千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 教育研究助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 3Dプリンターを利用した生体高分子の分子模型の作成と講義での活用 研究者: ○坂本 泰一 千葉工業大学 SAKAMOTO Taiichi 工学部 生命環境科学科 教授 河合 剛太 千葉工業大学 KAWAI Gota 工学部 生命環境科学科 教授 根本 直樹 千葉工業大学 NEMOTO Naoki 工学部 生命環境科学科 准教授 菊池 耕生 千葉工業大学 KIKUCHI Koki 工学部 未来ロボティクス学科 教授 手嶋 吉法 千葉工業大学 TESHIMA Yoshinori 工学部 機械サイエンス学科 教授 1. はじめに 近年の構造ゲノム科学の進展により,多くの生体高分子の立体構造が明らかになっている.そのため,生体分子の立体構造を見て,生命現象を分子のレベルで理解することが常識となってきており,近年の生命科学の教科書には,タンパク質などの生体分子の立体構造が多く載っている.しかし,立体的なものを平面に描かれたもので理解するのは容易ではない.次に示す図1は,DNAの二重らせん構造(B型らせん)とRNAの二重らせん構造(A型らせん)を比較したものである.「B型らせんの主溝は広くて浅く,A型らせんの主溝は狭くて深い」と学生に説明しても,実感しにくい. 一方,近年,3Dプリンターの低価格化と普及が進んでおり,様々な分野において利用され始めている.3Dプリンターで作られるものも多岐にわたり,その素材も様々なものが開発されている. そこで教育研究では,3Dプリンターを用いてタンパク質やRNAなどの分子模型を作成し,講義で学生に見たり触ったりさせることで,生体分子の立体構造と機能の関係を理解させることを目的としている. 2.研究の内容 (1) 3Dプリンター用の立体構造データの作成 構造生物学者が決定した生体高分子の立体構造の座標は,国際的な立体構造のデータベースProtein Data Bank (PDB)に登録されている.そこで,PDBのWebサイトから,生体高分子の座標ファイル(PDBファイル)をダウンロードした.また,DNAとRNAの標準的な立体構造については,ソフトウエアBioBox(ver1.2)でPDBファイルを作成した.次に,立体構造を表示する分子可視化ソフトウエアUCSF Chimera(ver1.10)1)を使用して,3Dデータの作成および3Dプリンター用のファイル(STLファイル)への変換を行った. (2) 生体分子模型の作成 3Dプリンターには, MakerBot社製Replicator Z18を用いた(図2).この3Dプリンターでは,Fused Deposition Modeling(FDM)法により,フィラメントと呼ばれる主にABS樹脂,PLA樹脂を細長くした材料を加熱し,溶解した樹脂をノズルから押出し積層していく造形法を用いている.この手法の場合,素材が溶けて垂れてしまうため,急角度図1 教科書の立体構造の図 (左:DNAの二重らせん,右:RNAの二重らせん)772015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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