千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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歩測によるルートマップ作成,鍵層の走向傾斜の計測,貝化石の採取と古環境の推定など積極的に活用している。また,2015年度は新たに銚子犬吠﨑にみられる房総半島で最も古い銚子層群,愛宕山層群の露頭(64~140 Ma)を巡検した。 3.館山赤山地下壕跡を利用した立体的地学教材 房総半島南部の地形は,鴨川地溝帯,北条地溝帯など断層による低地帯が発達し,赤山地下壕跡がある宮城地域でも大賀南方の断層で切られたような山や加賀名付近の三方を断層によって囲まれた低地など点在する。宮城地域は隆起地域にあたり,館山湾に面した丘陵地には貝の破片やサンゴを含む沼サンゴ礁として有名な隆起海岸堆積物が標高10~20 mに分布する(図2)。図2の地形図および鳥瞰図は,国土地理院の地形標高データをもとにGolden Software社製surfer 12を用いて作成したものである。 房総南端の地質は,西岬層,鏡ヶ浦層,沖積堆積物からなる。西岬層の模式地は,館山市西川名から北方の洲崎にかけての海岸沿いにみられ,後期中新世から前期鮮新世(9.9~4.18 Ma)にかけて堆積したものである。この地域での岩相は泥岩がち砂岩凝灰質泥岩互層であり,泥岩層は白色で層厚が数10 cm,砂岩層はスコリアで構成され,層厚は数cmである。鏡ヶ浦層の模式地は,赤山地下壕跡にみられ,後期中新世から前期鮮新世に堆積した火山性砕屑物からなる。宮城地域では砂がち砂岩シルト岩互層からなり,砂岩層は主に黒色で粗粒~小礫のスコリアなどで構成さる。沖積堆積物は,山地や丘陵地を囲むようにして標高約30 m以下の土地に分布し,泥まじりの中粒から粗粒の砂を主体とし,ときに貝片やサンゴの化石を含む。館山市沼付近の畑からは約6,000年前の隆起サンゴ礁が発見される。 赤山地下壕跡の内部は,風化していない新鮮な鏡ヶ浦層を観察することができる。特徴的な凝灰岩層を鍵層にして追跡すると,地層の水平方向や垂直方向の変化がわかり,地層を3次元として捉えることができる。通常,図2の写真Xで示すように地上にみられる地層境界面(エッジ)にクリノメータをあてがい,地層の走向(地層面と水平面とが交わる直線の向き)と傾斜(水平面からの伏角)を計測する。ここでは鏡ヶ浦層が典型的な単斜構造で分布し,地下壕内の通路がほぼ東西南北方向に伸びかつ水平であること,さらに図2の写真A~Cのように天井と壁面に地層が確認できることから,見かけの傾斜角()と点間の距離を計測することにより走向と真の傾斜角(A)を求めることができる。受講学生90人を前半後半の半数に分け,さらに地点A~Cの3班の15人毎に分かれ,計測した。地層の走向は概ねN60W(北から60o西方向に走る),真の傾斜はN30~40(北側に30~40o傾斜)であった。 4.その他の自然教材 図2に館山宮城地域には,沼サンゴ化石が保存されている場所やその近辺の沼地には光藻が生息している場所が点在する。この地域の地質は,約6,000年前,温暖な海底堆積層により形成し,隆起したものであることを学ぶことができる。また,沖ノ島においても海岸浸食にともない形成された洗濯岩(砂泥互層)がみられ,ここでも地層の走向傾斜および真の層厚を計測できる。本実習においては,海岸堆積物を採取し,孔径の異なる篩を用いて粒度分析を行うなど,自然教材が豊かに存在する。 図2 館山宮城地域の地形図と赤山地下壕跡の巡検地点A~C,Xと各地点での露頭の様子 34.98534.980139.835139.840139.845139.850139.85534.98034.985139.835139.840139.845139.850139.8552040606560555045403530252015105703070357020753072307030723075307530773010 m入口ABCXABCX61.3 m赤山地下壕跡赤山地下壕跡宮城沖ノ島沼サンゴ光藻光藻802015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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