千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目:科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 凝集誘起発光特性を利用したレアメタル代替有機発光材料の開発 ―配位子構造の最適化― 研究者: ○池田 茉莉 千葉工業大学 IKEDA Mari 工学部 教育センター 助教 1. はじめに 携帯端末の普及に伴い,高い発光効率,高い耐久性,低コストを目指した発光材料の開発が盛んに行われてきた.中でも有機化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)に用いる発光材料の開発は次世代の材料として注目を集めている.最近の国際情勢の変化により,従来型の発光材料に欠かせないレアメタルの供給不安が問題となっている.レアメタルとは埋蔵量が少ない金属のことであり,産出国が偏っている,採掘が困難であるなど様々な理由から入手が難しい金属である.このような背景のもと,レアメタルを必要としない発光材料の開発が進められているが,従来型の発光材料と比較して発光特性が劣っており,耐久性や複雑な合成やコスト面での問題など課題は多く残されている. 筆者はこれまで新しい機構に基づいた金属イオンセンサーの開発を行ってきた.この研究を推進していく中で,置換基としてトリフェニルアミン,配位部位として4-ピリジンを導入した配位子11と銀イオンからなる錯体が凝集誘起発光を示すことを見出した.この知見を応用することで有機発光材料の開発を着想した. 2. 研究内容 (1)研究目的 一般に溶液中で発光を示す有機化合物またはその金属錯体は,濃厚溶液中や固体中では凝集体を形成して消光する場合が多いが,近年,凝集することで発光する凝集誘起発光(Aggregation-Induced Emission(以下AIE))が報告された2.これは一般に,凝集することで分子の回転運動が抑制されて起こるとされている.(図1).以来,AIEを利用した蛍光センサーやナノマテリアルが注目を集めるようになった.AIEは亜鉛イオン3,銀イオン4,水銀イオン5などの金属錯体で起きることが報告されており,これを応用することができれば,レアメタルを用いなくても有機発光材料を開発することが可能であると考えた. 本研究では,凝集誘起発光を効率よく起こす配位子の構造最適化を行うため,様々な置換基を導入した配位子の合成を行い,8種類の配位子を合成した.合成した配位子と各種金属塩との錯体を合成し,溶液中での錯体構造と発光挙動との関係を各種スペクトルを測定して調べた.置換基の嵩高さや電子系の広がり,静電反発がどのような影響を与えるかを明らかにし,配位子構造の最適化を行った.ここでは合成した配位子の中で,配位部位の与える影響を探るため,配位部位を3-ピリジンに変えた配位子2について報告する. (2)配位子2の合成 50 mLの二口ナスフラスコに1,2-ジメトキシエタン20.0 mL,4-(ジフェニルアミノ)-フェニルボロン酸 (0.639 g, 2.21 mmol),3-ヨードピリジン(0.413 g,2.01 mmol),テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.0693 g,0.0600 mmol),炭酸ナトリウム水溶液(1.50 M,4.00 mL) 図1. 典型的なAIEのモデル. 592015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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