千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): 油/水型サーファクタントフリー・ナノエマルションの安定化機構の解明 研究課題名(英文): Explanation of the stabilizing mechanism of oil-in-water nano-emulsion with surfactant free. 研究者: ○矢沢 勇樹 千葉工業大学 YAZAWA Yuuki 工学部 生命環境科学科 准教授 1. はじめに エマルションは,水と油のような互いに溶解しない液相の一方が他方に微細な液滴として分散した系である。エマルションは分散相径をナノ化することで均一な混合が可能となり,混合技術を必要とする全ての分野での応用が期待される。 水と油のみで構成されたエマルションは不安定であるため,時間経過とともに分散相が凝集・合一し,最終的には二相分離してしまう。この二相分離を防ぐ方法として両親媒性の界面活性剤(乳化剤)の添加が一般的であるが,界面活性剤の添加はその境界膜の形成により分散相自体の効能低減を引き起こし,さらに界面活性剤自体の環境に対する負荷が懸念されることからも添加量の制限と選択が要求される。よって,界面活性剤が無添加のエマルションを生成し,その安定化メカニズムを解明することは,多種多様な課題を解決するとともに産業界への貢献は大きいものと考えられる。 本研究では,界面活性剤が無添加で水中に油が微小分散相として存在するサーファクタントフリー・ナノエマルション(SFNE)について,その安定性と油水界面構造の解明方法を紹介する。 2.研究方法 (1) SFNEの生成および調製 SFNEの生成には,共同研究をおこなっている㈱オーラテック社製SFNE生成装置をもちいた。エジェクター型ノズルを介して円筒槽内を循環する系となっており,油分をノズル側部から注入することで剪断流により微細化される。その剪断断域の流束は5~9 m/sであることが粒子画像速度測定解析により明らかとなった。生成初期段階では分散相の微細化にともない溶液が白濁するものの,しばらくノズルを介して循環させると溶液が透明になってくる。この段階で供給された油のナノ化が完了し,SFNEが生成したと判断される。本装置により,n-pentadecane(PD,C15H32,関東化学,鹿特級)を分散相とした油混合率0.1 vol.%のO/W型SFNEの生成をおこなった。さらに生成したPD-SFNEをロータリーエバポレーターにより313 Kにて油混合率1.5 vol.%相当まで濃縮・調製した。 (2) SFNEの安定性評価 油混合率0.1 vol.%のSFNEの生成直後から100日後までの油分換算有機炭素濃度および油滴径・電位をShimadzu社製TOC-VCSH,Malvern社製Zetasizer nanoによりそれぞれ測定した。さらに,フリーズフラクチャー法をもちいて日立ハイテクノロジーズ社製透過型電子顕微鏡(TEM)H-7650/ FR-7000Aによるレプリカ観察をおこなった。また,調製後のSFNEの油滴径と油分量,さらにSFNEの固液相変化熱量(潜熱量)をPERKIN ELMER社製示差走査熱量計(DSC)Pyris 1により昇降温速度1.0 K/min,温度範囲263-293 Kの条件で測定した。得られた潜熱量から相変化したPD(バルクPD)・水(バルク水・自由水)の量を算出し,その差分から不凍な油(非バルクPD)・水(非バルク水・水和水)の量をそれぞれ算出し,これらの結果と界面張力試験,膜透過性試験,ATR-IR解析,1H-NMR法による水の緩和時間(縦緩和(スピン‐格子緩和)時間:T1,横緩和(スピン‐スピン緩和)時間:T2)測定などから,SFNEの油水間の界面構造を解明した。また,これまで荒漠化土壌の改良資材としてもちいた難水溶性腐植物質(フミン酸)についても同様にSFNEの生成法により水への安定混合し,評価した。 292015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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