千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
64/168

業速度を変化させて行った一般職業適性検査の結果)を用いて主成分分析や判別分析(判別的中率68.75%)を行ったが両グループを分類することは出来なかった. (2) 動作分析 一般職業適性検査により得られた値だけでは,作業者の評価を説明できる指標が得られなかった.そこで,一般職業適性検査を行う間の動作を詳細に分析した.動作分析には,動作分析ソフトウェア(JASI社製Operation Research Software (OTRS) Version3.22)を用いた.ただし,動作分析を行ったのは検査中の手元が正確に録画された動画が1検査以上存在する被験者19名(作業が速いと評価された作業者10名,作業が遅いと評価された作業者9名)とした. 4種類の検査の全ての動作分析を行った結果,「組み合わせ検査」および「差し替え検査」では,一部の作業(要素作業)の平均作業時間で統計的有意差が認められた. 図2は,「組み合わせ検査」における各グループの要素作業時間の平均値を示したものである. 現場の班長から作業が速いと評価されているグループ,遅いと評価されているグループの要素作業時間値を有意水準5%のt検定を行ったところ,『鋲と座金を抜き取る作業』の時間値においてt値が -2.31となり,統計的有意差が認められた. また,図3は,「差し替え検査」における各グループの要素作業時間の平均値を示したものである.『行間移動作業』の作業時間では,グループ間でほとんど差が見られなかった.『差し替え作業』に着目し,各グループの平均作業時間値をもとに有意水準5%のt検定を行ったところ,t値が -3.75となり,統計的有意差が認められた.この結果から,今回行った検査の動作分析により得た一部作業の時間値と現場管理者による被験者に対する主観評価と一致することが分かった. そこで,この結果に基づき,前述した時間値を判別要素として両グループの判別分析を行ったところ,判別式 (1)で判別的中率100%の結果を得ることが出来た. y= - 28.641x1 - 2.205x2 + 34.195 (1) x1: 差し替え検査の一部作業時間 (抜き取り作業時間) x2: 組み合わせ検査の一部作業時間 (行間移動を除いた差し替え作業時間) なお,「分解検査」および「差し込み検査」においては,動作分析による統計的有意差は認められなかったため,結果は省略する. 4.まとめ 本研究では,実際に工場に勤務している作業者を対象として,作業者の評価,すなわち現場の班長によって「作業が速いと評価されている作業者」,「遅いと評価されている作業者」とされている両グループから抜粋した被験者の作業特性および作業能力を検査した.検査結果のデータ分析より,従来から使われている一般職業適性検査のM値・F値の値のみでは両グループの値を用いての統計的な有意差を検定では得ることが出来ず,作業者の作業特性および作業能力を判定するのに不十分であると思われた.そこで,検査の様子を録画した動画を用いて動作分析を行った. 動作分析を行った組み合わせ検査では,細分化した要素作業の一つである『鋲と座金を抜き取る作業』から「作業が速いと評価されている被験者」,「遅いと評価されている被験者」の両グループに差が見られた.よって,従来の職業適性検査の結果(M値・F値)と作業速度に関連性が認められない場合でも,動作分析で得た詳細なデータでは,現場で班長の作業者に対する評価と一致することが明らかになった. 今後の課題としては,本検査を他業種でも実践すること,別の実験内容でも同様の関連があるかどうかを調査することが重要であると考えられる. 本研究に関する主な発表論文 (1) S. Taki, Y. Kajihara, A. Yamamoto: “Analysis of Workers’ Work Characteristics in Business Machinery Production Line”, Proc. of the 12th International Conference on Industrial Management, pp.55-59, 2014. 参考文献 [1] 日経BP社,人材力再強化,「日経ものづくり」2014年4月号,日経BP社,pp.42-45,2014. [2] 厚生労働省職業安定局:「厚生労働省編一般職業適性検査 (事業所用) 手引」,雇用問題研究会,2003. 00.511.522.53鋲と座金を抜き取る組み合わせる差し込む作業時間(sec)作業が速いと評価されたグループ作業が遅いと評価されたグループ図2 組み合わせ作業の要素作業時間の平均値の比較00.20.40.60.811.21.41.6差し替え作業行間移動作業作業時間(sec)作業が速いと評価されたグループ作業が遅いと評価されたグループ図3 差し替え検査の要素作業時間の平均値の比較 522015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です