千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 次元数を用いた階関数方程式の解の構成 研究課題名(英文): Construction of solutions to iterative functional equations with dimensioned numbers 研究者: ○泉 英明 千葉工業大学 IZUMI Hideaki 情報科学部 教育センター 准教授 1. はじめに 1つの関数を別の関数の2回以上の反復合成で表すことができるか、という問題は古くから研究されており、膨大な文献がある。これを定式化すると、区間 で定義された関数 :→ が与えられたとき、等式 ()=(),∈ を満たす関数 :→ を求めよという問題になる。この等式を 階関数方程式と呼ぶことにする。ここで は正整数であり、()=(),()=(()),=1,2,⋯ とする。上の 階関数方程式の解 ()を () の 1⁄ 階関数と呼ぶことにする。どのような条件の下で階関数方程式を考えるかによって、研究方法は大きく変わる。条件の例として、以下のものがある。 (1) (),() ともに何の条件も課さない。 (2) (),() ともに連続である。 (3) (),() ともに微分可能である。 (4) (),() ともに実解析的である。 筆者は(4)のケースに興味を持っており、推進項を用いた方法、次元数を用いた方法、数列の漸化式を用いた方法を考案してきた。本報告では、次元数を用いてある種の階関数方程式の形式解を求めることを試みる。 2. 次元数 次元数はもともと、図形の長さ・面積・体積等を取り扱うために著者が導入した量である。その後、次元数はある種の関数に対応しており、次元数の操作により関数を簡便に扱うことができることに気付き、関数方程式を解くことに利用できることが分かった。 次元数は、次の条件を満たす記号の集合である。 (1) 任意の実数 s∈ℝ は次元数である。 (2) A が次元数であるとき、実数 s に対して は次元数である。 (3) 2項演算の列 +(=⋏),×(=⋏),⋏(=⋏),⋏,⋏,⋯ があり、任意の次元数 A,B に対して A+B,A×B,A⋏B,⋯ は次元数である。 の形の次元数を単純であるといい、s をこの次元数の頭部、A をこの次元数の次元という。次元数には次のような演算のルールがある。a,b を実数、nを正整数、m ≥−1を整数、A,B,Cを任意の次元数とする。 (4) +=(+) (5) ×= (6) A⋏1=1⋏==××⋯× (個の積) (7) A⋏1=1⋏=⋏⋏⋯⋏ (個のハイパー積) (8) A⋏1⋯=1⋯⋏=⋏⋏⋯⋏ (個の 次ハイパー積) (9) A⋏=B⋏ (交換法則) (10) (A⋏)⋏=⋏(⋏) (結合法則) (11) (⋏)⋏=(⋏)⋏(⋏) (分配法則) (12) 1⋏1=1⋏ (移動律) (13) 0=0 (零化) (14) =A 次に、次元数に実関数を対応させることを考える。まず、実定数は定数関数に対応させる。また、s を実数、A が区間 で定義された関数 () に対応しているとき、 を区間 ∩(0,∞) で定義された関数 s ∙x() に対応するものとする。次に、次元数 A,B について、 A が区間 で定義された関数 (), B が区間 J で定義された関数 () のとき ∩J≠∅ ならば、 A+B は区間 ∩J で定義された関数 ()+(), A×B は区間 ∩J で定義された関数 ()() を表すとする。 さらに、(),() が正値関数のとき A⋏ は区間 ∩J で定義された関数 (())(()), m ≥1 で log(),log() が正値関数のとき A⋏ は区間 ∩J で定義された関数 612015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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