千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/8/4 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文):微細なプラズマ-液-固接触界面反応場を利用したハイドロキシアパタイト薄膜の合成 研究者:和田 善成 千葉工業大学 WADA Yoshinari 附属研究所 共同研究員 1. 緒 言 ハイドロキシアパタイト((Ca10(PO4)6(OH)2);以下HAP)は生体親和性に優れ,高い吸着性を示すことから人工骨や歯のインプラントなどの代替用生体材料や化粧品などに多く用いられる.しかし,材料としてのHAPは機械的な強度に乏しいため,強度の高い金属材料等の表面にHAP微粒子を積層させた薄膜を形成させるなど材料の複合化が求められている.一般的にHAPの合成にはリン酸化および水酸化処理に加え,熱処理を行う多段操作が必要とされる.本研究では,HAP微粒子生成法に関する基礎検討として,Ca源,PO4源に加え,OH源としての水を含む原料溶液を微細液滴化し,Ar熱プラズマを接触させる大気圧プラズマ/微細液滴複合晶析法の開発を行った.これにより,1)水のプラズマ分解により生成するヒドロキシラジカルOH・を起点とした酸性溶液中からのHAP生成促進,2)液滴周囲の微細な気-液界面での核発生にともなうHAP微粒子の生成,および3)プラズマ熱源による生成HAPの結晶性向上の同時進行が期待できる.さらに,プラズマ中に導入する水溶液にOH基を有する有機物を添加することで,有機物分解を利用したOH源の供給によりHAp生成のさらなる促進が期待できる1-2). 本稿では,導入する有機物の種類およびプラズマ照射出力が得られる生成物物性に及ぼす影響について報告する. 2. 実験装置および方法 2.1 微細液滴原料溶液の調製 硝酸カルシウム(Ca(NO3)2),リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4),および有機物の濃度がそれぞれ0.5,0.3,0.03 mol/lの混合溶液に硝酸(HNO3)を添加し,水溶液pHが2.0の混合水溶液を調製した.有機物にはクエン酸(C6H8O7; C3H4(OH)(COOH)3),エタノール(C2H5OH),ホルムアルデヒド(CH2O),ギ酸(HCOOH)を用いた. 2.2 実験装置 反応ガス供給部,微細液滴発生・供給部,大気圧誘導結合プラズマ(AICP)発生・反応部(Riverbell Inc.),生成粒子付着・回収部で構成される大気圧流通式反応晶析装置を用いた.微細液滴発生器には超音波方式のネブライザーを選択した.プラズマ発生に用いる微細液滴を含む気-液二相流体,プラズマソースガス,冷却ガスをそれぞれ供給し,石英トーチ外周に設置した誘導コイルに40.68 MHzの高周波を付与することでプラズマを発生させた.その際,照射出力PWは1000 - 1500 Wで変化させた. 2.3 実験操作 2.1項で調製した混合溶液を微細液滴発生部で液滴化し, Fig.1 Experimental apparatus. Arをキャリアガスとして0.52 mmol/sでAICP発生・反応部に供給した.その際,別経路から供給されるAICPソースガスのArモル流速は10.4 mmol/sであり,供給する冷却ガスのN2モル流速は22.3 mmol/sとした.生成粒子は装置下部に設置したガラス板へプラズマを20 min照射することで付着・回収した.得られた粒子が非晶質の場合には873 Kで3 hの焼成操作を行った.微細液滴供給中のプラズマ状態はマルチチャンネル分光器(Hamamatsu Photonics K.K.)を用いた発光スペクトル測定により評価した.生成物の同定はXRD法により行った.粒子の形状・粒径はSEM観察により評価した. 2.4 生成粒子径分布の予測計算 微細液滴とAICPとの接触反応によりHAP粒子が生成する場合,単位液滴当たりに生成するHAPの粒子径分布を予測した.反応場へ供給される単位微細液滴中に含まれるCa源が全て1粒のHAP粒子に転換されると仮定し,供給される微細液滴径分布から(1)式を用いて生成粒子径を算出した. dHAP43(dMD)3CCa1MWHAP3 (1) ここで用いた文字変数は,dMD:微細液滴径,dHAP:HAP粒子径,CCa:溶液中のCa濃度,α:HAP中のCa組成比,MW:HAPモル質量,ρHAP:HAPの比重である. 3. 実験結果および考察 3.1 有機物種を変化させた場合におけるプラズマ発光スペクトルの比較(PW:1000 W) AICP反応場中での有機物分解にともなうOH・の生成を評価するため,有機物のみを含む水溶液の微細液滴をAICP中へ導入した.PWが1000 Wにおいて各有機物を含む系で得られた発光スペクトルの観測結果をFig.2に示す.有機物を含まない水の微細液滴を導入する系(H2O系)では,AICPソ712015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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