千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 製造業における技能伝承と人材育成の体系化に関する研究 研究者: ○滝 聖子 千葉工業大学 TAKI Seiko 社会システム科学部 経営情報科学科 准教授 1. はじめに 近年,日本の製造業では諸外国企業に対抗するために技能伝承と人材育成の期間短縮が求められているが[1],特に中小企業では専門部門が設置されていないことが多く,具体的な取組みがほとんどなされていないのが現状である.この問題を解決するためには,従業員採用後のできるだけ早い時期に個人の作業適性能力を把握し,その能力に応じた人員配置と人材育成を行うことが重要だと考えられる. また,実際の作業工程では,複数の作業者がほぼ同一の作業を行っていることが多く,作業者は現場の管理者によって「作業が速いと評価される人」と「作業が遅いと評価される人」に分かれている.しかし,これまで現場の作業評価と作業特性の関連についての調査結果はほとんど報告されていない. そこで,本研究では,実際にある事務機器生産ラインで同一作業に従事している作業者を被験者として,一般職業適性検査[2]の測定結果と現場での評価に関連が認められるかを調査する.さらに,検査中の動作を詳細に分析することにより,作業特性と作業者の評価との関係について考察する. 2.実験方法 一般職業適性検査の結果と作業者の現場での評価に関連があるかを調査する.そして,一般職業適性検査を受ける間の動作を詳細に動作分析することにより,作業者の評価を説明できる動作を見出すことを試みる. (1) 一般職業適性検査(GATB)[2] 一般職業適性検査は,多くの職業分野において個人が仕事を遂行する上で,必要とされる9種の能力(適性能)を測定することにより,能力面から見た個人の特徴の理解や個々の職業に対する適合性の評価を行うための情報を提供することを目的としたものであり,主として事業所における採用,配置,職種転換,あるいは教育訓練,能力開発などの雇用管理の場面で用いるものである. 一般職業適性検査の器具検査は,「差し込み検査」「差し替え検査」「組み合わせ検査」「分解検査」の4種類で,「手腕の器用さ(M値)」および「指先の器用さ(F値)」が測定できる.「手腕の器用さ(M値)」とは,手腕を思うままに巧みに動かす能力,物を取り上げたり定められた位置関係で正確に素早く持ち替えたりするなどの手腕や手首を巧みに動かす能力と定義されており,「差し込み検査」「差し替え検査」の合計得点で表わされる.また,「指先の器用さ(F値)」とは,速く,しかも正確に指を動かし,小さいものを巧みに取り扱う能力であり,「組み合わせ検査」「分解検査」の合計得点で表わされる.どちらも得点が高いほど,能力が高いことを示す. (2) 被験者 被験者は,実際に事務機器製造企業の工場において組立作業に従事している作業者32名(男性17名,女性15名,平均年齢20.7歳,最高齢28歳,最年少17歳,標準偏差2.37)とする.これらの作業者は,各現場の班長によって「作業が速い」または「作業が遅い」と評価されているグループ(各16名)に分類される. 3.実験結果および考察 一般職業適性検査によって測定された被験者のM値・F値の分析と検査中の動作分析とにより,現場で「作業が速いと評価されている人」のグループと「遅いと評価されている人」のグループを判別することを試みた. (1) M値・F値の分析 一般職業適性検査によって測定された被験者のM値・F値から得られる両グループの平均値を図1に示す.各グループの平均値については,統計的有意差(有意水準5%のt検定)は認められなかった. 他にも,各被験者のM値・F値,およびレーティング値(作020406080100120140160M値F値得点作業が速いと評価されたグループ作業が遅いと評価されたグループ図1 一般職業適性検査得点の平均値の比較 512015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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