千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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図1 前腕部冷却条件における等尺性掌握運動時の筋酸素代謝動態および筋電図の同時計測の実験セットアップ. 測定したデータをもとに,各運動強度における筋酸素動態や筋電図の解析を行った.筋電図については,筋電図積分値の解析に加えて,周波数解析を行い,中央パワー周波数を算出した.20~50%MVCの運動強度の中で最も顕著に組織温度低下の影響が見られた20%MVC運動強度の結果を図2に示した.組織温度の低下に伴う中央パワー周波数の低周波化が示されたが,これは組織温度低下に伴う筋線維伝導速度の低下を反映していると考えられた.また,特に尺側手根屈筋において,組織温度の低下に伴い筋電図積分値の増加が見られた.これは,筋線維の温度低下によって,筋線維の単位あたりの出力が制限された結果,同じ発揮筋力を維持するために,動員筋線維数の増加が生じたことを反映していると考えられる.これらの結果は,総説にまとめた先行研究の結果とも一致しており,本研究室において,筋電図による筋線維動員状況の評価手法について構築することができた. 0102030405060708090中央パワー周波数( Hz )指屈筋尺側手根屈筋0.000.010.020.030.040.050.060.07TN33312927筋電図積分値( V・s)前腕部組織温度(℃) 図2. 前腕部組織温度の低下と等尺性掌握運動時(20%最大強度)の筋活動の変化. 3)トレーニング設定の検討 運動強度の設定やトレーニング期間の設定について,トレーニング科学的な視点からの示唆が必要であったため,筑波大学体育系の水泳研究室において研究打合せを行った.筋肉を冷却した状態で運動を行う際の解糖系代謝や速筋線維の動員を意図したトレーニングであるため,乳酸閾値強度でのトレーニング実施が適当と考えられた.今後,本研究テーマに関連して,共同研究を行っていく. 3.まとめ 骨格筋冷却による筋代謝制限下で行う運動トレーニング手法の開発を目的とし,寒冷環境における筋活動の文献レヴューと,骨格筋冷却を行った際の筋代謝状態および筋活動を評価するための予備実験を行った.また,トレーニング設定の検討を行った.申請準備支援を受けた研究課題について,平成27年度に科研費が採択された. 本研究に関する学会発表,招待講演,総説 (1) 若林斉.骨格筋の繰返し冷却に伴う組織代謝の適応現象.日本生理人類学会体温調節研究部会,札幌,2014.10.27 (2) Wakabayashi H. Adaptation in human skeletal muscle metabolism after repeated intense local tissue cooling. The International Symposium on Human Adaptation to Environment and Whole-body Coordination,神戸, 2014.3. 14-16, Proceedings p.27. (3) 若林斉.ヒト骨格筋代謝機能に見られる寒冷適応,シンポジウム「代謝機能からみた全身的協関と適応能」.日本生理人類学会第72回大会,札幌,2015.5.30-31, 日本生理人類学会誌,Vol. 20 特別号(1): p.32,(招待講演). (4) Wakabayashi H, Oksa J, Tipton MJ. Exercise performance in acute and chronic cold exposure. The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine 4(2): 177-185, 2015(Invited Review). 参考文献 (1) 人間科学の百科事典,日本生理人類学会編,若林担当箇所:筋p.65-66,温度p.282-284,体温p.536-537,皮膚温p.538-540 (丸善出版),2015 (2) 若林斉.前腕部の繰り返し冷却に伴うハンドグリップ運動時骨格筋酸素動態の適応,デサントスポーツ科学34:125-131,2013 採択された科研費 平成27~29年度:科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究),骨格筋冷却による筋代謝制限下で行う運動トレーニング手法の開発,若林斉(研究代表者),引原有輝,金田晃一(研究分担者),課題番号15K12671,スポーツ科学細目. 662015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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