千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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展開,カードの大小グルーピングの作業をそれぞれプロジェクターでの映写,階層フォルダーでのグルーピングに置きかえた点である. 4.Photographic KJ法の試行 実際のPKJ法の実施にあたっては,方法そのものの妥当性や調査目的,調査対象にあわせた各プロセスの準備や方法などを検討する必要がある.こうした基本的な要件を把握することを目的として,2014年9月5日にお台場の魅力調査を実施した.次に,学生および観光客視点での試行として,2015年10月29日に習志野市での観光ルート調査を実施した. 4-1.観光地の魅力把握(お台場) 「なぜお台場は人気があるのか探ってみよう」との問題設定のもと,研究室学生14人を2人7グループに分け,台場地区,青海地区で実施した.事前の撮影法レクチャを済ませた上で,各グループともに同仕様のデジタルカメラ2台,GPS1台を使用機材とした. 撮影内容に重複はあるものの,午前,午後計4時間の調査により計1929枚が撮影された.各調査者の平均撮影枚数は約20~50枚/地区,地区別の平均撮影枚数は,22~59枚/人となった. KJ法を実施する前のブレインストーミングでも,調査者によって意見の多少があることをふまえれば,これらの個人差も許容できるものであり,調査法の可能性が確認された. 4-2.観光ルートの現状把握(習志野市) 本学のある習志野市の都市観光ルートがどのようになっているか現状を知るためにPKJ法を用いて検討した.地域の大きな特徴として,学生がいるまち,鳥が訪れるまち,鉄道,高速道,一般道が通り抜けるまちとの認識を共有し,「観光者目線で地元のまちを歩いてみよう」との問題設定を行った.研究室学生2~3人10グループがカメラ,GPS各1台を持って,市の推奨する10のルート(観光マップ)を歩き,観光資源,観光地や周辺状況の様子を自由に撮影した.調査時間は約3時間,各グループの撮影枚数は,合計527枚であった. (1)小グループの見出し作成 ランダムに提示された写真をもとに,順次,類似写真を集め小グループを作成した.意見交換の上, 7項目の分類(歴史・文化,自然,イベント・祭,音楽・スポーツ・学び,名物・名産品,交通・宿泊,生活)および調査者意見(ネガティブ,ポジティブ)を反映させた形容詞表現と名称の組み合わせによって,これらの小グループに見出しをつけた(表1).60の小グループのうちの約3/4がポジティブな意見となっている. (2)小グループから大グループへの統合 表1に示した小グループについて,日常・非日常,人工・自然の座標軸を用い表示したものが図2である.図中,円の大きさは含まれる写真枚数を,円の位置は主観的,定性的ではあるが,座標上の程度を表している.これより,調査者の観光資源に対する意見を一目で把握することが可能 表1 マップ掲載施設等についての意見(数字:写真枚数) 図2 分類後の写真配置の一例(色区別は表1に対応) である. (3)個々の写真から得られる情報例 観光ルートを長距離,長時間歩いたこともあり,ルート中の掲示板や休憩所についても学生らしい特徴的な写真が撮影されていた.観光ルートの改善や維持管理の情報としても有用なものが見られた. 5.おわりに 本報告で提案したPKJ法を用い,現在,「学生・観光客目線で御宿町のたからを探そう」と題して,御宿町の地域環境資源調査を継続中である.また,PKJ法に準じた写真撮影を3年前期のカリキュラム実験に導入し,津田沼キャンパスの環境構造の分析に取り組んでいる. PKJ法は,写真利用に関する7つの項目すべてを網羅することができる手法であり,学生の教育手段および地域環境の調査手法として有効であると考えている.今後,様々な教育研究の場面で利用と展開を図っていく予定である. 本研究に関する主な成果(口頭発表) (1)五明美智男・長谷川満加:写真を用いたKJ法の提案と試行,平成27年度日本沿岸域学会研究討論会,茨城大学(2015.7) (2)長谷川満加・五明美智男:写真を用いたKJ法による沿岸域環境資源の分析,平成27年度日本沿岸域学会研究討論会,茨城大学(2015.7) 参考文献 1)内閣府HP:平成26年3月実施調査結果消費動向調査 2)日本写真学会(2014):写真百科事典,朝倉書店,p.397. 3)川喜田二郎(1967):発想法-創造性開発のために,中公新書136,p.220. ポジティブネガティブ観光(非日常)自然人工生活(日常)52寺社43モニュメント1古民家1貝塚1古墳51植物42公園12水辺1干潟1観光イベント22スポーツ施設31公共施設1街灯2商業施設1商店街33道1交通手段自然遠景2762015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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