千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2015年版
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研究項目: 科研費申請準備支援助成金 研究期間: 2014/4/1 ~ 2015/3/31 研究課題名(和文): アーキアのストレス応答反応の分子機構解明 研究課題名(英文): Analysis of molecular mechanism for stress response in Archaea 研究者: ○根本 直樹 千葉工業大学 NEMOTO Naoki 工学部 生命環境科学科 准教授 1. はじめに 好熱好酸性のアーキアであるThermoplasma acidophilumは,箱根大涌谷のような酸性硫黄泉から単離され,60℃,pH2付近を至適環境として生育する。アーキアは,特殊な環境に生育するものが多くみられ,発見当初は原始地球で誕生したその性質を残すと考えられたため,古細菌とも呼ばれる。またアーキアは,真正細菌,真核生物とはリボソームを構成するRNAの塩基配列が異なることから,超生物界(ドメイン)の1つとして扱われ,生命の起源と進化を研究する上での重要な実験材料である。 T. acidophilumの細胞膜脂質は,生育条件によって脂質組成が変わることが分かっている(1)。至適生育条件より低いpHまたは,より高い温度条件下では,糖脂質の糖鎖長が延び(図1),脂質分子疎水鎖部の環構造の数が減少する(図2)。T. acidophilumでは,pHや温度が至適条件から離れると生育が悪くなることが分かっており,外環境の変化を感知して,その影響を緩和するためのストレス応答反応が細胞内で起こっていると考えられる。しかしながら,アーキアではストレス応答やその細胞内シグナル伝達の分子機構は,ほとんど解明されていない。そこで,T. acidophilumが環境変化に応じて糖鎖長を変化させることを足がかりに,アーキアにおけるストレス応答反応の分子機構解明を目的として本研究を行った。 2.研究の内容 (1) 糖鎖伸長酵素候補の探索 生育条件のpHを変化させたときのT. acidophilumの遺伝子発現量変化を調べたマイクロアレイ解析データ(K. Yamashiro etal. 未発表)を利用して,至適pHであるpH1.8に対して酸性側のpH1.2で培養したときに転写量が上がり,中性側のpH2.4で培養したときには転写量が変化しなかった59個の遺伝子について相同性検索を行って機能情報を取得した。 そのうち,機能未知遺伝子Ta0859は,BLAST検索によ 図1. T. acidophilum における生育環境pHと脂質の糖鎖長の関係(参考文献 (1) を改変) 生育環境のpH低下に従い,脂質分子に直接結合するGuloseの先に結合するMannoseが増えることが分かる。 図2. T. acidophilum における生育環境pHと脂質分子内の環構造の関係(参考文献 (1) を改変) 生育環境のpH低下に従い,脂質分子疎水鎖部分の環構造の数が減少する。 272015 千葉工業大学附属研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2015    

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