千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 非漢字系孤立語のテキスト情報処理に関する研究 研究課題名(英文): A Study on the Text Information Processing of Isolating Language 研究者: ○鴻巣 努 千葉工業大学 KONOSU Tsutomu 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科 教授 1. はじめに 本研究では(1)読解における形態処理,音韻処理および意味処理の特徴,(2)読解における視覚探索誘導のトリガー,(3)単語同定のプロセスについて着目した.特に非漢字系言語として話者が多いタイ語を調査対象とした.Winskel(2011)は,タイ語における子音母音,声調記号を変化させたテキスト読解について,読みの特性を移動窓枠法によって検証している.音韻と綴りを変化させた実験から,タイ語読解においては,同音子音による阻害効果は同型子音による効果よりも小さく,目標語の同定に対する音韻情報の関与が小さいことを示している.さらに,水平方向の母音を転置した単語および声調記号を転置した単語による実験からも,タイ語読解における音韻情報の関与が低いことが示されている.また,タイ語において声調記号は単語のセグメンテーションに有意に機能しており,語の空白に依存せず単語の同定に寄与することが示されている.ここからタイ語における単語同定には音韻的情報の関与度が低いことが示唆されるが,Winskel(2011)はタイ語の書写形式にのみ着目しているため,本研究ではタイ語の言語的特徴をふまえて単語同定のプロセスについて検討した. 2. 眼球運動計測および単語有意効果による検討 (1)注視回数による検討 3種類の難易度の刺激文章を用いて文章読解時の眼球運動を測定し,1文字あたりの平均注視回数を算出した.また,読了までに出現した注視点の平均注視時間を求めた.さらに,文章読解時の視覚探索誘導の特徴を探るため,注視点分布に基づき,注視位置が語頭,語中,語末のいずれに多いかについて分析した. 各難易度の1文字あたりの平均注視回数(times/character)は,低難易度0.04,中難易度0.06,高難易度0.12であった.また,注視回数における難易度の影響を分析するために分散分析を行った結果,難 易度の効果が有意であった(F(2,21)=10.67,p<0.01).Tukeyを用いた多重比較によると,低難易度と高難易度(p<0.01),中難易度と高難易度(p<0.05)に有意差が認められた.つまり,文章の難易度が上がると,1文字あたりの注視回数が増加した. (2)平均注視時間による検討 各難易度の平均注視時間(msec/character)は,低難易度28.00,中難易度42.04,高難易度90.67であった.また,注視時間における難易度の影響を分析するために分散分析を行った結果,難易度の効果が有意であった(F(2,14)=165.00,p<0.001).Tukeyを用いた多重比較によると,低難易度と中難易度(p<0.01),低難易度と高難易度(p<0.001),中難易度と高難易度(p<0.001)に有意差が認められた.つまり,文章の難易度が上がると,1文字あたりの注視時間が増加した. (3)注視点の出現傾向による検討 各注視位置における1文字あたりの注視回数(times/character)は,語頭0.20,語中0.15,語末0.25であった.注視回数における注視位置と難易度の影響を分析するために二元配置の分散分析を行ったが,難易度と注視位置の交互作用(F(4,6)=0.65,n.s.),難易度の主効果(F(2,6)=3.67,n.s.)に有意性は認められなかった.しかし,注視位置の主効果は有意であった(F(2,2)=14.66, p<0.01).Tukeyの多重比較によると,語中と語末に有意差が認められた(p<0.05).語頭の影響も少なからず認められるが,主として語中よりも語末で有意に注視回数が増加する.つまり,単語中の注視は文章の難易度に依存せず,注視位置の影響を受け,語中よりも語末で有意に注視回数が増加することが分かる. (4) 単語同定におけるドーサコットの機能に関する検討 552015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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