千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/8/4 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 非金属カーボン触媒材料を用いた酸素還元活性メカニズムの解明 研究課題名(英文): Analysis of oxygen reduction activity mechanism with a non-metallic carbon material 研究者: ○鎌田 智之 千葉工業大学 KAMATA Tomoyuki 附属研究所 共同研究員 1. はじめに カーボン材料は優れた耐摩耗性や電気伝導性から様々な分野で利用されている。特に、優れた電気的特性を利用して電極材料として注目されており、カーボン材料は燃料電池の負極材料として研究されている。燃料電池の研究では、その電極反応の中でも酸素還元活性(ORR)が重要とされており、従来の電極ではPtを担持した材料が用いられている。しかし、近年の貴金属の枯渇、価格の暴騰などから、貴金属を用いない負極材料への要望が高まっている。貴金属を用いないカーボン系負極材料としては窒素をドープしたカーボン材料の研究が幅広く行われている。1) 特に、カーボンナノチューブに極微量の窒素をドープした材料においては、Pt担持カーボン電極と同等のORR活性を示した研究例がある。また、同じ様なカーボン材料のグラフェンに極微量の窒素をドープした窒素ドープグラフェンも優れたORR活性を示した研究例もある。しかし、これらの窒素ドープカーボン材料中の詳細な電極構造と電極活性の関係については十分に明らかとなっていない。さらに、これらのカーボン材料のORR活性メカニズムも、様々な考察がされており未だ解明されていない。そこで、本研究ではORR活性メカニズムの活性を目的として、極低濃度の窒素をドープした窒素ドープカーボン膜を用いて電極構造と電極活性の関係を明らかとすることとした。 2.研究の内容 (1)実験方法 アンバランスドマグネトロン(UBM)スパッタ法を用いてSi基板上に窒素ドープカーボン薄膜(N-UBM膜)を成膜した。ターゲットには焼結カーボンを用い、スパッタガスはArガスと窒素ガスの混合ガスを用いた。成膜時のガス圧は0.6 Paで統一し、スパッタガス中の窒素組成を0~3.3%まで変化させた。各種窒素濃度のN-UBM膜の窒素含有量と結合状態はX線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy XPS:Shimadzu/Kratos Model AXIS Ultra)を用いて測定・解析を行った。接触角の測定には、接触角計(Drop Master DM 300:Kyowa Interface Science Co., Ltd.)とMilli-Q水を用いた。表面粗さの測定には、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy AFM:SII Nano Technology, Inc.)を用いた。電極評価には、ポテンショスタット(ALS/CHI 730C:CH Instruments, Inc.)によるサイクリックボルタンメトリー法を用いた。電位窓の評価では、0.05 M H2SO4、電極活性の評価には緩衝液として1.0 M KClを、ORR活性の評価には0.5 M H2SO4を用いた。 (2)実験結果と考察 表1に成膜したN-UBM膜の窒素含有量、結合状態、O/C比(元素比)、接触角、表面粗さの結果を示す。スパッタガス組成の増加に伴い、窒素の含有量が増加した。この窒素の含有量の増加に伴い、C1sではsp2結合が減少し、sp3結合が増加した。また、N1sでは窒素含有量の増加に伴い、graphite-like結合が減少し、pyridine-like結合が増加した。しかし、N-UBM膜中のO/C比は、窒素含有量が変化しても0.02程度で大きな変化は見られなかった。 次に、電極特性に影響を与えると考えられる接触角と表面粗さの測定を行った。N-UBM膜の接触角に大きな変化は無く、全ての試料で接触角が70°を超えており、疎水性の表面であることが明らかとなった。また、表面粗さも接触角と同様に大きな変化は見られず、全ての試料で1 nmを下回る、非常に平坦性の高い電極表面であった。これらのことから、UBMスパッタ法を用いてN-UBM膜を成膜することによって、親疎水性や表面粗さなど表面物性は変化させずに電極の結合状態のみが変化していることが明らかとなった。 表1 N-UBM膜の窒素含有量と表面物性値 2015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    67

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