千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 教育研究助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): ビジュアル教育実践のための環境写真学の構想と体系化 研究課題名(英文): An Idea of Systematizing Environmental Photography for Practical and Visual Education 研究者: 五明 美智男 千葉工業大学 GOMYO Michio 工学部 生命環境科学科 教授 1.はじめに デジタルカメラの普及により,自然・生物観察や地域環境の記録の手段として,写真撮影がより身近になってきている.著者の担当講義,実験においても,多様な写真を用いたビジュアルなプレゼンテーションは,内容やコミュニケーションにメリハリをつけ,学生の関心を高めるのに役立っている.特に,写真撮影を含む課題では,自ら観察したユニークな視点の写真も多く見られ,教育のコンテンツとしての有効性を実感しているところである.しかしながら,こうした写真利用をより積極的に取り入れようとした場合,撮影するためのテクニックなどを紹介する教本は多数あるものの,観察や調査におけるデータ化,利活用を意図した教材はほとんど見当たらないのが実状である. そこで,本教育研究では,環境分野の写真の撮影・分析・利用に関するビジュアルな教育のための環境写真学の構想と体系化を試み,学生が学ぶべき撮影手法,写真を用いた環境の分析手法,研究における写真の利用方法について検討した.ここでは,写真のデータベース化について簡単に触れるとともに,統合的な教育,研究手法としての展開を意図して開発し試行した「写真を用いたKJ法(Photographic KJ法)」(以下,PKJ法)について報告する. 2.写真利用の現状と体系化の方向性 内閣府調査1)によれば,世帯あたりの携帯電話,デジタルカメラの保有台数はそれぞれ2台,1台を超えている.ハードとしてのカメラが安価で身近になるとともに,WEB環境の発達などによってソフトとしての写真が手軽に扱えるようになったことで,日常の写真利用は様々な展開を見せている.その目的は,概ね風景や広告などの芸術写真,報道・肖像・科学写真などの記録写真,楽しむための文化写真に大別される2). 一方,教育研究ならびに産業の場での利用については,人文科学分野の歴史写真,地理写真,自然科学分野の生物写真,自然写真,景観写真,実学分野の農業写真,工事写真などがある.それぞれの写真利用の目的としては,①記録,②データ化・アーカイブ・伝承,③分析(デザイン,時空間比較,カラーイメージ,地域環境資源など),④コンテンツ化,⑤コミュニケーション(気づき,情報伝達,回想など),⑥教育(説明,啓発,現象理解など),⑦意識・関心の向上などがあげられる. これら7つの利用分類と環境分野における撮影・利用の2つを組み合わせ,環境写真学の大まかな体系ととらえることとした. 3.研究方法 3-1.写真の収集・撮影,データベース化 著者が撮影してきた10万点を超える写真を整理し,日時,場所,撮影内容および上述の利用分類でデータベース化するとともに,環境関連の写真集・報告書などの既往の写真を収集した.また,PKJ法の実施にあたっては,本学が地域連携を進める県内各市町村で新たに収集・撮影した写真などを利用した. 3-2.Photographic KJ法 野外科学の必要性から川喜田によって考案されたKJ法は,主要な発想法,情報の統合法として汎用化が進むとともに,多様なバリエーションを生みつつ様々な分野で利用されている3).本報告で提案するPKJ法のステップをKJ法と併記したものを図1に示す. KJ法からPKJ法への変更点は,ブレインストーミングをフィールド踏査・観察に,カードを写真に,またカードの 図1 KJ法とPKJ法のフロー 752015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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