千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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子化により量子化することで,情報圧縮を試みた.これは音声モーフィングに類似した処理である.ベクトル量子化のコードブック作成にはLBG 法[2] を用いた. 図2 合成音声と入力音声のLSP係数の相関 ゲインとピッチについては音質を考慮しMELP 符号化パラメータをそのまま送信する.さらに,入力音声と合成音声との時間軸整合をとるためのDPパス情報を2 bit/frame,合成音声を作成するためのテキストデータ情報(平均約2.0 bit/frame),バンドパスボイシングを低域の2 bit のみ送信する.1frame(22.5 ms)あたりのビット数は31 bit となるため,提案方式のビットレートは1.3 kbit/s となった.MELPと提案方式のビット割り当てを表1に示す. 4.主観評価実験 提案方式によって符号化および復号化した音声と入力音声,MELP 符号化による合成音声を用いて主観評価実験を行った.評価方法はMUSHURA法[3] を用い,0 から100 までを5 段階に等分割し,それぞれの区間に対し,劣化がまったくみとめられない,劣化が認められるが気にならない,劣化がわずかに気になる,劣化が気になる,劣化が非常に気になるの評価語を割り当て被験者には0-100 の評価値を回答させる主観評価実験を行った.主観評価実験条件を表2に示す. 表2 主観評価実験条件 被験者 日本人男性6名 入力音声 ASJ 連続音声データベース 話者nec1001,nec1002, tsu0001,tsu0003 入力文章 男女とも3文章づつ LSP用VQコード数 0,1,2,4,8,16,32,64, 128,256,512,1024 サンプリング周波数 8kHz 合成音声話者 ryo(男声),sayaka(女声) 実験結果を図3(合成音声ryo をモーフィング元とした結果),図4(合成音声sayaka をモーフィング元とした結果) に示す.図3 及び図4 の横軸は量子化に用いたコードブックサイズである.0 は合成音声のLSP 係数をそのまま用いた場合を示す.図に示すように,提案方式はMELP 符号化に比べ若干の音質劣化があり改良の余地があることがわかる.また合成音声ryo を用いた場合のほうが音質が良好であるという結果が得られ,提案方式は合成音声話者を適切に選択する必要があることが分かった. 0102030405060708090100012481632641282565121024MELP原音evaluation points(%)Codebook sizeryo 男性ryo 女性 図3 合成音声ryoを用いた場合の音質 0102030405060708090100012481632641282565121024MELP原音evaluation points(%)Codebook sizesayaka 男性sayaka 女性 図4 合成音声sayakaを用いた場合の音質 5.まとめ 音声モーフィーングを用い,音声認識ボコーダの低ビット符号化を試みた.提案方式によりビットレートを1.3 kbps まで削減できた.これは,現在の携帯電話のビットレートの1/5程度である.しかし,MELP 符号化に比べ音質が若干劣化してしまうことと,合成音声話者を適切に選択する必要があることが確認された.今後は提案方式による音声の音質向上を目的とする. 本研究に関する主な発表論文 (1) 荒木 隆太,木幡稔,"音声モーフィーングボコーダを用いた低ビット符号化に関する検討",平成26年秋季音講論,1-R-27,pp.267-268,2014. 参考文献 [1] A.V.McMCree and T.P. Barnwell �, "A mixed excitation LPC vocoder model for low bit ratespeech coding," IEEE Trans. on Speech and Au-dio Processing, vol3, no.4, pp.242-250, 1995 [2] Linde,Y. Buzo,A, Gray,R.M, "An Algorithmfor Vector Quantizer Design" Communications, IEEE Transactionz on Volume 28, Issue8, page84-95, 1980 [3] ITU-R recommendation BS. 1534-1 442015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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