千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 需要変動および環境影響を考慮した配送・収集計画問題に対する技法の開発 研究課題名(英文): Development of Techniques for Delivery and Collection Routing Problem Considering Demand Fluctuations and Environmental Impact 研究者: 白 井 裕 千葉工業大学 SHIRAI Yutaka 社会システム科学部 経営情報科学科 教授 1.はじめに 地球温暖化を促進するとされる温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)排出量は,日本国内から,約12億4100万トン(2011年度)である.そのうち,運輸部門(自動車,船舶等)からのCO2排出量は2億3000万トンであり,全体の約20%を占めている.自動車全体では運輸部門の87.8%(日本全体の16.3%),貨物自動車に限ると運輸部門の34.2%(日本全体の6.3%)を排出しており,鉄道,内航海運,航空より割合が多い. また,物流会社に対する荷主企業の要求はますます高まっている.具体的には,物流コストの削減だけでなく,CO2排出量の削減も実現できる輸送システムを要求する荷主企業が増えている.なぜなら,製造業を中心とした荷主企業にとって,部品・製品などの貨物輸送に伴う物流コストの削減と,環境保護に配慮したCO2排出量の削減が企業生き残りの急務の課題となっているからである. 物流会社の陸上輸送は,これまでトラックが主な輸送手段であったが,石油など燃料費高騰の影響や環境保護に対する要求が厳しくなり,物流会社・荷主企業の双方からトラック中心の輸送システムを根本的に見直す動きが出てきている. ここで扱う環境影響物質は,配送車の主な排気ガスであるCO2排出量に着目し,本研究では,配送計画の基礎研究として巡回セールスマン問題(TSP)の各都市(配送地)に需要量を与え,アントシステム(AS)と提案法であるAS-CO2解法を用いてそれぞれ巡回経路を生成し,総巡回距離や総CO2排出量の比較,検討を行う.そして,AS-CO2解法が生成した巡回経路がASよりも少ないCO2排出量を算出することを明らかにする. 2.CO2排出量を考慮したTSPの定式化 CO2排出量の最小化を目的としたTSPの定式化には,式(1)を用いる. Minimum niijnjijxCOZ112 (1) Zを総CO2排出量,CO2ijを配送地ij間を移動したときのCO2排出量,xij=1を配送地iから配送地jに行く経路を通る場合,xij =0はそれ以外の場合,nを配送地数とする. 3.本研究で用いた解法 3.1 アントコロニー最適化法 アントコロニー最適化法[1]とは,生物のアリに焦点を絞り,アリの最適化行動を模倣した人工的な問題解決のアルゴリズムである.本研究では,アントコロニー最適化法の一つであるアントシステム(AS)を扱うことにする.ASは複数の人工アリがそれぞれの都市に設置され,都市間のフェロモンと距離の値を参照しながら,都市を訪問する.各人工アリがすべての都市を巡回することによって,人工アリの数だけ巡回経路が生成される.各人工アリが生成した巡回経路長に応じてフェロモンが更新され新たなフェロモンの情報をもとにして,各人工アリが探索を開始するといったシステムである.ASのアルゴリズムを以下に示す. [Step.1] t = 0とし,すべての経路のフェロモンの値をτ0で初期化する. [Step.2] すべての人工アリを初期都市に配置する. [Step.3] 各人工アリについて,巡回経路が完成するまで都市の選択を繰り返す. [Step.4] 各人工アリの巡回経路と総巡回距離に基づいて,492015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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