千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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を感じるのかを分析した。 (1)外装材の見え方に変化が表れる視距離 タイル・煉瓦・塗装とも、被験者が外装材の見え方に変化を感じるのは30m ~ 15m の間でおおよそ3つの範囲(遠距離・中距離・近距離と呼ぶ) であることが分かった。ただし、外装材によりそれらの距離は異なっている。 それぞれの視距離の範囲のなかで、全体の何割くらいの被験者が見え方に変化を感じるのかを調べたところ、タイルと煉瓦は視距離が近くなる程、被験者の割合が高くなった。これに対し、塗装の場合は外装材との視距離が離れている程(ただし、この視距離は他の素材に比べ若干近い)、被験者の割合が高く、近づくと割合は低くなることが分かった(図4)。 なお、被験者による見え方の変化を感じた回数は1回、2回、3回と分かれ(表1)、変化を2回感じた被験者が最も多い割合であった。 (2)見え方が変化した視距離について 被験者は、タイル・煉瓦・塗装の見え方の変化においておおよそ3つの視距離の範囲の中で見え方に変化を感じているが、a ~ g までのチェック項目のどの項目の見え方が変化したのかをまとめる。 ①「遠距離」における見え方の変化 タイルは27.5m ~ 25.5m の2m の範囲にあり、被験者は主に「a. 目地の幅・大きさ」と「c. 汚れ」について着目していることが分かった。 煉瓦は25m ~ 23m の2m の範囲にあり、被験者は主に「b. 色の濃淡・混ざり具合」について着目していることが分かった。 塗装は23m ~ 21.5m までの1.5m の範囲にあり、被験者は主に「c. 汚れ」と「d. 凹凸感」に着目していることが分かった(図5)。 ②「中距離」における見え方の変化 タイルは22.5m ~ 20.5m までの2m の範囲にあり、被験者は主に「a. 目地の幅・大きさ」と「c. 汚れ」について着目していることが分かった。煉瓦は22m ~ 20m までの2m の範囲にあり、被験者は主に「c. 汚れ」について着目していることが分かった。塗装は19m ~ 17.5m までの1.5m の範囲にあり、アンケートの結果から、被験者は主に「c. 汚れ」に着目していることが分かった。 ヒアリングから、どの外装材においても表面だけではなく目地の汚れがより見えるようになることが分かった。 ③「近距離」における見え方の変化 タイルは18.5m ~ 16.5m までの2m の範囲にあり、被験者は主に「a. 目地の幅・大きさ」と「b. 色の濃淡・混ざり具合」と「c. 汚れ」について同程度に着目していることが分かった。煉瓦は17m ~ 15m までの2m の範囲にあり、被験者は主に「b. 色の濃淡・混ざり具合」について着目していることが分かった。 塗装は16.5m ~ 15m までの1.5m の範囲にあり、被験者は主に「a. 目地の幅・大きさ」と「b. 色の濃淡・混ざり具合」と「c. 汚れ」に着目していることが分かった。 ヒアリングから、主に外装材の色のムラや、タイル一枚一枚の色の違いに気付く傾向にあることが分かった。 4.おわりに タイル・塗装・煉瓦を対象に、視距離と見え方の変化関係について調査を行った。外装材の種類によって見え方に変化を感じる視距離が異なるとともに、変化を感じる要素に共通点と相違点があることが分かった。 本研究に関する主な発表論文 (1) 大西志歩、白石光昭:市街地の建築物外装材の実態調査 日本建築学会大会学術講演梗概集2014、pp787-788 参考文献 (1) 岡島達雄、若山滋 等:視距離による建築仕上げ材料の「見えの変化」と心理効果 日本建築学会構造系論文報告集、401号、1989年7 月 (2) 槙究、赤松摩耶、佐竹明子:外装材表面感の次元について 日本建築学会環境系論文集、614 号、2007 年4 月 図4 見え方が変化する視距離と被験者の割合(%)表1 見え方の変化を感じた回数の被験者割合(%)図5 見え方が変化する視距離(「遠距離」の結果)1回2回3回タイル196120塗装255817レンガ295120見え方の変化を感じた回数362015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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