千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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各経路のフェロモン情報を更新する. [Step.5] t = t + 1とし,もしtが終了回数tmaxに達していなければ,[Step.2]へ戻る. [Step.6] 得られた巡回経路のうち,最良の巡回経路を出力して終了する. 3.2 CO2排出量の算定手法 CO2排出量を算定する手法の一つに改良トンキロ法がある.算出するのに必要なデータはトラックの輸送量,輸送距離,積載率などである.改良トンキロ法の算定式は次式になる. CO2排出量(t-CO2) =輸送量{(貨物重量+車両重量) ×輸送距離}×燃料使用原単位×1/1000×CO2排出係数 (2) 燃料使用原単位 In y = 2.71 - 0.812 In (x/100) - 0.654 In z (3) ただし,yは輸送トンキロ当たり燃料使用量(l),xは積載率(%),zは最大積載量(kg)である(有効数字2桁).Inは自然対数であり,積載率が10%未満の場合は,積載率10%のときの値を用いる. また,t-CO2(二酸化炭素トン)は,二酸化炭素とその他の温室効果ガスの排出・吸収等の量に相当する温室効果をCO2の重量に換算した単位とする. 本研究では,この改良トンキロ法を用いて,CO2排出量を算定する. 3.3 提案法(AS-CO2解法) ASでは,フェロモンと距離の値を参照しながら巡回経路を生成するが,AS-CO2解法では,フェロモンと次の都市に到着するまでに排出するCO2の量に従って,未訪問都市の中から確率的に次の移動先を選択しながら,すべての都市を巡回して巡回経路を生成する. 4.数値実験 配送地20,配送地30,配送地40,配送地50を用いてASとAS-CO2解法の比較を行う.ASとAS-CO2解法における各パラメータは,以下のように設定する. ・探索回数 tmax = 500 ・人工アリ m = 30 ・初期フェロモンτ0 = 1.0 ・α = 1.0,β = 5.0, αはフェロモンを,βは距離(ASの場合)またはCO2排出量(AS-CO2解法の場合)をコントロールするパラメータ ・蒸発率ρ = 0.1 表1はAS,表2はAS-CO2解法による数値実験結果である.なお,表中の値は,各問題に対して,20回の試行で得られた最良値,平均値である.表3はAS-CO2解法で得られた値からASで得られた値を引いた値である.AS-CO2解法は総巡回距離の最良値,平均値のすべてにおいてASより大きい値を算出している.しかし,AS-CO2解法はCO2排出量の最良値,平均値のすべてにおいてASより小さい値を算出している.よって,AS-CO2解法で生成した総巡回距離はASより大きくなってしまうが,CO2排出量はASより小さい値を算出することが確認できた.また,総巡回距離に関係なく配送順が変更になるとCO2排出量に影響を及ぼすことがわかった. 表1 ASの数値実験結果 総巡回距離(km)総CO2排出量(t-CO2)最良値248.00.5489430平均値251.30.5372861最良値306.00.7238270平均値313.30.7271365最良値381.01.0511540平均値389.81.0951224最良値450.01.1387330平均値465.41.2001032配送地20配送地30配送地40配送地50 表2 AS-CO2解法の数値実験結果 総巡回距離(km)総CO2排出量(t-CO2)最良値256.00.4858510平均値256.90.5070653最良値316.00.6605610平均値324.00.6821474最良値395.00.9938750平均値399.61.0252504最良値466.01.1243430平均値472.81.1673486配送地20配送地30配送地40配送地50 表3 AS-CO2解法とASの数値実験結果の差 総巡回距離(km)総CO2排出量(t-CO2)最良値8.0-0.0630920平均値5.6-0.0302208最良値10.0-0.0632660平均値10.7-0.0449891最良値14.0-0.0572790平均値9.8-0.0698720最良値16.0-0.0143900平均値7.4-0.0327546配送地20配送地30配送地40配送地50 5.結論 本研究では,配送計画の基礎研究としてTSPを対象に,CO2排出量を考慮した巡回経路を生成するAS-CO2解法を提案した.数値実験より,提案法であるAS-CO2解法が生成した巡回経路が,ASよりも少ないCO2排出量を算出することができ,提案法の有効性を確認した. 今後の課題として,需要変動に対応した配送・収集計画問題へ応用や,配送車の数,配送時間などの現実にある様々な条件を考慮する必要がある. 参考文献 [1] 大内東,山本雅人,川村秀憲,柴肇一,高柳俊明,當間愛晃,遠藤聡志:生物複雑系からの計算パラダイム,森北出版,2003 502015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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