千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
84/168

ースガスであるArに加え,OH・に起因するピークが得られた.さらに,いずれの有機物を含む系においてもC,H,O,OHに起因するピークがそれぞれ検出され,AICP中における有機物分解の進行が確認された.さらに,得られたOH・の発光強度はクエン酸を含む系(C6H8O7/H2O系)で最も高い値を示した.これは,クエン酸の分子構造中に含まれるOH数がその他の有機物に比べ多いため,プラズマ分解時により多くのOH・が生成したと推察される. Intensity [a.u.] Wavelength [nm] 200 300 400 500 600 700 800 900 Ar* H2O*/Ar* C2H5OH*/H2O*/Ar* CH2O*/H2O*/Ar* HCOOH*/H2O*/Ar* C6H8O7*/H2O*/Ar* OH・ C Hα Hβ O Ar Ar Fig.2 Comparison of plasma emission spectrum in each systems (without Ca and PO4 sources). 3.2 有機物種がHAP微粒子の生成に及ぼす影響 (PW:1000 W) PWが1000 Wで一定下において生成物の焼成操作を行わない場合,いずれの有機物を添加しても非晶質に起因するブロードなXRDパターンを有する生成物が得られた.各生成物を873 Kで3 h焼成操作を行った結果,いずれの条件下においても結晶性のHAP粒子が得られることが明らかとなった.ガラス板上でのHAP粒子の回収量をFig.3にまとめる.Ca/PO4/C6H8O7/H2O系でのHAP粒子の回収量はその他の有機物を含む系に比べ約3倍程度まで増加した.これは,プラズマ発光スペクトル観測の結果より,有機物分解にともなうOH・供給量の増加に起因すると推察される. Ca/PO4/H2O Ca/PO4/C6H8O7/H2O Ca/PO4/CH2O/H2O Recovery moles of HAP [μmol] 5.0 10.0 15.0 0.0 Ca/PO4/C2H5OH/H2O Ca/PO4/HCOOH/H2O PW = 1000 W After calcination t = 20 min System [-] Fig.3 Effects of organic compound types on recovery moles of HAP. 3.3 生成したHAPの粒子径分布の評価 (PW:1000 W) Ca/PO4/C6H8O7/H2O系において,供給した微細液滴(■)および得られたHAP(●)の個数基準の粒子径分布をFig.4に示す.図中の破線は微細液滴径分布および(1)式より求めたHAP粒子径の計算値を示す.得られたHAP粒子は球状微粒子であった.微細液滴および生成HAP粒子の平均径はそれぞれ6.1,1.5 µmであった.生成したHAP粒子と計算値を比較すると,平均粒子径および分布幅がほぼ一致することがわかる.この結果より,生成するHAPの粒子径分布に対し,供給される微細液滴径が及ぼす影響が大きいことが推察される. 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0.02.04.06.08.010.0dMD, HAP [µm] N/N0 [-] Accumulation [-] Generated HAP particles Minute-droplets N/N0 Accumulation Calculated HAP particles Calculation Fig.4 Comparison of size distribution of the minute-droplets and HAP spherical particles. 3.4 プラズマ照射出力がHAP微粒子の生成に及ぼす影響 結晶性HAP微粒子を得るため,PWを1500 Wまで増加させた.1500 Wで焼成操作を行わない場合に得られた生成物のXRDパターンをFig.5に示す.PWを1500 Wまで増加させることにより結晶性のHAP粒子が生成することが明らかとなった.これは,PWの増加にともなうプラズマ温度の増加に起因すると考えられる.また,得られたHAp粒子は球状の微粒子であることを確認した. 2030405060Intensity [cps] 2θ [deg.] Calcium phosphate HAP PW = 1500 W1000 WBefore calcinationCa / PO4 / C6H8O7 / H2O system HAPCalcium phosphate Fig.5 Effects of RF incident power on XRD pattern of HAP. 4. 結 言 1) AICP中にCa,PO4,OH源を微細液滴として導入することでHAPの球状微粒子が得られる. 2) OH基を多く含むクエン酸を添加することでHAPの回収量が約3倍に増加する. 3) 生成するHAP粒子径は微細液滴径に依存する. 4) RF照射出力を1500 Wまで増加させることで焼成操作を行わず結晶性のHAPが生成する. [引用文献] 1) 工藤, 和田, 松本, 尾上:日本海水学会第6回学生発表会要旨集,O-04, P-02 (2015) 2) 工藤, 和田, 松本, 尾上:日本海水学会第66年会講演要旨集,O-14,P-27YS (2015) 722015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です