千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): グライド推進原理に基づく不整地上での適応的移動生成手法の自律的獲得 研究課題名(英文): Analysis to Generate an Adaptive Motion for Uneven Terrain Locomotion by Gliding Locomotion 研究者: ○太田 祐介 千葉工業大学 OTA Yusuke 工学部 未来ロボティクス学科 教授 1. はじめに 現在,対地適応能力の高さから歩行型移動ロボットの研究が盛んである.このような歩行型移動ロボットの構成は単純な機構かつ軽量であることが望ましい.この2つの条件を満たす設計手法として,ロボットの質量の大半を占めるアクチュエータの数を減らす方法が考えられる.ロボットに要する自由度を可能な限り少なくし,かつ対地適応能力の高いロボットの構成概念として,我々はTwin-Frame型移動システム(1)を提案している.Twin-Frame型移動システムは「2つのフレームとそれらを連結し駆動するアクチュエータ群から構成されるロボットシステム」と定義しており,その一例として2つの胴体間を6自由度パラレルリンク機構で連結し,胴体基盤間の相対運動により移動するロボット“ParaWalker-II”を開発した(2).この様にTwin-Frame型移動システムでは少自由度で対地適応性の高い歩行型移動ロボットを実現できる. 歩行機械全般の特徴として,整地での移動能力は車輪型移動機構に劣っていることが挙げられる.整地での移動能力を向上させるために,脚先に駆動輪を取り付けた脚車輪型移動機構が多く研究されているが(3),整地での移動能力を向上させるために歩行機械に車輪駆動機構を加えることは質量を増すこととなり,構造部品を強くする必要性から質量が増すという悪循環に陥る.またその車輪駆動機構は不整地歩行時には使用されないことが多く,不整地移動能力の向上には寄与しない.一方で歩行能力を損なわず,かつ大幅な質量増加をさせずに整地での移動能力を向上させる推進手法として,歩行ロボットの脚先に受動車輪を取り付け,車輪の持つ抗力の異方性を利用して推進する手法が提案されている(4).「直交する2軸方向に働く抗力の差を利用した推進」はグライド推進と定義されており(5),ヒューマノイドロボットなど二足歩行ロボットに適用した例も報告されている(6). これらのように現在までに提案されている車輪の抗力異方性を利用して推進する手法は平面に限定されている.しかし波状路のような凹凸地形であっても,車輪の位置・姿勢を適切に制御することで平面と同様に推進できるはずであり,この時,車輪の位置・姿勢を制御するために必要な自由度は6自由度である.従って前述のTwin-Frame型移動システムが持つ自由度で歩行と車輪移動の両立が実現できる. 本研究ではTwin-Frame型移動システムによるグライド推進の凹凸面への適用を目的とする.今回は平面内でのグライド推進に限定し,車輪の軌道とロボットの移動特性の関係を明らかにする.Twin-Frame型移動システムに基づいた機構を持ち,グライド推進を行う移動体Para-Gliderを図1に示すとおり開発したので報告する. 図1 グライド推進原理に基づく移動体:”Para-Glider” 2. 3自由度平面モデル“Para-Glider” 2.1 機構 開発したPara-Gliderの外観を図1に示す.大きさは全長253[mm],全幅290[mm],全高94[mm],質量は1.3[kg]である.図2に示すように,Para-Gliderは車輪の取り付けられた2つの基盤から構成される.車輪は上側基盤(Frame 1)の各頂点,下側基盤(Frame 2)の2つの頂点に取り付けられており,それぞれの基盤を合わせると合計5つの車輪が取り付けられている.Para-Gliderの推進方向を拘束するため,Frame 1に車輪を3つ取り付けている.基盤間は平面3自由度パラレルリンク機構により連結した. 392015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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