千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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を加え,50 oCで1時間撹拌し完全に溶解させた後,温度を上げ95 oCで24時間撹拌した.1,2-ジメトキシエタンを減圧留去した後,ジクロロメタン20.0 mLと2.00 Mの塩酸を加えてpH 3にした後,抽出を行った.有機層に飽和炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH 8にした後,抽出を行った.有機層に硫酸ナトリウムを加え,1時間撹拌して脱水した.硫酸ナトリウムをろ別した後,溶媒を減圧留去して粗成生物を得た.粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1)を用いて精製した.ジクロロメタンと少量のヘキサンを用いて再結晶を行い,配位子2を白色結晶(0.498 g,77%)として得た.化合物の同定は1H NMR,FAB-MS,元素分析を用いて行った. (3)結果考察 配位子2に各種金属塩を加えて,蛍光スペクトルを測定した(図2).銀イオンを添加した時に蛍光強度の増大が観測された.カドミウムイオン,亜鉛イオンでは蛍光強度の減少が見られ,鉄(Ⅱ)イオン,銅イオン,および水銀イオンでは消光した. 目視で銀イオンの存在を発光により確認できるか確かめるため,測定に使用した溶液にUVランプ(365 nm)を当てると,配位子2はほとんど蛍光を示さないが,銀イオンを加えた溶液では淡青色の発光を示した(図3). 2のAg+錯体の構造は,単結晶を得られていないため,コールドスプレーイオン化質量分析法によって構造推定を行った.フラグメントイオンピークの解析より,配位子:Ag+ = 2:1,4:2,6:3に由来するピークが観測されたため,配位子:Ag+ = 2:1錯体を形成し,その2:1錯体のユニットが凝集した構造をとっていると推測した(図4). 3. まとめ これまでに得られた配位子1と同様に,配位子2でも,銀イオン特異的な発光現象を示したが,配位部位のピリジンの窒素の位置を変えることによって,発光波長が短波長へシフトし,蛍光強度が低下した.これにより,効率よく凝集誘起発光を起こすためには,発色団と配位部位が直線的な配位子が最適であることが明らかになった. 今後は今回得られた結果を元に,凝集誘起発光が起こるメカニズムを計算化学的な手法や各種測定を用いて詳細を明らかにしていきたい. 本研究に関する学会発表 (1) 池田茉莉,桑原俊介,李心星,幅田揚一,ピリジン配位子-銀錯体による凝集誘起発光,第12回ホスト・ゲスト化学シンポジウム,東京,2014.6 (2) 池田茉莉,李心星,桑原俊介,幅田揚一.凝集誘起発光を示すピリジン配位子-銀錯体の発光特性,第25回基礎有機化学討論会,仙台,2014.9 参考文献 (1) Kowalski, K. et al., New J. Chem. 33, 2009, 598. (2) Hong, Y. et al., Chem. Commun. 2009, 4332. (3) Xie, Y.-Z. et al., Dyes and Pigments 2013, 467. (4) Yea, J. H. et al., Tetrahedron Lett. 53, 2012, 593. (5) Mazumdar, P. et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 16, 2014, 6283. 図2. 配位子2に各種金属イオンを添加した時の蛍光スペクトル([2]=2.5x10-6 M,[Mn+]=2.5x10-3 M, ex=348.5 nm,溶媒:メタノール). 図3. UVランプを当てた時の配位子2と2+Ag+の溶液([2]=2.5x10-6 M,[Mn+]=2.5x10-3 M, ex=365 nm,溶媒:メタノール). 図4. 2のAg+錯体の推定構造 602015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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