千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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((log())(log())) を表すとする。ここで、 ,log はそれぞれ x を底とする指数・対数関数の m 回反復合成を表す。以上の規約により、次元数の一部が実関数に対応することが分かる。 定理1 このような次元数と関数の対応は well-defined であり、性質(4)-(14)を満たす。 次元数 A が関数 () に対応しているとき、A~() と書く。 例 (1) 2~2,5~5 (2) 次元数の等式 2×4=8 は関数の等式 2×4=8 に対応している。 (3) 3⋏1~()()=3=9 さて、2項演算には単位元と零元が考えられる。e が2項演算∗ の単位元であるとは、任意の元 a に対して a∗e=a を満たすことであり、q が零元であるとは任意の元 a に対して a∗q=q を満たすことである。+ の単位元は 0 であり、× の単位元は 1, 零元は 0 である。また、⋏ の単位元は 1,零元は 1 である。このように、次元数の各演算には単位元と零元が存在する。なお、+ の零元は 0(~log0) であるが、これは実関数には対応していない。各演算の逆演算を次のように定める。A~(),B~()のとき、 A−B~f(x)−g(x) ⁄~f(x)/g(x) /⁄~()() /~((log())/(log())) と定める。各演算の零元による逆演算は認めないこととする。 なお、⋏ の逆演算は / なので注意を要する。関数の代入に関して、次の事実が成り立つ。 定理2 A~(),B~() で、A に含まれる2項演算が +,× とそれらの逆演算だけからなるとき、合成関数 f∘g(x) は A に含まれる数とその次元 を ×(1⋏1) に分解し、 その中の 1 を B で置き換えたものに対応している。 定理3 s,r が実数で、s>0,s≠1 のとき、f(x)∼s⋏1 と定めると、f(x)∼s⋏1 が成り立つ。 3. 関数方程式の例 ここでは、2 階関数方程式 f(x)=() を解くことを試みる。ここで、r,s は実数であり、r≥−1,s>0,s≠1とする。方程式を次元数で表すと f(x)∼s⋏1 だから、定理3より f(x)∼s⋏1,=1±√1+ が解であることがわかる。すなわち (x)=() が解である。 4. 今後の課題 既発表論文にあるとおり、関数方程式が未知関数の反復合成を含んでおらず、既知関数が 1 の形の次元数であれば、次元数を用いて比較的容易に解ける。しかし、階関数方程式ではなかなか簡単にはいかない。このような困難を克服していくことが今後の課題である。 本研究に関する主な発表論文 (1) H. Izumi, Application of dimensioned numbers to functional equations, ESAIM: PROCEEDINGS AND SURVEYS, November 2014, Vol. 46, p. 146-162. (2) H. Izumi, Maple Package itsol for Formal Solutions of Iterative Functional Equations, ACM Communications in Computer Algebra, February 2015, Vol. 48, p.192-196. 参考文献 (1) M. Kuczma, B. Choczewski, R. Ger, Iterative Functional Equations, Cambridge University Press, 1990. 622015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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