験情報を基にしたグループディスカッションを通じて,各グループにおける製作物を洗練したものへと変化させていく.同時に,学生自身の介護現場に対する理解と意識も変化させていく. 2.3 中間発表会 2014年10月2日に実施した.チームごとにロボットの機能モデル,外形デザイン,ビジネスモデルについて実施してきた成果をまとめてプレゼンを行った. 中間発表会には,介護事業者,介護機器製造企業,ロボットベンチャー企業など,外部からプロジェクトを評価してもらう外部評価員を招き,それぞれ専門的な観点から詳細なコメントを頂いた.学生達には若干厳しめのコメントもあるが,それらは各自の活動が正しい方向へ進んでおり,今後の活動に対する期待の現れである,と認識できるまでに学生達は成長できている.これらの情報は,学生のみならず我々教員にとっても,今後の活動に対して非常に有益であることを再認識させて頂ける大変貴重な機会である. 2.4 最終発表会 2015年1月15日に実施した.中間発表で指摘された問題点に対して,技術的な側面,ビジネスモデル的な側面からさらにブラッシュアップした成果に関してプレゼンした.どのチームも非常に完成度の高いモデルが実現できており,プロジェクトとしての成熟度が高まっていることが分かる. 3. おわりに 学科間連携PBLカリキュラムに関して,その目的と状況について説明した.学科間を跨ぎ連携することにより,お互いの学科の長所と短所,自分たちが持っているものと持っていないものを実感できるようになる.これらは学生達にとっては,各自がもつ技術を洗練させる必要を体感するのみならず,今後社会に出て行った後に経験する他分野との軋轢や協力関係,適切なコミュニケーション方法を早い段階で学習する機会,ならびにその必要性を認識する大変良い機会になると思われる.このように,3学科間を連携した混成チームを作り,PBLカリキュラムを現場の密な協力の元に行うことが,学生の技術力,社会的な適応能力の向上に対して非常に効果的であることを実証した.今後は,現在進行中の演習科目の試行を元に,提案したカリキュラムをさらに具体化する.今後とも,学生・教員共々協力して,プロジェクトを実施していく予定である. 謝辞 本プロジェクト実施に際して,協力頂いた関係各位に感謝いたします.実施学生に有益なアドバイスを与えて頂いている(株)aba取締役の宇井吉美氏,中間発表会ならびに最終発表会において講演,審査や評価,貴重な議論などを頂いた,(株)未来機械 三宅徹氏,海内工業(株) 海内美和氏,Exiii(株) 小西哲哉氏,アローチャート研究会 石田英一郎氏,社会福祉法人千葉県福祉援護会 武石直人氏,社会福祉法人聖進會さわやか苑 永井周治氏,ユアハウス弥生 金山峰之氏,パナソニックヘルスケア 渡邊克哉氏に感謝いたします. 最後に,本プロジェクトを実際に遂行した学生諸氏に重ねて感謝いたします. 本研究に関する主な発表論文 (1) 富山健,平井成興,太田祐介,宇井吉美,佐藤弘喜,安藤昌也,五百井俊宏,久保裕史:”学科をまたぐ社会実装ロボット教育”,工学教育,vol.63, no.1, pp31-36 (2015) (2) 平井成興,富山健,佐藤弘喜,久保裕史,太田祐介,宇井吉美:“社会実装ロボット教育の試み –介護現場を対象とした事例-”,第32回日本ロボット学会学術講演会,RSJ2014AC3G1-01 (2014) 参考文献 (1) ロボット革命実現会議(官邸ホームページ), http://www.kantei.go.jp/jp/singi/robot/ (2) 富山健,平井成興,太田祐介,宇井吉美,佐藤弘喜,安藤昌也,五百井俊宏,久保裕史:”学科をまたぐ社会実装ロボット教育”,工学教育,vol.63, no.1, pp31-36 (2015) (3) 平井成興,富山健,佐藤弘喜,久保裕史,太田祐介,宇井吉美:“社会実装ロボット教育の試み –介護現場を対象とした事例-”,第32回日本ロボット学会学術講演会,RSJ2014AC3G1-01 (2014) 822015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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